2026.7.18 13:00
暮らしにプラスエアコン「エオリア」のマザー工場を公開!10年使うための厳しい試験でパナソニック・クオリティーを実現
パナソニック HVAC&CCは6月下旬、家庭用ルームエアコン「エオリア」のマザー工場である滋賀・草津工場の一部を報道陣に公開した。2030年に50%の自動化を目指す中、25年度は25%の進捗。23年6月は5~10%だったというから、2年で大幅に進んだ。
パナソニックの滋賀・草津工場
常務執行役員でエアコン事業部の西暢彦事業部長は、提供する価値として「品質への取り組み」と「独自技術」「IoTテクノロジー」の三つを掲げる。特に品質では「10年使うものだから、徹底してこだわっている」と強調する。
西暢彦事業部長
防水や耐久試験、無響音質試験、コンプレッサー試験による快適性、猛暑や強い日射、極寒環境での運転試験、砂塵耐久やホコリ耐久、豪雨や防風、落雷、長時間運転など、1000を超える品質試験を実施している。今回、その一部を公開した。
1000を超える品質試験
独自技術では、空間の清潔を実現するナノイーXを紹介。IoTテクノロジーでは、国内外のアプリとエアコンをクラウドサービスで連携し、エアコン本体からさまざまなログデータを収集し、エアコンのライフサイクルコストの削減を実現しているという。
「エオリアのログデータから得た運転状況をみると、夏場のリビングで24時間エアコンを運転している方は25年に22.7%まで増えており、ルームエアコンが生活必需品になっている」と、24時間つけっぱなしで使っているユーザーが増えている点に着目する。
22.7%のユーザーが24時間運転
山本弘志部長
冷房の長時間運転で課題になるのが、いかに負荷が低い運転時の省エネ性能を上げるかになる。
「運転開始時はしっかりと出力を上げて温度を下げるが、室温が安定した後は、室温を維持する運転に移行する。このとき、出力をしっかりと落とさないと、オン・オフを繰り返す、電力ロスの多い運転になる」と説明する。
ユーザーのログデータからとった冷房運転分布イメージでは、必要なパワーが30%以下の中・低負荷運転時が、全体の65%の構成比を占めていることがわかる。つまり、室温をキープするための中・低負荷運転時の省エネ性能を高めることが、重要なポイントになるのだ。
中・低負荷運転で65%を占める
パナソニックの独自技術「エコロータリー コンプレッサー」は、まさに低速回転時の省エネ性能を高めるデバイスである。
エコロータリー コンプレッサー
ベーンとピストンをはめ合い構造にした
室外機に内蔵するロータリー コンプレッサーで冷媒を圧縮する際、一般的なコンプレッサーはベーンと呼ばれる仕切り板をバネで押している。そのため、低速回転時にベーンとピストンのすき間から圧縮冷媒がわずかに漏れる。
エコロータリー コンプレッサーはベーンとピストンをはめ合う構造(アセンブルベーン方式)にしたことで、低速でゆっくり回転しているときも圧縮した冷媒が漏れにくい。冷房運転時の最小出力を、約40%低減することに成功した。
「安定運転時に最小の出力でしっかりと抑えることができるので、オン・オフによる電力ロスが発生せず、トロトロと運転することができる」と山本部長は表現する。
省エネと快適を両立
エコロータリー コンプレッサーを搭載する機種は、LX/X/XS/HXシリーズである。今後、2027年に省エネトップランナー基準が変更され、基準達成モデルを増やすときも、このエコロータリー コンプレッサーがキーデバイスになるだろう。どこまで下位モデルに搭載していけるかがカギを握る。
新しい評価性能に対応した試験室
無響室はエアコンから出る騒音を可視化し、騒音がどこから出ているのかまで特定できる。静かさを表す指標である「暗騒音値」が5.0dB(A)で世界トップだという。通常は約18dB(A)というから、かなりの高性能だ。
無響室で室内機の騒音を試験
騒音源を可視化して特定
室内機用と室外機用と同じ構成で、床、天井、壁の四方を吸音材で囲っている。試験室ではエアコンの弱モードの運転をしていたが、運転音はほとんど聞こえなかった。しかし運転を止めると、さらに静けさが深まった。
住環境試験室では、部屋の冷え方や暖まり方を評価する。幅4.5×奥行き7.2×高さ2.5mの空間に、温度と風速を測るセンサーを等間隔で張り巡らしている。センサーの計測設置個所は室内温度で567点、風速で60点ある。温度や風速分布を広範囲で可視化し、その変化をリアルタイムで3D表示する。
部屋のサイズや間取りは、L字や2部屋などに設定できる。床にある白いラインに沿って壁を設置する形なので、自由度は高い。住宅のタイプも、昭和や平成の一般住宅から、令和の最新のZEH住宅の空調快適性を評価できる。
住環境試験室
温度と風速センサー
見学した試験室は、高性能住宅を想定したもの。日中から夜間の外気温の推移を再現できる。温度は-30℃~55℃の調整が可能だ。また、換気負荷や熱負荷も、時間的な変化を計測できる。さらに、除湿や霜取り運転時のドレン水も計測できる。見学では、夏場を想定した外気温35℃の設定だった。
夏場の外気温35℃を設定
熱交換器の材料
熱交換器の部品
室内機用の熱交換器
熱交換器の材料は、銅管のヘアピン、端を抑えるエンドプレート、ヘアピン同士をつなぐリターンヘッド、ヘアピンを固定するアルミフィンプレートがある。
機種にもよるが1台で約600枚のアルミフィンを積載し、銅管をつなげて熱交換器をつくる。拡管機では、熱交換器をセットしてスタートすると、先端に鋼球がついた鉄の棒が配管に入っていく。鋼球が配管を広げながらアルミフィンと密着させていく。
拡管機
自動化された熱交換器の製造ライン
次にパナソニックの独自技術である「ホコリレスコーティング」と自動洗浄。熱交換器の表面(アルミフィン切断面)に特殊なコーティングを施してつるつるにし、運転中に自然発生する水で、カビの栄養源となるホコリを洗い流す機能だ。
独自技術のホコリレスコーティング
エアコン室外機の熱交換器
部品を製造ラインに自動搬送
室内機を組み立てる製造ラインは三つあり、1ライン当たり1日850台を生産する。1ラインに約80人を配置。そのうち社員は約1割で、ブロックごとのリーダーの役割を担っている。3ラインあわせて日産2550台だが、改善を重ねることで3000台も可能だという。
海外の工場のように1本のラインですべての組み立て工程を行うことはできず、どうしても途中で折り返したりする必要が生じる。限られたスペースで面積生産性を上げるため、ラインが変わるところではAMRなどを使うなど工夫している。
熱交換器のロウ付け工程は、作業員が携わる。技能によりSランク、Aランク、Bランクに分かれる。最上位のSランクは、アルミと銅の両方のロウ付けができる人。Aランクが銅のロウ付け、その下がBランクとなる。3カ月に1回、習熟テストをしながら技能レベルを確認する。
検査工程では、AIを使ったロボットで外観の傷や樹脂の色むらなどを検査する。以前は人による目視や五感に頼った検査だった。
最後の製造検査は、1台当たり5分かけて人が最終チェックして梱包工程に流れていく。リモコンや取扱説明書などの付属品を入れる梱包工程は、まだ人手のかかるラインで、自動化する余地が残されているという。
梱包工程
草津工場の自動化は、2030年に50%の目標を掲げる。2年前は5~10%程度だったのを、25年度に25%まで引き上げた。順次自動化を進めている新しいラインで得た成功モデルを、他のラインでも展開していけば目標達成は可能とみている。
また、面積生産性でいうと1.8倍まで改善したという。今後は立体的な空間を有効活用することも視野に、さらに生産性を高めていく。(BCN・細田 立圭志)
写真ギャラリー
1000を超える厳しい品質試験
パナソニック HVAC&CCは家庭用エアコン「エオリア」のほか、空気質関連製品、エコキュートなど水関連製品、空調デバイス、冷凍機などの開発から製造、販売、施工、サービスを一気通貫で手掛ける。常務執行役員でエアコン事業部の西暢彦事業部長は、提供する価値として「品質への取り組み」と「独自技術」「IoTテクノロジー」の三つを掲げる。特に品質では「10年使うものだから、徹底してこだわっている」と強調する。
防水や耐久試験、無響音質試験、コンプレッサー試験による快適性、猛暑や強い日射、極寒環境での運転試験、砂塵耐久やホコリ耐久、豪雨や防風、落雷、長時間運転など、1000を超える品質試験を実施している。今回、その一部を公開した。
独自技術では、空間の清潔を実現するナノイーXを紹介。IoTテクノロジーでは、国内外のアプリとエアコンをクラウドサービスで連携し、エアコン本体からさまざまなログデータを収集し、エアコンのライフサイクルコストの削減を実現しているという。
省エネのコア技術「エコロータリー コンプレッサー」
エアコン事業部 事業企画センター 商品企画部の山本弘志部長は、エアコンを取り巻くトレンドに触れた。「エオリアのログデータから得た運転状況をみると、夏場のリビングで24時間エアコンを運転している方は25年に22.7%まで増えており、ルームエアコンが生活必需品になっている」と、24時間つけっぱなしで使っているユーザーが増えている点に着目する。
冷房の長時間運転で課題になるのが、いかに負荷が低い運転時の省エネ性能を上げるかになる。
「運転開始時はしっかりと出力を上げて温度を下げるが、室温が安定した後は、室温を維持する運転に移行する。このとき、出力をしっかりと落とさないと、オン・オフを繰り返す、電力ロスの多い運転になる」と説明する。
ユーザーのログデータからとった冷房運転分布イメージでは、必要なパワーが30%以下の中・低負荷運転時が、全体の65%の構成比を占めていることがわかる。つまり、室温をキープするための中・低負荷運転時の省エネ性能を高めることが、重要なポイントになるのだ。
パナソニックの独自技術「エコロータリー コンプレッサー」は、まさに低速回転時の省エネ性能を高めるデバイスである。
室外機に内蔵するロータリー コンプレッサーで冷媒を圧縮する際、一般的なコンプレッサーはベーンと呼ばれる仕切り板をバネで押している。そのため、低速回転時にベーンとピストンのすき間から圧縮冷媒がわずかに漏れる。
エコロータリー コンプレッサーはベーンとピストンをはめ合う構造(アセンブルベーン方式)にしたことで、低速でゆっくり回転しているときも圧縮した冷媒が漏れにくい。冷房運転時の最小出力を、約40%低減することに成功した。
「安定運転時に最小の出力でしっかりと抑えることができるので、オン・オフによる電力ロスが発生せず、トロトロと運転することができる」と山本部長は表現する。
エコロータリー コンプレッサーを搭載する機種は、LX/X/XS/HXシリーズである。今後、2027年に省エネトップランナー基準が変更され、基準達成モデルを増やすときも、このエコロータリー コンプレッサーがキーデバイスになるだろう。どこまで下位モデルに搭載していけるかがカギを握る。
高品質を保つ無響室と住環境試験室
ここからは公開された草津工場(C22棟)の試験室や製造ラインをみていこう。まず1階にある自然冷媒(R290)の新しい性能評価に対応した試験室だ。落差や落下、振動、傾斜衝撃、制御実験、EMC(電気的なノイズ)、大能力(フルパワー時の冷暖房能力)、無響室、新性能評価エミュレーター、住環境の試験が行える。見学できたのは、無響室と住環境試験室だ。
無響室はエアコンから出る騒音を可視化し、騒音がどこから出ているのかまで特定できる。静かさを表す指標である「暗騒音値」が5.0dB(A)で世界トップだという。通常は約18dB(A)というから、かなりの高性能だ。
室内機用と室外機用と同じ構成で、床、天井、壁の四方を吸音材で囲っている。試験室ではエアコンの弱モードの運転をしていたが、運転音はほとんど聞こえなかった。しかし運転を止めると、さらに静けさが深まった。
住環境試験室では、部屋の冷え方や暖まり方を評価する。幅4.5×奥行き7.2×高さ2.5mの空間に、温度と風速を測るセンサーを等間隔で張り巡らしている。センサーの計測設置個所は室内温度で567点、風速で60点ある。温度や風速分布を広範囲で可視化し、その変化をリアルタイムで3D表示する。
部屋のサイズや間取りは、L字や2部屋などに設定できる。床にある白いラインに沿って壁を設置する形なので、自由度は高い。住宅のタイプも、昭和や平成の一般住宅から、令和の最新のZEH住宅の空調快適性を評価できる。
見学した試験室は、高性能住宅を想定したもの。日中から夜間の外気温の推移を再現できる。温度は-30℃~55℃の調整が可能だ。また、換気負荷や熱負荷も、時間的な変化を計測できる。さらに、除湿や霜取り運転時のドレン水も計測できる。見学では、夏場を想定した外気温35℃の設定だった。
エアコンの心臓部である熱交換器の製造ライン
次に工場内の製造ラインをみていこう。エアコンの心臓部である熱交換器の製造工程は、拡管、乾燥、ベンド挿入、ロウ付け、EVAカット、防汚まであり、各工程で搬送やマテハン、治具セットなどを自動化した。作業員4人の削減につながったという。
熱交換器の材料は、銅管のヘアピン、端を抑えるエンドプレート、ヘアピン同士をつなぐリターンヘッド、ヘアピンを固定するアルミフィンプレートがある。
機種にもよるが1台で約600枚のアルミフィンを積載し、銅管をつなげて熱交換器をつくる。拡管機では、熱交換器をセットしてスタートすると、先端に鋼球がついた鉄の棒が配管に入っていく。鋼球が配管を広げながらアルミフィンと密着させていく。
次にパナソニックの独自技術である「ホコリレスコーティング」と自動洗浄。熱交換器の表面(アルミフィン切断面)に特殊なコーティングを施してつるつるにし、運転中に自然発生する水で、カビの栄養源となるホコリを洗い流す機能だ。
1日3000台の生産も可能
なお、本体の組み立てに使う部品などは、ベルトコンベアで自動搬送される。以前は作業員が1日2万~3万歩もかけて運んでいた部品供給を、AMR(自律走行搬送ロボット)などによる自動搬送に置き換え、効率化を図っている。
室内機を組み立てる製造ラインは三つあり、1ライン当たり1日850台を生産する。1ラインに約80人を配置。そのうち社員は約1割で、ブロックごとのリーダーの役割を担っている。3ラインあわせて日産2550台だが、改善を重ねることで3000台も可能だという。
海外の工場のように1本のラインですべての組み立て工程を行うことはできず、どうしても途中で折り返したりする必要が生じる。限られたスペースで面積生産性を上げるため、ラインが変わるところではAMRなどを使うなど工夫している。
熱交換器のロウ付け工程は、作業員が携わる。技能によりSランク、Aランク、Bランクに分かれる。最上位のSランクは、アルミと銅の両方のロウ付けができる人。Aランクが銅のロウ付け、その下がBランクとなる。3カ月に1回、習熟テストをしながら技能レベルを確認する。
検査工程では、AIを使ったロボットで外観の傷や樹脂の色むらなどを検査する。以前は人による目視や五感に頼った検査だった。
最後の製造検査は、1台当たり5分かけて人が最終チェックして梱包工程に流れていく。リモコンや取扱説明書などの付属品を入れる梱包工程は、まだ人手のかかるラインで、自動化する余地が残されているという。
草津工場の自動化は、2030年に50%の目標を掲げる。2年前は5~10%程度だったのを、25年度に25%まで引き上げた。順次自動化を進めている新しいラインで得た成功モデルを、他のラインでも展開していけば目標達成は可能とみている。
また、面積生産性でいうと1.8倍まで改善したという。今後は立体的な空間を有効活用することも視野に、さらに生産性を高めていく。(BCN・細田 立圭志)
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