JR東日本とKDDI、「TAKANAWA GATEWAY CITY」で共創

経営戦略

2023/05/19 19:30

 KDDIと東日本旅客鉄道(JR東日本)は5月16日に、「100年先の心豊かなくらしのための実験場」のビジョンを掲げる「TAKANAWA GATEWAY CITY」(東京都港区)において、街の設備や街の人に関するデータを収集・分析するデータ基盤(都市OS)の構築を通して、新たなサービスの創出を可能にするまちづくりを進めることを発表した。なお、KDDIは2025年春に本社を「TAKANAWA GATEWAY CITY」へ移転する。

分散型スマートシティの実現に向けた、さまざまな取り組みを実施

「TAKANAWA GATEWAY CITY」にKDDIが入居へ

 両社は分散型まちづくりの実現に向けて、「TAKANAWA GATEWAY CITY」にて街の設備データ、街に関わる人(住む人・働く人・訪れる人)のデータなど異なる分野のあらゆるデータを収集分析し、分野をまたがってデータを活用し合えるプラットフォームである都市OSを活用して、街から得られるデータに加えてJR東日本が持つ鉄道や駅のデータや、KDDIが有する人流データなどを収集し、デジタルツイン上で分析することで

○街に関わる人に快適なサービスの開発
○防災シミュレーションを活用した強靭なまちづくりの推進
○ロボットを活用したサービスの開発

を実施していく。

 「街に関わる人に快適なサービスの開発」では、オフィスの入退場記録データや鉄道データ、商業データなどを組み合わせて、分析した結果をリアルタイムにフィードバックすることで、「TAKANAWA GATEWAY CITY」に関わる人に快適なくらしをリコメンドするサービスの開発に着手する。

 「防災シミュレーションを活用した強靭なまちづくりの推進」としては、デジタルツイン空間に作成した屋内外の3D都市モデル上に、実際の街から取得した人流データや街の設備のデータをかけ合わせることによって、精度の高いシミュレーション環境を構築し、非常時の避難シミュレーションや防災計画の検証など、安心安全なまちづくりに向けた取り組みに活用していく。
防災シミュレーションのイメージ

 「ロボットを活用したサービスの開発」では、「TAKANAWA GATEWAY CITY」において、都市OSのデータを活用することでロボットが自律的に走行ルートや人の有無を判断し、ロボットから来場者にアプローチする回遊販売サービスなど、ロボットが人に寄り添う世界を目指す。

 さらに、スタートアップ事業共創プログラム「高輪ゲートウェイStartup Program with JR東日本 × KDDI」の第1期として、「世界一グリーンなまちづくり」と「クリエイターが輝くまちづくり」をテーマに企業を採択し、検証をおこなっている。

 「世界一グリーンなまちづくり」では、グリーンズグリーンを採択して、土を一切使用せず不織布に直接スナゴケを活着させたスナゴケシートを取り外し可能なパネル形式で提供し、スナゴケシートを活用した苔パネルアートを高輪ゲートウェイ駅の仮囲いに設置し、設置の手軽さおよび水やりメンテナンスの容易さを検証した。

 同じく採択されたMomoは、専門の知識を必要とすることなく、多くの開発費や時間をかけずにIoTシステムを構築できるサービス「Palette IoT」を提供し、苔パネルアートにセンシング技術を活用することで、水分量や日照量を計測し、苔のデザイン性や健康状態を保てるかを検証している。
 
苔パネルアートのイメージ

 「クリエイターが輝くまちづくり」では、採択されたforiioが展開するクリエイターの作品を可視化するオンラインポートフォリオサービス「foriio」を通じてクリエイターを高輪に集め、「クリエイター支援施設」や「リアルコミュニティ」に関するワークショップを実施した。今後は、αU market(NFTアート販売)や高輪ゲートウェイ駅周辺など、バーチャル・リアル空間を活用してクリエイターを応援していく。
 
αU marketにて販売されたNFTアートのイメージ

 そのほか、2022年10月に提供が開始された、離れていても同じ場所にいるかのようにチームでのコミュニケーションを可能にする「空間自在ワークプレイスサービス」を活用して、JR東日本は2023年2月に新潟県の燕三条駅、2023年3月には栃木県の那須塩原駅にて、地場産業活性化や学習機会の場を開設した。「TAKANAWA GATEWAY CITY」のまちづくりにも活用していく。

 4月には、ビジネス会議用途で提供していた「空間自在ワークプレイスサービス」をエンターテインメント領域に拡大し、アーティストとファンが大画面かつ臨場感のある空間でコミュニケーションできる「ミート&グリート」のオンラインイベントを開催しており、今後も同サービスの新たな顧客体験価値創造に向けて、ビジネス利用だけでなくエンタメ、教育、旅行など、さまざまな分野へ拡大するなど、場所や時間にとらわれない分散型まちづくりを目指す。
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