新型コロナウイルス対策として政府が提唱する「新しい生活様式」の中で、テレワークやリモート授業が推奨され、これまで一家に1台だったノートPCが、1人1台になろうかという勢いで売れている。これからPCを購入しようとする人にとって、店頭でAMD製CPUの「Ryzen」を見かける機会が増えるだろう。全国の主要家電量販店・ネットショップのPOSデータを集計した「BCNランキング」によると、単体CPUの販売数量シェアでAMDが7割近くに再浮上し、Ryzen旋風が吹き荒れている。
振り返ると、3年前の17年6月26日週は、インテルのシェアが83.9%で、AMDが16.1%に過ぎなかったが、2年かけてインテルを追い込み、19年7月に一気に形成が逆転した。
その後も19年9月~20年4月にかけて、インテルのCoreとがっぷり四つでシェア攻防を繰り広げながら、最近の5月18日週は、Ryzenが67.4%、Coreが32.6%と、再び7割近くまで浮上している。
特に興味深いのが、5月18日週は、インテルがデスクトップPC向け第10世代Coreプロセッサー「Comet Lake-S」を21日に発売した週だったが、Ryzenが圧勝したということだ。
単体CPUは、主にPCパーツに造詣の深い自作PCユーザーなどが多く購入する。審美眼のかなったユーザーが、Ryzenの性能を評価していることの表れとも言えよう。
CPUのブランドは、99年にAthlon、04年にAthlon 64、07年にPhenomなどと推移。Athlon 64時代は、グローバルシェアでインテルに肉薄する場面もあったようだ。この間に、Windows PC向けで世界初のマルチコアCPUや、インテルのCPUにも採用されている64ビット技術の開発など、技術的な躍進に注目されることも多くあった。
最近の高い評価につながる大きな出来事が起きたのは06年だ。カナダのグラフィックス処理チップ大手のATIテクノロジーズを買収し、グラフィックス(GPU)市場に本格的に進出した。これによって、現在でも唯一、単体CPUと単体GPUを別々に提供できる企業となっている。今では当たり前となっているGPUが内蔵されたCPU(AMDはAPUと呼んでいる)も、AMDが世界で最初に実現した。
AMDが長年培ってきたこのGPUの技術は、今の時代に開花しているといえる。並列でデータを処理したり、大容量の動画データを効率的にさばくには、GPUの技術や性能が欠かせないからだ。
日本のユーザーに身近なところでいえば、現行の「PlayStation」や「Xbox」にAMD製GPUの「Radeon(ラディオン)」が使われており、次期型にも採用されることが決まり話題になったばかりである。実は知らないうちに、AMDユーザーだったという人も多いのではないだろうか。
単体CPUだけでなく、ノートPC搭載CPUでも、Ryzenを採用するPCベンダーが増えている。19年2月にNECがノートPCの春モデルでRyzenを採用するなど、この分野でも構成比が上昇。BCNランキングの19年11月25日週では、Ryzen搭載ノートPCが25.4%、Core搭載ノートPCが74.4%を記録。実に、ノートPCの4台に1台、Ryzenが搭載されているという衝撃的な結果が大きな話題となった。
その後も、レノボやマイクロソフトのSurface、富士通(直販モデル)、ASUS、VAIO、ファーウェイなど、Ryzen搭載モデルを続々と発売している。日本AMDによると、「2020年はグローバルで60機種以上のRyzen 4000シリーズ搭載ノートPCが登場する予定だ」という。
単体CPUでいえば、ゲーミングPCの需要が増していることで、Ryzen 7やRyzen 5が売れたほか、5月に新製品投入したローエンドのRyzen 3の出だしも好調に売れており、これが全体のシェアを押し上げている。
With(ウィズ)コロナの状況下、リモートワークが推奨されていることで、高性能なCPU搭載PCがこれまで以上に求められている。ほぼ動画ストリーミングに近いZoomなどでオンライン会議をしながら、一方でパワーポイントで提案資料を作成したり、メールを作成したり、表計算したりなど、いくつものソフトを同時並列で立ち上げながら作業するシーンが増えているからだ。
米AMDは6月17日、デスクトップ向けCPU「Ryzen 3000XT」シリーズを7月7日(執筆時点で日本の発売日は未定)に発売すると発表。日本でのローンチにも期待が高まる。GPU「Radeon」も今年後半にハイエンド製品の発売を予定しており、ゲーミングPCや自作ユーザーから高い評価を受けているAMDの製品が活躍する場は、今後も増えそうだ。
再びシェア浮上
グラフは、CPU販売数量シェアの過去3年間の推移(週次ベース)。2019年7月にAMDがRyzen 3000シリーズを販売すると、7月8日週に68.6%を記録し、Ryzenブランドが一気に注目の的になった。振り返ると、3年前の17年6月26日週は、インテルのシェアが83.9%で、AMDが16.1%に過ぎなかったが、2年かけてインテルを追い込み、19年7月に一気に形成が逆転した。
その後も19年9月~20年4月にかけて、インテルのCoreとがっぷり四つでシェア攻防を繰り広げながら、最近の5月18日週は、Ryzenが67.4%、Coreが32.6%と、再び7割近くまで浮上している。
特に興味深いのが、5月18日週は、インテルがデスクトップPC向け第10世代Coreプロセッサー「Comet Lake-S」を21日に発売した週だったが、Ryzenが圧勝したということだ。
単体CPUは、主にPCパーツに造詣の深い自作PCユーザーなどが多く購入する。審美眼のかなったユーザーが、Ryzenの性能を評価していることの表れとも言えよう。
グラフィックスの強みが追い風に
ここで「AMDってどんな会社なの?」というライトユーザーのために、簡単に略歴を紹介しよう。米国・カリフォルニア州に本社を置く米AMDは、1969年設立の半導体専業メーカーで歴史は古い。日本法人の日本AMDは、75年に設立された。CPUのブランドは、99年にAthlon、04年にAthlon 64、07年にPhenomなどと推移。Athlon 64時代は、グローバルシェアでインテルに肉薄する場面もあったようだ。この間に、Windows PC向けで世界初のマルチコアCPUや、インテルのCPUにも採用されている64ビット技術の開発など、技術的な躍進に注目されることも多くあった。
最近の高い評価につながる大きな出来事が起きたのは06年だ。カナダのグラフィックス処理チップ大手のATIテクノロジーズを買収し、グラフィックス(GPU)市場に本格的に進出した。これによって、現在でも唯一、単体CPUと単体GPUを別々に提供できる企業となっている。今では当たり前となっているGPUが内蔵されたCPU(AMDはAPUと呼んでいる)も、AMDが世界で最初に実現した。
AMDが長年培ってきたこのGPUの技術は、今の時代に開花しているといえる。並列でデータを処理したり、大容量の動画データを効率的にさばくには、GPUの技術や性能が欠かせないからだ。
日本のユーザーに身近なところでいえば、現行の「PlayStation」や「Xbox」にAMD製GPUの「Radeon(ラディオン)」が使われており、次期型にも採用されることが決まり話題になったばかりである。実は知らないうちに、AMDユーザーだったという人も多いのではないだろうか。
単体CPUだけでなく、ノートPC搭載CPUでも、Ryzenを採用するPCベンダーが増えている。19年2月にNECがノートPCの春モデルでRyzenを採用するなど、この分野でも構成比が上昇。BCNランキングの19年11月25日週では、Ryzen搭載ノートPCが25.4%、Core搭載ノートPCが74.4%を記録。実に、ノートPCの4台に1台、Ryzenが搭載されているという衝撃的な結果が大きな話題となった。
その後も、レノボやマイクロソフトのSurface、富士通(直販モデル)、ASUS、VAIO、ファーウェイなど、Ryzen搭載モデルを続々と発売している。日本AMDによると、「2020年はグローバルで60機種以上のRyzen 4000シリーズ搭載ノートPCが登場する予定だ」という。
単体CPUでいえば、ゲーミングPCの需要が増していることで、Ryzen 7やRyzen 5が売れたほか、5月に新製品投入したローエンドのRyzen 3の出だしも好調に売れており、これが全体のシェアを押し上げている。
With(ウィズ)コロナの状況下、リモートワークが推奨されていることで、高性能なCPU搭載PCがこれまで以上に求められている。ほぼ動画ストリーミングに近いZoomなどでオンライン会議をしながら、一方でパワーポイントで提案資料を作成したり、メールを作成したり、表計算したりなど、いくつものソフトを同時並列で立ち上げながら作業するシーンが増えているからだ。
米AMDは6月17日、デスクトップ向けCPU「Ryzen 3000XT」シリーズを7月7日(執筆時点で日本の発売日は未定)に発売すると発表。日本でのローンチにも期待が高まる。GPU「Radeon」も今年後半にハイエンド製品の発売を予定しており、ゲーミングPCや自作ユーザーから高い評価を受けているAMDの製品が活躍する場は、今後も増えそうだ。