<Discussion>家庭内におけるPCの役割とは何か?

特集

2016/09/26 10:00

 国内外の10社がBCNで議論した「PCメーカー座談会」では、三つのテーマごと分かれて「ラウンドテーブル」を開催。Cグループでは「家庭内におけるPCの役割とは何か?」というテーマでNECパーソナルコンピュータ、日本マイクロソフト、パナソニックの3社が語り合った。

 

PCが使われていない原因は? 家庭での役割を問い直す

 家庭で1台は所有しているにも関わらず、PCが売れない。その原因を「家庭におけるPCの役割」という観点から再検証した。PCのスペック・機能は市場が不調に陥る以前に比べて、飛躍的に向上している。活用用途やシーンも本体の進化に伴って多様化しており、ユーザーに新しい体験を提示しているようにもみえる。しかし現実には、「ユーザーが家庭で実際に作業しているニーズ」と「進化するスペック・機能」に不一致が生じており、宝の持ち腐れ状態に陥っている。

 この問題の要因にあがったのが「PCのポテンシャルを生かす使用方法の訴求不足」だ。時代を経ても、メールやワープロ機能などライトニーズが主たる用途にとどまっており、新しい機能に必要性を感じていないユーザーが多い。若い世代のPC離れにしても、これらの用途がモバイル端末で代用可能になっていることが大きい。

 解決の糸口としての提言が、教育分野での活用の促進だ。2020年には小学校でプログラミング教育の義務化が検討されている。家庭内でプログラミングを始めとしたPCをフル活用するシーンが生まれれば、PCの必要性は再認識されるだろう。もちろん時世を楽観視するのではなく、先読みした施策が求められる。例えば、世代別に明確に棲み分けた製品づくりが有効な手段になるのではないか。目的を意識すれば、ユーザーに確実に響く新しさが創出できるはずだ。
 

左からNECパーソナルコンピュータ 山下敏嗣 商品企画本部本部長、日本マイクロソフト 金古毅 執行役コンシューマー&パートナーグループOEM統括本部長、パナソニック 向坂紀彦 AVCネットワークス社ITプロダクツ事業部東アジア営業統括部統括部長
 

使っていなくても役に立つ、家庭用PCの新しいポジション

 これまでのPCの定義を更新することも必要だ。各家庭が所有していても役割がないのでは、需要は見出せない。従来品にはない、家庭で必要不可欠な機能の獲得は急務だ。可能性の一つとして案が出たのが「使っていなくても役に立つ」というコンセプト。普段はディスプレイとして受動的に情報を表示しているが、ユーザーがタッチした瞬間に能動的に操作できるようになる、といった機能などで、すでに模索が始まっている。

 IoTもPC再定義の推進役になりうる。IoTでは家庭内のあらゆるモノがセンサとして機能する未来が前提だが、検知した大量のデータを集約・閲覧するためのハブとしての役割を担うことが期待できる。これも「使っていなくても役に立つ」PCの一例だ。役割の変化は形状にも影響を与える。セッションでは、ディスプレイとキーボードがセットの見慣れたスタイルではなく、部屋の見えない場所にある地味なオブジェになるのではないか、という可能性も検討された。

 両案の共通点は、高機能(=PCのメリット)を無意識のうちにユーザーが生かしきっていることだ。実現に向けて課題は多いが、各社がPCに対して現状維持ではない具体的なビジョンをもっていることが確認できた。

<Discussion>
・コンシューマPCに求められていることとは
・売り場で求められる消費者へのアピールポイント
・スマホ/タブレットとの差別化
・家庭内におけるPCの役割とは何か?

<Windows PCメーカー10社に聞く 4つの疑問>
・(1)今、求められるPCの機能は何か
・(2)PCの価格差を消費者は理解できているか
・(3)消費者に足りなかったメッセージは
・(4)今後の販促支援と宣伝展開のキーコンセプトは

<家電販売店のPCバイヤーが考えるPCビジネスの将来>
・エディオン
・ビックカメラ
・ヨドバシカメラ
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2016年10月号から転載