中判デジカメ1億画素の破壊力

オピニオン

2018/10/14 12:00

 デジカメも、ついに1億画素の時代に突入する。9月、富士フイルムが開発発表を行った「GFX 100 Megapixels Concept」は1億200万画素。ミラーレス一眼として世界最大画素数の画像センサーを搭載する中判デジカメだ。価格は100万円台前半、2019年上半期での発売を目指して開発の最終段階に入っている。ドイツ・ケルンで開催されたフォトキナで披露し、大きな注目を集めた。

1億200万画素とミラーレス一眼として世界最大画素数の画像センサーを搭載する中判デジカメ
「GFX 100 Megapixels Concept」

 フォトキナの富士フイルムブースには、このカメラで撮影した同社開発陣の記念写真が飾られていた。国際的な写真家集団マグナム・フォトのMark Power氏が撮影した、開発に携わった102名の集合写真だ。

 これだけの大人数であるにも関わらず、一人一人の表情まで鮮明にしっかり映り込んだ写真の「破壊力」はすさまじい。おそらく、大きな三脚にカメラを据え、全員にピントが来るよう十分に絞り込み、細部まで光が行き渡るようしっかりとライティングを施して、入念な準備の上に撮ったものだろう。集合写真の枠を超え、102名のポートレートとでも言えるほどのドラマが伝わり、ある種の凄味すら感じる。
 
1億画素で102名を写し込んだ集合写真の鮮明さに、思わず足を止めて見入る来場者
(フォトキナ2018 フジフイルムブース)

 普通の人が写真を撮るにあたっては、だいたい1000万画素もあれば、十分美しい写真に仕上がる。昨今ブームになっている高画素のカメラでも3~4000万画素クラスが上限だ。それが一気に1億超えとなるとまさに別世界。大人数の集合写真ばかりでなく、遠目から「引き」で美しさを狙う風景、無数の小さな花が咲き乱れる桜など、こまごまとしたものから成り立つ造形を撮るにはうってつけだ。

 花びらの一つ一つが鮮明に写った満開の桜が撮れる、というのは、写真愛好家にとってはあこがれの的だろう。一方、ピントやブレにはきわめて厳しく誰でも気軽に撮れるようなものではない。普段使いとしてはとても使いにくい特別な存在だが、ここぞというときには絶大な威力を発揮する、そんなカメラに仕上がりそうだ。
 
フォトキナ2018開幕前日のプレスイベントで「GFX 100Megapixels Concept」を発表する富士フイルムの
光学・電子映像事業部 飯田年久 事業部長

 テレビとカメラでは画素数の考え方が異なるものの、単純に解像度で比較すると、4Kテレビでは830万画素あれば十分な画像が楽しめる。しかし8Kともなると、3300万画素は必要になる。画像を加工したり一部を拡大して楽しむことを考えれば、1億画素の写真というのは決してオーバースペックではない。今年12月1日には「新4K8K衛星放送」として、BS/110度CSによる4K/8K放送の本放送が始まる。いよいよ本格的な高解像度時代の幕開けだ。8Kクオリティが普及するまではまだまだ時間はかかりそうだが、フィルムの常識をはるかに超えた、画像・映像の新時代がまもなく始まろうとしている。(BCN・道越一郎)