【喜びの原点・6】 「メルコを支える人々を不幸にしないため、会社の永続の決意を謳ったものです」――。バッファローをグループ会社に擁するメルコグループの創業者・牧誠氏は、経営理念「メルコバリュー」のひとつである「千年企業」を掲げたときの決意をこう語っている。壮大な理念に込められた創業者の想いとは。

2000年11月13日に週刊BCNの取材に応じる牧誠氏

 「千年企業」は、2000年の年頭訓示で新たな目標として掲げられた。「目先の利益ばかりにとらわれず、会社がこれまで培ってきた独自の価値を引き継ぎ、後世へ受け継いでいく」という言葉にあるように、社員はもちろんのこと、顧客、取引先、株主などすべてのステークホルダーを支えるために、企業は永続していかなければならない。まさにメルコの創業以来、自身の体験を通じて築き上げられた理念だった。

 創業時に上市した「糸ドライブプレイヤー」、オーディオメーカーから新たなPC周辺機器メーカーとしての成長を方向づけた「P-ROMライター」や「プリンタバッファ」など、輝かしいヒット商品を世に送り出したが、今となってはどれも使われていないことを牧氏はだれよりも理解していた。だからこそ、企業は変化しつづけなければ永続できないのだ。

 また、「千年」という長い期間にわたって事業を営むために重要な社員の心がけとして、社員一人ひとりが「日ごろの仕事の中で、常に“つなぐ”気持ちを忘れないで欲しい」と語っている。自分が今、携わっている仕事は先輩が築き上げた土台の上にあり、今の仕事が将来の後輩の土台につながり、そして未来の発展へと受け継がれていくからだ。

 こうした絶え間ない変化と未来の発展に向けた継承について、牧氏は2014年に執筆した『理念BOOK メルコバリュー』の中で次のように語っている。「変化しつつも、変わらぬものを引き継ぐ。変わらぬものを引き継ぐために変化しつづける。これが企業であり、わが社が歩んできた道そのものだ」。

 幸いにしてPCは20年以上も発展しつづけてPC周辺機器の市場が拡大したものの、キーデバイスだったPC自体がスマートフォンやタブレットに取って代わられるという大きな変化が生じた。「永遠と思われていた分野であっても、その繁栄は必ず終わる時が来る」と語りつつ、永続してつないでいくためには新しい事業を立ち上げる必要性を説いた。

 「千年企業」を実現するために、「森の経営」という、メルコにとって大切な概念を固めたのも1990年代後半だ。森の経営は、グループが永く繁栄しつづけるための知恵や仕組みを、森になぞらえた。

 また、「古い木に新しい枝を継ぎ足すことでは新しい事業を大きく育てることはできない。全く別の土地で苗から育てる」や、「多くの木が、しかも同じ種類ではない、違った種類の多くの木が常に茂り、育ち続ければ、森全体は繁栄しつづけていく」と説いているように、同じ木ではなく、種類の違う木であることが重要なのだ。

 「温暖な気候の時には広葉樹が育ち、寒冷の時代に入れば針葉樹が育つ。途中で枯れる木があるかもしれないが、多種多様な木を揃えておけば、必ずその環境に合った木が生き残っていくはずだ」。

 「千年企業」と「森の経営」は、メルコグループの決算発表会などで必ず語られる大切な言葉となっている。(BCN・細田 立圭志)