2026.7.17 19:00
スマホ・PCフィジカルAI最前線 AIロボットはどこまで進化した? 展示会で見えた最新技術と日本の可能性
「第38回 ものづくりワールド[東京]」内「フィジカルAI展」の会場の様子
AIが自律的に判断し、実世界で身体を使って動く
会場には、人型ロボットや四足歩行ロボットのほか、人の手のように動くロボットなど、さまざまなロボットが展示され、実演されていた。「フィジカルAI」とは何かというと、AIが現実世界を認識し、自律的に判断して、ロボットなどの機械を動かす技術のことだ。「AI搭載ロボット」というと、一般の人は、AIペットロボットのGROOVE X社の「LOVOT[らぼっと]」やシャープの「RoBoHoN(ロボホン)」のような、各社がオリジナルでロボットのボディから開発していることを想像しがち。だが、実際、会場では中国のUnitree Robotics社のヒューマノイドロボット「Unitree G1」、小型の電動四足歩行ロボット「Unitree Go2」などを使用しているブースがいくつも見られた。
日本での「フィジカルAI」の関わり方は、会場を見る限りでは、 現段階では「ハードウェア(機体)は海外から輸入し、AI基盤は海外のプラットフォームを活用。その上で、頭脳にあたる応用ソフトウェアや、現場への導入システムを国内で開発する」ことの方が多いようだ。
ヒューマノイドロボット「Unitree G1」
先日、三菱自動車工業と東京大学発スタートアップのHighlandersがヒューマノイドロボットを共同開発すると発表し、「2027年後半に月産1000台の生産体制構築を目指す」という発表があったので、今後、国産ロボットの期待も高まるものだ。
ロボットが、環境を理解し、最適な行動を選択する
「リョーサン菱洋」のブースでは、ドイツのFranka Robotics社の双腕ロボット「Franka Research 3 Duo」が、2種のぬいぐるみを認識し、それぞれの適した箱に入れる実演などが行われていた。
双腕ロボット「Franka Research 3 Duo」
フィジカルAI搭載ロボットが進化することで、これまでのロボットのように「決められた動きを繰り返す」だけではなく、「現場をセンサーでとらえ、環境を理解し、最適な行動を選択し、実行する」ことができるようになるのだ。人手不足の製造現場などでも、AI搭載ロボットが自律的で柔軟に動くことで、人間の労働力を補える可能性がある。
二足歩行で自律的にボールを追いかけるヒューマノイドロボット
中国のBooster Robotics社のヒューマノイドロボット「Booster K1」の輸入販売をしている「機楽」のブースでは、ロボットが自律的にボールを追いかける実演をしていた。身長95cm、重さ19.5kgで、ボールを追いかける姿は少しぎこちなさがはありつつも、まるで幼児のようなかわいさがあった。
「Booster K1」は、サッカーやダンスなどの基本動作をすぐに体験できる、デモ・展示向けエントリーモデルで、片足を上げたダンスも披露。これで転倒しないのはすごいものだ。凸凹や斜めになっている床でも、バランスを自律調整できるという。価格は約300万円。今後の性能向上に期待したい。
サブスクでフィジカルAI搭載ロボットを提供する企業も
フィジカルAI搭載ロボットはまだ高価なものだが、購入ではなく、サブスクリプション型でサービスを提供しているのは、「アカツキAIテクノロジーズ」だ。企業が工場や倉庫の自動化を試す段階で、高額なヒューマノイドを購入することにハードルを感じることも少なくない。同社では、ロボット本体をリースで提供し、それにAIの学習や現場検証にかかる工数を加えたPoC(Proof of Concept、※本格的な開発や導入の前に検証するプロセス)を提供しているという。
小型の電動四足歩行ロボット「Unitree Go2」
その他に、「Xenoma」のブースでは、人間の動作を数値化するセンサーを内蔵したスマート衣料「e-skin」を展示していた。“熟練者の作業動作データ”は、大きな価値になり得るのだ。このように、フィジカルAIに関わるビジネスは多岐にわたっていた。
スマート衣料「e-skin」
日本ならではの「繊細な作業のデータ」が最大の強みになる
今回、フィジカルAIの展示を見て思ったことは、「まだ発展途上の技術であり、今後さらなる進化が期待される」ということだ。個人的には、ChatGPTなど生成AIのスピード感ある進化を考えると、「もう家事を手伝ってくれるようなAI搭載ロボットが出てきてもいいのではないか」くらいに考えていたが、「現実世界で、安全性を保ったまま自律的に動く」というのは、思いのほか難しいことなのだ。例えば、AI搭載ロボットが公園のゴミ拾いをする場合、「それがゴミなのか」の判断は、意外とハードルが高い。何が落ちているのかは、予測不能だからだ。
だからこそ、たとえハードウェアなどは海外に先を越されても、日本ならではの“高品質な現場データ”を生かしたAIや自律制御技術を開発できれば、日本も最先端に立てる可能性はある。例えば、日本の「職人の繊細な作業の現場データ」が、絶対的な市場価値になり得る、というわけだ。AI搭載ロボットの世界であっても、その知恵や知識を与えるのは人間。結局、最後は、「人間のあり方」こそが重要なのだろう。(加藤弓子)
加藤 弓子
Yumiko Kato
ライター・コラムニスト。明治大学文学部演劇学専攻卒業。フードビジネス会社や出版社で広報を経てライターに転身。夕刊フジ、アエラデジタル、All Aboutなどで執筆。
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