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ポメラに生みの親が帰ってきた──4年の沈黙を破り文字入力専用機に新製品

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2022/07/17 18:40

 4年の沈黙を破りポメラが蘇る。キングジムは、新モデルDM250を7月29日に発売すると発表した。ポメラの新製品は18年6月発売のDM30以来4年ぶり。16年10月発売の前モデルDM200からは6年ぶりの新登場だ。デジタルメモという新しいカテゴリーを切り拓いたポメラ。初号機DM10の発売から14年経過しても、製品コンセプトにブレはない。ポメラ初号機の生みの親、立石幸士氏も帰ってきた。しばらく開発からは遠ざかっていたが、昨年6月、執行役員 開発本部副本部長兼電子文具開発部長に就任。再びポメラ開発の陣頭指揮を執ることになった。

縦書きのシナリオモードも加わった新ポメラDM250。
スマートフォンとWi-Fiで接続し、テキストデータをやり取りできるようにもなった。
連続使用時間も24時間に拡大。USB-Type C充電に対応し、
保存文字数も従来機の2倍、20万文字に増えた

 ポメラのコンセプトとは何か。ズバリ「テキスト入力のみに特化したツール」。キーボードとディスプレイを備えたデバイスでありながら、インターネットには接続できない。そのため、動画の視聴はおろかTwitterやFacebookを使うこともできない。LINEもだめ。メールすら使うことすらできない。表計算とも写真の表示とも無縁だ。徹頭徹尾文章を書くこと「だけ」にこだわりぬいた道具。それがポメラだ。

 はっきり言って、ポメラはPCの代替にはならない。使う人と用途を選ぶ。ポメラでテキストファイル以外の資料を参照することはきないし、文書作成の合間にメールをチェックすることもできない。ディスプレイは今時珍しいモノクロ。大きさは7インチしかない。しかし、キーボードの大きさや配置、打ち心地はすばらしい。特段書くことがなくても、ただただ打っていたいような気にさせる出来だ。周囲の雑音には見向きもせず、ひたすら内なる思いを文字として受け止め文章を作成することだけをサポートする。
 
ポメラの生みの親が久々に開発に帰ってきた。
立石幸士 執行役員 開発本部副本部長兼電子文具開発部長

 デジタルデトックスという言葉がある。デトックスとは「解毒」を意味する。毎日デジタルデバイスに囲まれて生活を送っている現代人に対して、しばらくそうした機器から離れてリフレッシュしてみては、という提案だ。確かに情報に振り回され、あわただしく生活を送る我々にとって、そういう時間は必要なのかもしれない。しかし、解毒の対象はデジタル機器ではない。インターネットだ。すべての「毒」はインターネットからもたらされる。なかには「薬」もあるわけだが、デトックスの対象はネット接続だ。

 ポメラはインターネットとは無関係に機能する。インターネットデトックスにぴったりのツールだ。ユーザーとして一番向いているのは作家だろう。創作活動を一切妨げず、文章を紡ぐことだけをひたすら支援する。0から1を生み出す活動には大きな苦痛が伴う。誘惑も多い。ちょっと動画を見てみるか、ちょっとメールをチェックするか、ちょっとニュースを見てみるか……一切応えず沈黙を守るのみ。すがすがしい。
 

 電子文具市場で、キングジムはトップシェアメーカーだ。この1年も安定的に首位を走り続けている。一番の売れ筋はBoogie Board。手書きの電子メモともいえる製品だ。同社の電子文具で販売台数のおよそ8割を占める。一方ポメラは1割前後。一見ニッチな製品に見える。しかし販売金額では逆転。ポメラが4割から5割を占める。同社電子文具の稼ぎ頭は、実はポメラなのだ。新製品について、立石幸士 執行役員 開発本部副本部長兼電子文具開発部長は「文章を書くための機能だけをひたすら極めた自信作。初号機以来、ずっと支持いただいているのは、作家の方をはじめとする本当に文章を書く方々。ただ、PCやタブレットと併用し、議事録などを素早く入力する用途にも使ってほしい」と話す。また、今後の製品については「今回の新製品は、登場までやや時間がかかりすぎた。今後はもう少し発売の間隔を短くしていきたい」と意気込みを語った。(BCN・道越一郎)
 
今時珍しいモノクロ画面。
文字入力だけに集中できるのがポメラの最大の特徴だ