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メルコHD、グループ再編で「バッファロー」に社名変更、24年度に「シマダヤ」をスピンオフ上場

 PC周辺機器ベンダーのバッファローをグループ会社に持つメルコホールディングス(メルコHD)は5月18日、グループの再編方針を発表。2024年度を申請目標として子会社のシマダヤをスピンオフ(分離・独立)上場する。その後、速やかにメルコHDはバッファローを合併し、社名をバッファローに変更する。シマダヤの社名やブランドは維持する。

「森の経営」のイメージ(メルコHDの資料より)

「千年企業」実現のための「森の経営」を見直し

 今回発表した再編の背景には、メルコHDが2003年に純粋持株会社体制に移行し、実践してきた「森の経営」の見直しがある。

 「森の経営」とは、創業者である牧誠氏が2014年5月に経営理念として掲げた四つの「メルコバリュー」のうちの一つである「千年企業」を実現するための概念で、グループが永く繁栄しつづけるための知恵や仕組みを森になぞらえたもの。

 創業者が「多くの木が、しかも同じ種類ではない、違った種類の多くの木が常に茂り、育ち続ければ、森全体は繁栄しつづけていく」と説いていたように、多様な事業を成長させることが、グループ全体の成長につながるという考えである。ちなみに、残り三つのメルコバリューは「顧客志向」「変化即動」「一致団結」である。

 今回の再編では、「森の経営」でこれまで経営基盤の強化と事業分野の拡大を図ってきた一方で、事業分野の範囲が広がりすぎたことによる問題点も顕在化してきたという。具体的には(1)経営責任の明確化、(2)ガバナンスの明確化、(3)ブランドの明確化――の三つ課題だ。

 (1)については、純粋持株会社体制では傘下会社の重要な意思決定にメルコHDの事前承認が必要となり、経営責任の所在が不明確になることや、迅速な経営意思決定に支障をきたしていた。今回、シマダヤをスピンオフすることで、重複する意思決定プロセスを廃止し、経営責任の明確化が図れる。

 また(2)では、シマダヤが上場することで、それぞれの経営陣が直接、資本市場からのガバナンスを意識するようになり、市場との直接対話によるガバナンスの明確化が図れる。

 最後の(3)では、メルコバリューが傘下会社の経営方針や業界特性にそぐわない事態も生じているとする。「バッファロー」と「シマダヤ」という既に広く認知されているブランドと企業名を一致させることにより、さらなる認知度向上とアイデンティティの確立が図れる。
 

東証「プライム市場」から「スタンダード市場」へ移行

 シマダヤのスピンオフでは「株式分配型」を採用する。メルコHDの株主に対し、シマダヤの株式を現物配当で交付する方法だ。ただし、東証からシマダヤの上場承認を得られることが条件となる。
 
メルコHDとシマダヤの「現状」と「スピンオフ後」
(メルコHDの資料より)

 シマダヤのスピンオフの後、メルコHDは東証プレミアム市場からスタンダード市場に移行する予定。メルコHDの時価総額約560億円(23年4月末時点)は、理論上、シマダヤの価値相当だけ減少する。そのため、プレミアム市場からスタンダード市場への移行が規模的に適切になるからだ。

 また、流通株式比率が制約されるプライム市場では株主還元の手段が限定される。総還元性向80%を目標に株主還元を重視するメルコHDにとって、スタンダード市場に移行した方が株主還元の手段が多様化され、機動的で柔軟な資本政策が推し進められると判断した。

 今回の再編では、シマダヤのスピンオフ後、メルコHDの社名をバッファローに変更することも示された。「メルコ」は、1975年4月に東京のオーディオメーカー、ジムテックを退職した牧誠氏が、翌5月に故郷の名古屋市の実家で四畳半のアンプ専門メーカーとして起業したときの社名で、「Maki Engineering Laboratory Company(牧技術研究所)」の頭文字から名づけられたものである。(BCN・細田 立圭志)
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