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PC市場で支持が拡大する「AMD」、躍進の裏に緻密なマーケティング戦略

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2021/09/29 17:30

 この数年、PC市場でAMDの活躍ぶりが際立っている。全国の家電量販店ECショップのPOSデータを集計する「BCNランキング」によると、過去2年間でAMD製のCPUを搭載するPCの販売台数は約2.4倍に拡大。採用するOEMメーカーも8社から13社に増えている。長らく一強独占が続いてきたPCのプロセッサー市場において、この存在感の高まりは、国内外の主なPCメーカーがAMDの価値を認めた証左と言える。その背景をAMD自身はどのように分析し、今後どのように発展させていくつもりなのだろうか。日本AMD コンシューマー事業部 土子秀人 ナショナル・セールスマネージャーに話を聞いた。

過去2年間でAMDを搭載するノートPCは約2.4倍に拡大した

多彩なラインアップを用意して供給し続ける

 PCメーカーのラインアップに、AMD製CPUの搭載モデルが増えている理由について、土子氏は「Ryzenのパフォーマンスが評価されたこと」と「複雑化する販売チャネルに対応できていること」の二つを要因に挙げる。後者を少し補足説明すると、現在の販売チャネルはリアルとネットという区分だけではないということだ。たとえば、店頭売りが強い大手量販でも自社通販を行っており、他社との差別化を求める中で、同じ1台、同じ1モデルだけではニーズに対応しきれなくなっている。

 土子氏は「そうしたニーズに応える、多彩なラインナップを用意して供給している」と語る。「当社はこれまでも自作PCユーザーに対しては何かしら特徴のある製品を提供してきた。動作周波数1GHzのCPUやデュアルコアなどを先駆けて展開し、競合に対してどういうマーケティング的なアピールができるのか、その解答を常に持つように心がけてきた。その甲斐があって、エンドユーザーに対してもパートナー企業に対しても、なにか新しい風を吹き込みたいと思ったときに、そこにAMDがいるという状況が作れるようになった」。
 
日本AMD コンシューマー事業部
土子秀人 ナショナル・セールスマネージャー

 OEM各社で戦略が違うので、各社に同じ提案を行うことはないが、大きな方向性で見るとモビリティのニーズに対する提案が多くなっているという。これはRyzen 4000Uが登場してからバッテリーライフが大幅に向上したためで、実際にOEM各社がモバイルPCにRyzenを採用した製品を多数リリースしている。モバイルゲーミングPCに採用しているところもあるなど、ユニークな製品に対するアプローチでも上手くいくケースが増えているのだ。
 
2021年のノートPC市場でもっとも売れている
NECの「LAVIE N15」シリーズでも
AMD Ryzen 4000Uシリーズは採用されている

 AMDの企業としての体力や認知度はまだ競合に追い付けていないが、製品のパフォーマンスについては競合に追いつき、追い抜くシーンも増えてきたと、土子氏は胸を張る。特にシェア拡大の強い追い風になっているのが、AMDのコアなファンの存在だ。

 「AMDのファンはインフルエンサーとしての力が強い。AMDが強みとしている自作CPU市場はSNSと高い親和性を持っている。それにPCメーカーで働いている人や、リテールのPC担当の中にもファンがいる。彼らは基本的にPCのことが好きなので、CPUやパーツのこともよく知っている。新製品が出たあとなどに『土子さん、すごく話題になっているよ!』といった具合に声を掛けてくれる。作り手や売り手の中にファンがいることはうれしいし、心強い」。

誰でもアクセスできる形で情報や素材を提供

 シェアの拡大に伴って、販売店でAMD製のCPUを搭載するPCへの好意的な声を聞く機会も増えた。売り場に対するアプローチにもなにか工夫はあるのだろうか。販売員への教育の手伝いは工夫以前に欠かすことができない要素だ。商品知識やセールスポイントについて、量販店の本部を通じてイントラネット経由で全店舗にトレーニングしたり、AMDのスタッフが直接店舗に赴いて個別にトレーニングしたりする。POPやカタログの設置、販促物の展示なども定期的に手入れしながら拡充を図る。

 売り場からリクエストが多いのは、AMDのプロセッサーの立ち位置を把握したいというものだ。つまりベンチマークや競合の製品に対して、AMDのどの製品がカウンターになっているのかといった情報を整理してほしいというニーズだ。これはエンドユーザーのニーズにも共通するだろう。

 ただし、AMDが作るフォーマットはどうしても一つのテンプレートになってしまうので、量販各社がそれをうまく自社のフォーマットに落とし込めるように配慮する必要がある。量販各社やOEM各社で戦略が違うし、店舗によって取り扱うアイテムにも差があるので、AMDが用意したものが店頭ではそのまま使えないケースも少なくない。

 土子氏は「パートナー企業が利用できるクリエイティブな材料は、当社のWebサイトにオープンな状態で置いている」と語る。たとえば、AMDの公式サイト(https://www.amd.com/ja)は、ページの右上に「コミニュティ」「デベロッパー」「パートナー」のタブがあり、製品情報、マーケティング資料、販売ツール、デバイスドライバーなどは「パートナー」からすぐにダウンロードできる。
 
AMDの公式サイトでは多くのクリエイティブ素材をフリーでダウンロードできる

 また、公式ファンサイト「AMD HEROES」(https://amd-heroes.jp/)では、エンドユーザー向けにDIY系のパーツやPC本体、キャンペーンなどの情報がニュース記事のスタイルで掲載されており、さながらAMDに関連する情報だけを集約したニュースサイトの様相だ。パートナー企業にとっても、日々の情報収集という意味では、ここさえ見ておけばAMDの最新情報が確実にチェックできる大変ありがたい存在になっている。
 
公式ファンサイト「AMD HEROES」は
ニュースサイトさながらのボリュームとクオリティを誇る

 さらに量販の販売員に活用してほしいのが「AMD ARENA」(https://www.amd.com/ja/partner/amd-arena)だ。公式サイトの「パートナー」から辿れるページで、AMD製品についてのさまざまな知識やセールスポイントなどを学べる、いわゆるeラーニングである。トレーニング内容に沿った試験をパスすると、レベルロックが解除されてバッヂを獲得できる。IDとパスワードを登録すれば誰でも利用でき、ある程度のバッヂが貯まってくると、AMD製品や地域の特産品などの景品がもらえる。エンドユーザーが実利を兼ねた趣味としてゲーム感覚でAMD博士を目指すのも悪くない。
 
AMD製品を学べる「AMD ARENA」のeラーニング。
バッヂが貯まると景品と引き換えできる

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