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世界初の専用DNN搭載補聴器「オーティコン モア」が登場、“脳”に働きかけるメカニズムとは?

販売戦略

2021/03/08 18:00

 オーティコン補聴器は2月24日に世界初の専用DNNを搭載する補聴器「オーティコン モア(以下、モア)」を発表。2月26日に全国のオーティコン補聴器取り扱い専門店、眼鏡店、百貨店で販売を開始した。

オーティコンが次世代補聴器の新シリーズとして
「オーティコン モア」を発表

 DNNは「ディープニューラルネットワーク」のことで、脳の神経回路を模した高度な人工知能を指す。同社はこれまでも「ブレインヒアリング」という脳に直接働きかけるアプローチをとっているが、今回のDNNによってさらに脳本来の自然な働きに沿った音を届けることができるようになった。

 オーティコン補聴器は2016年には従来の指向性技術ではなく360°の音を処理する「オーティコン オープン(以下、オープン)」を発売。今回の「モア」はその流れを汲みつつ、飛躍的に進化を遂げている。具体的にはニューラルコード(脳が理解することのできる電気信号)にフォーカスし、音の情景の全体像をより正確に捉えられるようにした。
 
オープンよりさらに音の全体像を伝えられるようになった

 そのコアとなっているのが新たな補聴器専用プラットフォーム「ポラリス」だ。前世代のベロックス S プラットフォームと比較して、DNNの高度なアルゴリズムを実現するための16倍の容量、2倍の計算能力と処理速度を実現。ポラリスには1200万の現実世界の音情報を学習済みのDNNも搭載されている。

 機能で重要となるのが「モアサウンド・インテリジェンス」と「モアサウンド・アンプリファイア」だ。モアサウンド・インテリジェンスは周囲のあらゆる音を1秒間に500 回スキャンして瞬時に分析。常に変化する音の情景にリアルタイムで対応する。モアサウンド・アンプリファイアは取り込んだ音をバランスよく増幅する機能で、こちらもリアルタイムで瞬感に適した調整を行うことが可能だ。
 
「モアサウンド・インテリジェンス」と
「モアサウンド・アンプリファイア」が重要な役割を果たす
 
従来のオープンSとの性能比較

 以前からiOS機器での外部デジタル機器連携に対応していたが、今回から条件を満たしたAndroid端末でも連携できるようになった。カラーは髪色に馴染むヘアカラー7色、ヒアピンク1色の計8色。搭載機能で差別化した「モア 1」「モア 2」「モア 3」の3モデルを揃える。
 
カラーは8色

 発表会では東京大学 薬学部 池谷裕二教授は専門である脳科学の見地からトークセッションに参加。池谷教授は実際にモアを装着して「補聴器を付けるのは初めてだが、霧が晴れたような印象を受けた」とコメント。実際に指向性の補聴器を使用する難聴者は、たとえば車が迫ってくる音がしたときにどの方角から来ているのか判断するのが難しい場合がある。しかし、モアであれば全方位の音を処理するので、どこから車が迫っているのか明確になる。それが“霧が晴れた”という感覚をもたらしてくれるというわけだ。

 また、池谷教授は自身の研究から「人は視覚の生き物であるという勘違いをしている。脳の研究をすればするほど、聞こえの方も劣らず重要ということが分かってくる」と語り、聞こえがいかに人間の健康に密接な関わりをもっているか説明。脳の感情をつかさどる部分に視覚より影響を与えているのは聴覚で、認知症などの原因として難聴があげられることなどを示した。(BCN・大蔵大輔)