全国の主要家電量販店やネットショップからPOSデータを集計する「BCNランキング」の週次データによると、7月8日週にAMDの販売台数シェアが68.6%に急上昇、ライバルのインテルが31.4%に急落した。この1年かけてAMDのRyzenシリーズは着実にシェアを上げていき、7月の第3世代Ryzenシリーズ発売で一気にインテルを抜き去った。CPU市場の販売現場で何が起きているのか。ビックカメラの都市型店と郊外店のPC売り場担当者に顧客の反応を聞いた。

性能が同じなら安い方を選ぶ

 「7月7日の発売前から状況を聞きに来るお客様がいたほど第3世代のRyzenシリーズは人気でした」。小田急百貨店・新宿西口ハルクの中にあるビックカメラ新宿西口店の周辺サプライコーナーの細貝優希氏は、Ryzenシリーズの発売前の盛り上がりを興奮気味に語る。
 
「この1年でRyzenの指名買いが増えるほど」
と顧客の変化に驚くビックカメラ新宿西口店の細貝優希氏

 新宿西口店は超都市型店舗だけあって、さまざまな顧客のニーズに対応する必要がある。そのため通常のPC売り場のほか、ゲーミングPCや自作PC用のパーツコーナーも展開する。以前から自作PCを組み立てるほどPC好きな細貝氏ですら「昔と比べてRyzenに対するお客様の評価は驚くほど変わりました」と語る。
 
ゲーミングPCとパーツコーナーの間の上りで
第3世代Ryzen 9をアピール

 4、5年前までは、「ゲーミングPCといえばAMDではなく、やはりCPU性能の高いインテル」という認識があったという。しかし、AMDがもともと強かったGPU性能に加え、CPU性能でもインテルと引けをとならないレベルのRyzenを投入してからというもの、顧客の反応は徐々に変わっていった。

 そして今では、「Ryzenが入ったんでしょ。買いに来ましたよ」という指名買いする顧客がいるほどまでに変わった。まさにBCNランキングのグラフのように、1年前と比べて顧客の反応が大きく変わったことが売り場の現場からも伝わってくる。
 
JR新宿駅と直結するビックカメラ新宿西口店

 Ryzenのコストパフォーマンスの高さも、細貝氏にとって販売しやすいという。「性能が同じか、もしくは少し上回るなら、お安くお買い求めいただけるRyzenがおススメです」と提案する。

 特に、親と一緒にゲーミングPCを購入しにくる18歳や20歳の若い客層は、インテルとAMDの区別をすることなく購入しにくるという。Ryzenの性能が向上したことの証だろう。性能が同じなら安い方を選ぶという、消費者にとって至極当然の購買行動につながっている。

 通常のノートPCでも、2019年春モデルからNECのLAVIEにRyzenを採用したことが大きい。18年12月までRyzenの採用実績のなかったNECが、19年1月から採用して急増。BCNランキングでAMD製CPU搭載ノートPCに絞ったメーカー別販売台数構成比の推移をみると、NECは19年7月に78.0%まで高まり、親会社のレノボ・ジャパンの5.3%と合算すると83.3%を占める。NECの中でもRyzenの存在感が高まっている。
 
NECのLAVIEでもRyzen搭載モデルが売れている

 「10万~20万円のご予算のお客様が多いので、Ryzen搭載モデルをおススメすると、そのコストパフォーマンスに喜ばれる」と細貝氏は、一般のノートPCの販売でもRyzenの性能と価格の安さをアピールする。なお、10万円の予算を超える顧客は買い替えのケースが多く、家族用として壊れるまで長く使いたいというニーズが強いという。

郊外店ではRyzenが全体の単価アップに貢献

 郊外店はどうだろうか。都心の渋谷と神奈川県大和市の中央林間を結ぶ東急田園都市線の梶ヶ谷駅近くに立地する、コジマ×ビックカメラ梶ヶ谷店を訪れた。

 PC売り場担当の岩崎勝之氏は、「今年の夏商戦は来年1月のWindows 7サポート終了もありノートPCを買い替えるお客様が多く、よく売れました」と笑顔で語る。
 
「夏商戦はPCが売れた」と語る
コジマ×ビックカメラ梶ヶ谷店の岩崎勝之氏

 売れ筋はNECのRyzen搭載モデルだった。グループのオリジナル商品に指定されたこともあるが、しっかりと単価アップにつなげられたのがミソだ。

 「Ryzen 3とRyzen 7を搭載したNECの19年春モデルが昨年末ごろから発売され、最初は『インテルじゃないの?』というお客様の反応もありましたが、起動の速さを比較する実演などを独自に展開したところ、起動が早くて安くて高性能ならということでRyzen搭載モデルを選んでいだだけました」と語る。
 
Ryzenを前面に打ち出しているNECのノートPC売り場

 同店では、Ryzen 7搭載モデルとCore i7搭載モデルを並べて展示。Ryzenは価格が安い分、メモリ8GB、SSDで256GB、BD内蔵のスピードを売りにしたモデルにし、Core i7はHDDになるが1TBの大容量を売りにしたモデルにして、それぞれ顧客の利用シーンに応じて提案したのだ。

 こうすることで全体的にもCeleronからRyzen 3に底上げしたり、HDDからSSDに底上げする流れにつながった。「郊外のお客様は、家族用に使う買い替えで5~7年と長く使われる方が多いので、起動時のストレスが少ないSSDとRyzenの組み合わせが、そうしたニーズとうまくかみ合った形です」と岩崎氏は語る。
 
CPUの速度比較表もわかりやすく表示

 店頭でも、ベンチマークソフトを使ったCPUの速度の違いなどを分かりやすく示しているが、実際に「インテルじゃないと買わない」などというCPUにこだわる顧客はまれだという。多くは郊外型の店舗らしく顧客の求めることをしっかりと引き出して、それにフィットしたPCを提案してくれる岩崎氏のような店員を頼りにして来店する。

 そういう意味でも、岩崎氏にとってRyzen搭載のNECのスタンダードモデルの登場は、顧客にすすめる際の大きな武器になっている。郊外型の店舗でもRyzenの認知度は着実に上がっているようだ。