初めての完全ワイヤレスイヤホンに最適? ソニーが提案する三つの選択肢

【完全ワイヤレスイヤホン最前線・9】完全ワイヤレスイヤホンの中で、ソニーの「WF-1000XM5」が注目を集めています。BCN総研のアナリストに聞くと、「ソニーはブランド力を背景に、2万円前後という価格でも高い支持を得ています。アップルと同じく、安心して買えるブランドとしての信頼感が大きいです」とのことです。そのソニーは、どんな姿勢で製品を開発しているのか。どんなラインアップを用意しているのでしょうか。同社の細見拓馬・共創戦略推進部門パーソナルエンタテインメント商品企画部1課リーダーに話を聞きました。

三つのラインアップでニーズをカバー

 現在、ソニーの完全ワイヤレスイヤホンは大きく三つのラインアップに分かれています。

 一つは「1000Xシリーズ」と呼ばれるトップエンドの製品。二つめは従来のイヤホンとはコンセプトが異なる「LinkBudsシリーズ」。そして正式なシリーズ名ではないですが、社内で「Cシリーズ」と呼ばれているものです。

 1000Xシリーズは、もともと耳をすっぽり覆うオーバーイヤーヘッドホンのタイプとして生まれた製品。その考え方を完全ワイヤレスイヤホンにも展開していこうと生まれました。
 
オーバーイヤータイプの
「WH-1000XM6」

 「オーバーイヤーヘッドホンで1000Xが支持されていたポイントは『音質』『ノイズキャンセリング』『装着性』です。完全ワイヤレスイヤホンでもその3点を全て達成するというのが製品開発のミッションでした」と細見リーダー。「最新機種のWF-1000XM5は3万6300円と、性能を優先するのでどうしても価格も高くなります。高音質で音楽に没入したいという人たちに向けた製品です」とのことです。

 一方、LinkBudsは「常に耳につけておきながら、外からの音にもすぐに反応できる」というのが基本的な考え方。いわゆるオープン型のコンセプトを持つイヤホンです。ラインアップとしては、音声コンテンツを聞きながら周囲の音も聞こえるモードを持つ「LinkBuds Fit」(2万9700円)と「LinkBuds S」(2万6400円)、そして耳に入る部分に丸い穴を開け、耳穴を塞がない構造を持つ「LinkBuds Open」(2万9700円)があります。「ベースにあるのは、外界と遮断されずに音楽を楽しむという考え方です」と細見リーダーは説明します。
 
LinkBuds Fit

 そして「手に届きやすい価格帯で、幅広いバリエーションもある」ことを意識して開発したのが、型番がCから始まる製品群。ノイズキャンセリング機能を持つ「WF-C710N」(1万7600円)と「WF-C700N」(1万5400円)、そしてノイズキャンセリング機能はないですが、1万円を切る「WF-C510」(9900円)があります。

 500番台の位置づけについて聞くと、「500番台は初めて完全ワイヤレスイヤホンを買う方がターゲットです」という答えが返ってきました。「同じ価格帯にはさまざまな外国製のイヤホンがありますが、その中でソニーという名前を聞いたことがある人に、ソニーの本質を体感してもらえればと考えています」といいます。

 一方、700番台は「1台目の完全ワイヤレスイヤホンからの買い替えを意識した商品です。ノイズキャンセリング機能のついていないイヤホンを買った人で、満足感がなかった場合にもうちょっといい性能のイヤホンを買ってみようかなと考えている人への提案になっています」とのことです。

完成度の高さが支えるソニーの信頼

 ソニーの製品は、新機種ではなく、発売して時間がたった製品もランキングに入っています。その理由は何でしょうか。

 細見リーダーは「やはり一つのモデルを作るからには、どのモデルも長く使っていただきたいという思いはあります。そこを目指して音質や装着性を何度もテストしたり、前モデルでお客さんから届いた課題なども細かくチェックしたりするなどして完成度の高い商品を極力出そうとしています。それが長く使っていただけることにもつながっているのでしょうし、後継機種が出たときに買い換えていただけることにもつながっているのではないかと思います。1000Xシリーズは現在がM5なのですが、M4からの買い換えの比率が予想以上に高かったのです。シリーズとして満足感を持っていただいているという実感はあります」と説明します。

 続けて細見リーダーはこう語ります。「もう一つ、商品を開発するときに持っているのが『その人にとって初めてのソニー製品になるかもしれない』という気持ちです。ソニーはテレビやカメラ、オーディオ類といったさまざまな製品を手掛けていますが、イヤホンはひとりの人のライフスタイルの中で、最初に接していただけるソニー製品である可能性が高いと考えています。だからこそ、『その人にとって最初のソニー製品としての提案ができる、魅力を伝える』という思いは、常にミッションに入っています」。

 そういう意味では、初めてのソニー製品ではなくても、初めての完全ワイヤレスイヤホンとして選ぶのには最適かもしれません。

 また、WF-C710Nでは興味深い動きがあるそうです。それはカラー。WF-C710Nはホワイトとブラックをはじめとした4色が用意されています。カラーバリエーションがあるモデルでは、だいたいホワイトとブラックが最も売れる傾向にあるところ、C710Nはその2色と同じくらいグラスブルーが売れているというのです。
 
WF-C710Nのカラーバリエーション

 グラスブルーのWF-C710Nは本体と充電ケースがスケルトンになっていて、中の部品が見えるのが特徴。「イヤホンは身につけるものなので、装着したときにかわいいか、カッコいいかは常に意識しています。ちょっと昔のゲームボーイみたいですよね」と細見リーダーは話します。このカラーは幅広い世代で人気とのこと。ぜひ店頭で実物を手に取って見てください。(マイカ・秋葉けんた)


■Profile
秋葉けんた
編集プロダクションのマイカに所属するITライター。雑誌、書籍、新聞、Web記事など、多岐にわたるメディアで執筆活動を行っている。特に家電やガジェット、IT関連の記事に豊富な実績があり、生成AIに関する書籍も多数手がけている。
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