• ホーム
  • トレンド
  • ネットでの補聴器購入にご用心! 補聴器を購入したつもりが……勘違いによるトラブルが多発中

ネットでの補聴器購入にご用心! 補聴器を購入したつもりが……勘違いによるトラブルが多発中

時事ネタ

2019/05/24 17:30

 難聴をサポートする補聴器の購入を巡るトラブルが、ネット通販やオークションサイトで多発している。「手軽に購入できると思い、自分用もしくは家族用にとネットを利用したら、実際に届いたのは『集音器』だった」。こうした報告が消費者から相次いでいるのだ。

補聴器と集音器の違いを理解していないことによるネット通販のトラブルが多発している

 まずは、「補聴器」と「集音器」について、それぞれの違いを説明しておきたい。決定的に異なるのは、医療機器か否か、ということだ。医療機器である補聴器は基本性能や安全性などに一定の基準が設けられている。

 一方、医療機器ではない集音器には達成しなければいけない数値の基準は存在しない。「音を増幅する」という点では補聴器と共通するが、ほとんどの製品が対象ユーザーを健聴者や軽度の難聴者に設定している。

 集音器のメリットは補聴器と比較すると価格が安く、購入しやすいということだ。家電量販店でも取り扱いがあり、販路も広い。一時的に音を大きくして聞きたいという状況ではこちらの方が使い勝手がよいだろう。それぞれに向いている人と状況があるので、双方の違いを理解することは購入する上で非常に重要なポイントだ。
 
難聴の程度と年代別聞き取り度合い(個人差があります)

蔓延する混合販売に消費者は困惑 見分ける方法は?

 トラブルの実情を知るために、実際に補聴器を販売するネット通販サイトにアクセスしてみた。Yahoo!ショッピングのトップページで「補聴器」とキーワードを入力して検索。多数の関連アイテムの中から該当する製品を探した。検索にはある程度の時間がかかると考えていたが、最初の一覧ページから「おや?」と違和感を覚えた。製品名に「集音器 補聴器」と併記されているものがいくつもあるのだ。
 
「補聴器」というキーワードでヒットした製品の一覧。
製品名に「集音器 補聴器」と併記されたものがいくつもある

 そもそもこの時点で、販売側が補聴器と集音器を(意図してか、意図せずか)混合させていることがよく分かる。もっと悪質なものでは、製品名に「補聴器」としか表記していないにもかかわらず、実際は「集音器」という出品もあった。

 補聴器と集音器を区別する方法はいくつかあるが、一番分かりやすいのが医療機器認証番号の有無だ。補聴器のようにみせかけるのはグレーでも、この部分を捏造するのは明らかな詐欺行為。記者が調査した範囲では、医療機器認証番号まで偽っているものは見当たらなかった。
 
最も簡単な識別方法は、医療機器認証番号の有無

トラブル回避以外にもある 補聴器を実店舗で購入すべき理由

 オークションサイトの状況はというと、個人間取引ということもあってさらに酷い。必要最低限の製品情報の表記もない出品が多く、知識があまりないユーザーであれば、使い物にならないものをつかむリスクは大いにある。

 例えば、検索結果の上位に出てきたある製品は、説明文が長く、疑問点にも誠実に回答しているようにみえる。しかし、よく読んでいくと、左右で機種が異なっているなど、致命的な欠陥があることが判明してくる。

メーカーサポートについての言及も見受けられたが、実際には、こうした二次流通製品は購入店ではサポートを受けることができない。メーカー直営店でも「こうしたケースは増加していて対応に困っている」ということだった。

自分の耳に合った補聴器を作成 徐々に音に慣れていくことが大事

 こうしたネットでの購入によるトラブル以前に、製品の性質上、補聴器は実店舗での購入が推奨されている。なぜなら聴力や耳の状態、どのような場面で聞こえづらいかは千差万別である、個人に合わせた調整をしない限り満足のいく聞こえは得られないからだ。補聴器販売店で自分の聞こえの状態をしっかりと確認してもらい、どのような状況で困るかなどの要望を伝えたうえで調整(フィッティング)することが後悔しない製品選びにつながる。

 人によっては購入してから何度か調整を繰り返しながら慣らしていく場合もあるが、せっかく買った補聴器を疲れず快適に使い続けるためにはここで手間を惜しまないほうがいいだろう。

 ネットでの補聴器の購入は煩わしさも少なく、特に初めて使用する際には一見とても有効な手段に思える。しかし自分の聞こえに合わないものを購入しても、満足できないばかりか、誤った使い方をすると健康に悪影響を及ぼす可能性もある。自分のためにしろ、家族のためにしろ、専門家から正しい知識を得ることが後悔しないための第一歩だといえるだろう。

※適切な補聴器を選ぶためには、あらかじめ耳鼻咽喉科専門医の診察を受けることをお奨めします。