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【編集部座談会2020】実はお得な大手キャリア 料金は下げずにスマホ決済で還元

 2018年8月に講演会で菅義偉官房長官が「通信料金は4割下げる余地がある」と発言したことをきっかけに、総務省が推進した「携帯電話スマートフォン、スマホ)の通信料金と端末代金の分離」は、多くの消費者が望む通信費の削減につながったのか。国内外の端末メーカーや通信事業者などの発表会に参加する機会の多いメンバーを含む編集部一同の結論は、「スマホ料金は下がっていない」。大手3キャリアの料金プランはますます複雑になり、怒りを超え、諦めの声が漏れた。

5Gを筆頭に、ますます注目される2020年の五つのキーワード

 今回の編集部座談会は、LINEZホールディングス(ZHD、旧ヤフー)の経営統合の発表後に実施した。ソフトバンクMVNOLINEモバイルが資本業務提携し、ヤフーとソフトバンクが共同出資してスマホ決済サービス「PayPay」を立ち上げ、LINEがみずほ銀行と共同で銀行を設立予定と知っている読者は、ソフトバンク-ZHD-LINEのつながりに違和感がなく、むしろ想定内だっただろう。
 
編集長と編集部メンバーの4人で議論。メインキャリアは、au2、ドコモ1、ソフトバンク1で、
別途、1人が楽天モバイルの無料サポータープログラムを利用中だ
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 問題は、LINEとZHDの経営統合を受けて、Yahoo! JAPANと同じ「Y!」のロゴを用いるソフトバンクのサブブランド・Y!mobile(ワイモバイル)の通信料金が下がるとは思えない点だ。

 PayPayの還元キャンペーンの優遇条件に「LINEモバイルユーザー」が加わったり、PayPay残高への銀行からのチャージに当たってLINEの新銀行だけボーナスが付与されたりといった程度のプラスαにとどまると想定される。一定の利用者と知名度を獲得したPayPayは、今後、対象者限定キャンペーンのみ実施し、他キャリアユーザーは還元は一切なしになるかもしれない。
 
ソフトバンク/ワイモバイルユーザーにおすすめのスマホ決済サービス、PayPay。
今年10月以降、LINEモバイルはソフトバンクの第2のサブブランドに格上げか

 第4のキャリアとして、高止まりする料金プランの「価格破壊」が期待されている楽天モバイルが正式サービスを開始するまで、弱小MVNO以外、料金値下げを行う意向はなく、現状維持を続けると考えられる。

 これまでは、最も安い手頃なスマホとして、最新または1世代前のiPhoneをタダに近い金額でバラまき、通信事業者が高額な通信料金やオプションサービスで端末購入補助(割引)に相当する金額を回収する仕組みだった。総務省が法改正を行い、細かなガイドラインを策定し、段階的に商慣習(スマホの売り方)を変えようと介入したものの、通信料金のベースは下がらず、端末代だけが高騰し、総額は変わらないか、むしろ値上がりした。

 現状の問題点を言い合いながら、キャリアに無理な販売ノルマを課した噂されるAppleこそ「今の通信事業者のやりたい放題の根源だ」と指摘する声も上がった。
 
日本で一番売れたスマートフォンの記録を5年ぶりに塗り替えた「iPhone 8」。
理由は10年3月末、5月末、9月末の3回に渡っておきた“駆け込み“だ

重視するべきは、共通ポイントのたまりやすさ・使いやすさ

 記者の持論「メディアに登場する家計見直しアドバイザーは、“大手キャリアからMVNOに乗り換えて通信費を削減”と指南するが、実際にはケースバイケースで、一概に安くなるとは言い切れない。ドコモならd払い、auならau PAY、ソフトバンクならPayPayと、契約している通信キャリアの決済サービスの還元キャンペーンを使い倒せば、MVNOよりおおむね2倍以上高い通信料金の元は取れる。各サービスの利用金額に応じてもらえるポイントを現金相当とみなせば、大手キャリアの方がむしろ安いくらいだ。家計見直しアドバイザーは、キャッシュレス決済や資産運用を推進するキャリアの動きに疎すぎる」を編集部メンバーに説いたところ、おおむね賛同を得られた。

 19年は、10月に通信料金と端末代金の分離を義務づける電気通信事業法の改正と消費増税を控え、3月、5月、9月と3度の駆け込みが発生し、特に春商戦と重なる3月に過去最多の月間販売台数を記録した。
(詳細はhttps://www.bcnretail.com/research/detail/20190417_114685.html)

 分離時代の大手3キャリアの新料金プランは、「シンプルで誰でも分かりやすい」とは正反対。ますます複雑になり、家族2人または3人以上で同じキャリアを契約しなければ、料金プラン例で提示される、“加入1年間は月額1980円”などの最安料金にはならない。

 「スマホ決済を使わないとポイント還元すらほとんどない」「固定通信サービスとのセット利用など、囲い込みがますます厳しくなった」という見方で一致し、議論は、そのまま次のテーマ「キャッシュレス」に続いた。
 
2019年10月に施行された「通信料金と端末代金の完全分離」に関するガイドライン詳細

 座談会の後、KDDIロイヤリティ マーケティングは資本業務提携し、20年5月以降、au契約者などに付与している「au WALLET ポイント」と、共通ポイントサービス「Ponta」を統合すると発表した。

 編集部のauユーザーは、「au WALLET ポイントはたまっても使い道がない」「au PAYの『三太郎の日』はお得といわれても、複雑でよく分からない」と日頃の不満を吐き出し、さらに「au WALLET ポイントがPontaに変わったところで改善するとは思えない」と言い、提携を冷ややかに見ていた。

 一方、今回の業務提携とポイント統合を大英断とみる見方もある。Tポイント陣営からの有力企業の離脱が目立ち、代わってドコモのdポイントと楽天スーパーポイントが躍進する共通ポイントサービス競争で、会員基盤が国内最大級となるPontaが一気に巻き返す可能性が出てきたからだ。
 
au WALLET ポイントの名は消滅するが、価値は、ネットでもオンラインでも使える共通ポイント「Ponta」として一気に高まる

 今年は、19年以上にキャッシュレス=ペイメントとポイントの一体的なマーケティングが進むだろう。ドコモ、auブランドのKDDI、PayPay・Yahoo!・LINEなどの複数のブランドをグループ内に抱えることになるソフトバンク、楽天の4社の争いはますます激しくなるに違いない。(BCN・嵯峨野 芙美/ファイナンシャルプランナー)