1904年にデンマークで創業した世界的な聴覚ヘルスケアグループのデマント。その日本法人であるデマント・ジャパンは、3ブランドを展開する補聴器事業や聴覚検査装置事業などを手掛けている。同社は7月1日に社名を「デマント・ジャパン」に変更。グループの親会社と社名をそろえた。その狙いはどこにあるのか。木下聡社長に真意を聞いた。

7月1日より社名を「デマント・ジャパン」に変更。
木下聡社長に真意を聞いた

 木下社長によると今回の社名変更はグローバルでの流れを受けてのものだという。「本国の社名に対する考え方が変わったということが一番大きい。これまではいわゆるサイレントカンパニーとして、事業会社を全面に押し出すスタンスだった。それが2018年にトップが交代し『デマント自体が出資しているだけでなく、それぞれの事業を演出している立場であることを明確にしたほうがよい』という方針を打ち出した」。
 
社名変更は2018年に本国のCEOに就任した
ソーレン・ニールセン氏の方針のもとで行われた(写真は2020年1月7日の来日時)

 主力である補聴器事業は、今年1月に家庭用の家電などで有名なフィリップスとライセンス契約し、オーティコン、バーナフォンと合わせて3ブランドになった。「複数のブランドをもっていることで市場全体におけるマッピングがしやすい」。

 オーティコンはフルサービスブランドで、幅広いレイヤーのユーザーに最先端の性能を誇る補聴器を提供することを強みとする。バーナフォンは簡単なフィッティングと手頃な価格が魅力で購入しやすいことが特徴だ。新たに加わったフィリップスは認知度の高さが武器になる。具体的には都市部に住み、他の2ブランドのメインターゲットより若いユーザーを狙っていく。
 
現在、デマント・ジャパンは3つの補聴器ブランドを展開している

 明確に棲み分けることでカバーできるターゲットの最大化を図る一方で、共通する領域については一緒に進めていく。「例えば、マッピングに隙間があれば、3ブランドの中でどのように埋めることができるかを考えていける。それは製品軸だけでない。販売店を通してか、医療機関を通してか、補聴器においては販路も重要になる」。

 社名変更によるワンカンパニー体制は補聴器事業内だけでなく、聴覚検査装置事業などにもポジティブな影響を与えるとみている。これまでは販売店で補聴器はオーティコンを扱っていても、聴覚検査装置はデマントグループ(インターアコースティクス、メイコ、メドレックスなど)ではないというケースがあったが、デマント・ジャパンとして存在感を示すことで、相乗効果でシェアを拡大させていく狙いもある。
 
デマントグループでは補聴器事業以外にも多岐にわたってヒアリングに関する事業を展開している

 主力であるオーティコンは今年2月に新しい企業理念を発表。ブランドコンセプトを「People First(ピープル・ファースト)」から「Life-changing technology(ライフチェンジング テクノロジー)」に改めた。木下社長いわく「時代の変化やテクノロジーの変化で従来のコンセプトだけではメッセージを語り切れなくなった」とのことだ。
 
20年ぶりとなる企業理念とブランドコンセプトのアップデートについて語る木下社長

 People Firstの思いは変わらない。ただ、補聴器を使った人が意識しなくても生活をポジティブに変えていけるようにするためのアプローチは大きく進歩した。基礎研究しかり、ハードウェアしかり、ソフトウェアしかり、状況に応じたベストな聞こえ方を追求する。そんなこだわりをもった会社であるということを表現するために、2年をかけて決定したという。
 
オーティコンの新ロゴ。書体や「i」の上のアクセントが変更され、
よりモダンでスマートな印象になった

 今後はワンカンパニー体制のもと、ヘルスケア企業としての総合力を上げていく。「デマントは海外では業界内でトップクラスのシェアを占めているものの、国内シェアはまだグローバルの水準には届いていない。これをキャッチアップするために、製品開発から営業やマーケティングの手法も含めて、新しい模索を行っていく」と木下社長は語った。

 補聴器業界では遠隔から補聴器を調整するリモートケアサービスのように、製品だけでなく補聴器とユーザーの付き合い方に関する新たな挑戦も始まっている。まさに“総合力”が求められる時代に突入したともいえるだろう。これは販売店からエンドユーザーまで幅広くリーチすることができるデマント・ジャパンにとって追い風だ。業界のけん引役としての役割はますます重いものになってきそうだ。(BCN・大蔵大輔)