• ホーム
  • トレンド
  • ソニーのテレビが中国・TCLの傘下入り――どうなる「ブラビア」【道越一郎のカットエッジ】

ソニーのテレビが中国・TCLの傘下入り――どうなる「ブラビア」【道越一郎のカットエッジ】

データ

2026/02/01 18:30

 「ソニーよ、お前もか……」。そう感じた人も多いだろう。1月20日、ソニーはテレビ事業とホームエンタテインメント事業を分離し、中国・TCLと新たに設立する合弁会社に移管。2027年4月にも事業開始の見込みだと発表した。ソニーの持ち株比率は49%、TCLは51%だ。新会社はソニーの連結対象から外れ、TCL傘下になる。「ソニー」「ブラビア」などの名称は引き継ぐとしているが、事実上の事業売却だ。日本メーカーのテレビ事業は「外資化」が進んでいる。16年にシャープが会社ごと台湾・鴻海の傘下に入り、18年に東芝がテレビ事業を中国・ハイセンスに売却した。2社のテレビ事業はそれぞれ違う道を歩んでいる。ソニーのテレビは今後どうなるのか。全国2400の家電量販店やネットショップの実売データを集計する、BCNランキングのデータを交え展望する。

中国・深センに本拠を構えるTCLとソニーがテレビ事業と
ホームエンタテインメント事業で合弁会社を設立

 ソニーのテレビ事業はかつて、04年度から10期連続で赤字を計上する暗黒期に苦しんでいた。しかし14年、当時の平井一夫社長が台数を追わず利益を追求する方針に転換、V字回復を果たした。その後黒字は維持しているものの、コロナ禍特需の反動減などで、足元の利益率は低下しつつある。今回の売却について一部では、再び事業が悪化しても、容易に切り離せるようにする事前措置ではないか、との見方もあるようだ。台数は追わない、とはいえ、ソニーのテレビはそれなりの存在感を維持してきた。15年当時、テレビの販売台数シェアは、トップがシャープで38.4%、2位がパナソニックで18.9%、ソニーは3位で13.6%だった。以降パナソニックがシェアを落とし、TVS REGZAが上昇する中でも、ソニーは2桁シェアを維持。コロナ禍特需の21年では18.0%までシェアを伸ばした。しかし、これ以降はシェアの下落が継続している。24年にはついに9.6%と1桁まで縮小。10.2%のハイセンスに3位の座を明け渡し、4位に後退した。昨年も8.38%で4位は堅持したが、5位パナソニックとの差はわずか0.01%。5位転落目前だ。ここまでシェアが落ちてくると利益への影響も無視できない。
 
テレビの販売台数メーカーシェア(%)。
ソニーのシェアは1桁台まで落ち込んでいる

 テレビ事業の売却で記憶に新しいのは東芝だ。18年、中国・ハイセンスに事業譲渡した。両社の強みを生かし相乗効果を発揮すべく、事業形態を整理。21年に社名をTVS REGZAと改めるや、破竹の勢いでシェアを拡大。22年にテレビ市場でシェア1位に駆け上がった。以降トップに君臨し続けている。親会社のハイセンスも、REGZA効果でじわじわとシェアを拡大。24年には初めて15%を突破し、昨年は16.6%と3位まで浮上してきた。伸び悩んでいるのがシャープだ。かつては「液晶のシャープ」として圧倒的なトップシェアを誇っていた。しかしパネル工場の巨額投資のツケに苦しみ、16年に台湾・鴻海に買収された。以降、戴正呉新社長の元、徹底的なコスト削減で経営再建は果たしたが、テレビのシェアは下落の一途。22年に先述のTVS REGZAにトップを譲り、25年は19.7%で2位。すぐ背後にはハイセンスが迫っている。
 
躍進の理由を語るTVS REGZAの
石橋泰博 取締役副社長

 TVS REGZAは、本体東芝の苦しい台所事情によって切り離されたが、その後絶好調だ。石橋泰博 取締役副社長は「東芝時代に比べ、身軽になりフットワークも軽くなって、調達力も格段に向上した」と成功の要因を語る。一方シャープは経営破綻寸前の状態まで追い込まれ、身売りを余儀なくされた。経営状態は持ち直したものの、テレビ事業はじりじりと後退。事情はそれぞれ異なるが、外資化した2社のテレビ事業。テレビ市場での存在感という点でも対照的な道を歩んでいる。果たしてソニーのテレビはどちらのパターンになるのか。2014年、ソニーがVAIOを売却した際には、持ち株比率は5%に過ぎなかった。しかし今回は、過半に満たないものの49%と高い。TCLとともに事業を積極的に推進していく、という意思の表れだ。ソニーは今後も画像技術の部分は主導するとしており、この点ではTVS REGZAやシャープと似ている。
 
TCL CSOTの慶州工場

 シャープやTVS REGZAと全く異なるのは、合弁相手がTCL、という点だ。同社はパネルメーカー、TCL CSOTを傘下に擁する。中国・BOEと並び世界で1、2を争う一大パネルメーカーだ。工場敷地内にAGCのガラス工場までも有する、一貫生産プラントが特徴。現在もソニーに液晶パネルを供給している。昨年、TCL CSOTを取材した際、同社の深セン工場 技術企画センターの周明忠 センター長は「ソニーの高速表示液晶パネル搭載テレビでは、およそ4割がTCL CSOT製で占める」と話し、ソニーとの関係の深さを明かしていた。今回の合弁では、ソニーへのパネル供給体制はさらに強固になる。ソニーにとっては、テレビの品質や価格で有利な戦いを展開できる手札が整ってきた。インフレ下でも値上げ率を小さく抑えつつ高品質を保つ、という動きが取れれば、シェアもある程度回復できるだろう。さらに、コスパが高くソニーの技術を取り入れたTCLのテレビという2段構え。この2社でTVS REGZAを追う存在になる可能性は高い。
 
ソニーの高速表示液晶テレビのうち、パネルの4割を供給すると話す、
TCL CSOT 深セン工場 技術企画センターの
周明忠 センター長

 TCLにとってもソニーとの合弁の意味は大きい。テレビの世界シェアでトップのサムスンに続く2位。ポテンシャルは大いにあるが、さらなる飛躍には、もっと別の手が必要だった。TCLのIndustrial Holdings Asia-Pacific Business Group マーケティング本部 張国栄 総経理は「日本のテレビ市場でもTOP3には入りたい。そのためには、20%以上のシェアが必要だ」と話す。シェアをさらに拡大するには、日本のテレビメーカーを買収するのが早道なのでは、というBCNの質問に答え「交渉は進めている」と、相手先はぼかしながらも認めていた。今回の合弁で、TCLのテレビにソニーの技術とブランド力が加われば、世界トップシェアも十分射程圏内に入るだろう。

 東芝、シャープと来て、今回のソニー。日本のテレビ事業で国内資本だけで成り立っているのはパナソニックだけになってしまった。そのパナソニックですら、パネルは海外からの調達。テレビ事業の構造は大きく変化した。一方で販売は踏ん張っている。15年のテレビ販売を1とする指数では、25年は台数で0.92と7.5%減。金額では1.26で、むしろ伸びている。いずれもコロナ禍特需のピークだった20年に比べれば減少した。しかし、テレビ放送がオワコン化する中、ネット動画の視聴にも活躍するハードウェアとしてのテレビ自体は、まだまだ堅調だ。ただ、これからのテレビで重視される要素はこれまでと異なってくる。映像の美しさは必要条件。加えて明暗を分けるのは、ネットコンテンツの検索能力や操作のスピード感といった、テレビ放送プラスアルファの機能の優劣。そこで、テレビの頭脳を担う日本陣営の実力が試される、という構図になってくるだろう。(BCN・道越一郎)
ギャラリーページ