社会の高齢化や難聴に対する意識の変化で、年々存在感が高まってきている「補聴器」。その最新型はテクノロジーの力で従来のイメージとはまったく異なるものに進化しており、装着することによる恩恵が劇的に向上している。この補聴器のハイテク化に貢献しているのが、デンマークに製品開発の拠点を置くオーティコン補聴器だ。

 同社は今年から長年のブランドコンセプトであった「People First(ピープル・ファースト)」を「Life-changing technology(ライフチェンジング テクノロジー)」に改めた。強みであるテクノロジーを全面に押し出し、難聴による制限のない世界の実現を目指している。さらには新時代の補聴器を広く社会に認知させていく考えだ。具体的な方針について、日本法人トップの木下聡プレジデントに話を聞いた。
 
オーティコン補聴器が長年のスローガンを一新。
新しい時代の補聴器の価値とは?

People Firstは変わらず テクノロジーがもたらす変化にフォーカス

 木下プレジデントによると以前の「People First」はグローバルで2000年代前半に掲げられたものだという。「難聴者=People」と定義し、難聴が社会生活を妨げるものになっている状況を補聴器で手助けしていくという思いを表現した。

 「この20年で世の中は大きく変化しました。社会の高齢化が進み、補聴器の存在意義も変わりつつあります。テクノロジーも同様です。製品だけでなくアプリなど周辺も含めて技術が進歩しています。従来の“難聴者をサポートする”という言葉だけでは足りなくなってきているのです」(木下プレジデント)。
 
以前の「People First」に込めた思いとこの20年の変化を語る木下プレジデント

 People Firstの思いは変わらない。新たなブランドコンセプトは時代に合わせたアップデートだ。木下プレジデントは「Life-changing technology」で「「補聴器ユーザーだけでなく周辺にいる家族や友人の人生もよりよいものにする」「それを実現するユニークな技術をオーティコンが持っている」という二つのメッセージを発信したいと語った。
 
新たなブランドコンセプト「Life-changing technology」には時代性や最新補聴器の変化が反映されている

3月にエッセンシャルクラス新製品発売 先進技術をより身近に

 では、具体的に先進技術を搭載した補聴器とはどのようなものなのか。オーティコン補聴器は「音や言葉は耳ではなく“脳”によって認識している=ブレインヒアリング」という科学的根拠に基づいた開発を行っている。音はただ聞くだけでなく、脳で理解されて初めて意味をもつ。しかし、ただ音を増幅するだけでは脳の負担が増えてしまう。補聴器の装用が疲れやすくなるという事態を引き起こしていた。

 オーティコン補聴器はこうした問題を高性能チップをはじめとした先端技術で解決を試みている。たとえば、3月31日に発売された耳かけ型の「Oticon Ruby(オーティコン ルビー)」は、ベロックスSという音を高速で分析・処理して脳に届ける高速チップを採用。ハウリングを極力抑えて音質と使用感を高める新たなハウリングマネージメントシステム「スーパーシールド」などと合わせて、快適に利用できる画期的な工夫が凝らされている。
 
3月31日に発売された耳かけ型の「Oticon Ruby(オーティコン ルビー)」

 最近人気が高まっている充電式の選択肢も用意するなど、使い勝手にも配慮している。ただ聞こえを改善するだけでないのも先進補聴器の特徴。スマートフォンと接続して音楽や動画を視聴できるなど、医療機器の枠を超えた使い方ができるようになっている。オーティコン補聴器ではTVからの音声を直接補聴器に届けるアクセサリ「TVアダプター」なども展開しており、補聴器のある生活全体の質を高めるべく、取り組んでいる。

 これまでベロックスSを搭載するモデルはプレミアムクラスの補聴器に限定されていたが、ルビーはよりリーズナブルなエッセンシャルクラスに位置付けられている。木下プレジデントは「補聴器にはランクがあり、当然、値段によって機能が制限されるということもでてくる。しかし、ルビーによって幅広いユーザーがこれまでエッセンシャルクラスの価格帯には搭載されていなかった多彩な機能や先進の補聴器技術に触れられるようになるはずだ」と語った。

補聴器利用に関するエッセイ・体験談・川柳を募集中!

 オーティコン補聴器では3月3日の「耳の日」に、補聴器ユーザーや家族、身近な人からの補聴器利用に関するエッセイ・体験談・川柳を募集する「あなたのライフチェンジ!キャンペーン」を開始した。優秀作品はWebマガジン「CHANGE」(全5回発行予定)で掲載される。
 
Webマガジン「CHANGE」。
第1弾には木下プレジデントのインタビューも掲載されている

 すでに第1号がWebサイト上で公開されており、ユーザーの体験談や補聴器の製造に携わるスタッフの生の声が掲載されている。川柳も使用者だからこそ分かる日常生活の気づきを歌にしたものが並ぶ。たとえば「ほちょうきで ぴったり笑いの タイミング」という川柳からは、補聴器の装着によって会話をしっかりと理解でき、健聴者と同じタイミングで笑うことができる喜びを感じ取ることができる。
 
補聴器ユーザーだから分かる味わい深い川柳も掲載されている

 「CHANGE」は12月まで定期的に更新される予定だ。補聴器ユーザーが共感できるだけでなく、健聴者の補聴器に対する理解が深まるコンテンツにもなっているので、ぜひ注目してほしい。自分とは距離のある世界と感じていた難聴や補聴器をもっと身近に感じることができるはずだ。(BCN・大蔵 大輔)