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ソフトバンク、ヤフーの連結子会社化でPayPay軸の金融ビジネス加速

 ソフトバンクが5月7日に発表したヤフーの連結子会社化は、両社が2018年6月に折半出資して設立したスマートフォン(スマホ)決済サービス会社PayPayの経営を今以上にソフトバンクがグリップできるようになることで、意思決定のスピードが加速することを意味する。ソフトバンクは、PayPayを中軸に据えたビジネスモデルの転換で、「端末と通信の完全分離」後をにらんだFinTechなど非通信事業に本格的に進出する。携帯端末販売のモノ売りから、金融サービスなどコト売りへの転換を図る。


 ソフトバンクは、ヤフーが第三者割当増資で発行する約15億1100万の新株式の全てを、6月末に4565億円で追加取得する。これによりソフトバンクのヤフーに対する持株比率は、現在の12.08%から44.64%に高まる。あわせてソフトバンクからヤフーに役員を派遣して、ヤフーの経営支配力を強める。

 記者会見では、ソフトバンクの成長に向けた次の一手として、ヤフーの連結子会社化は目玉施策として紹介された。示されたチャートには、スマホ決済のPayPayを中心に、取り囲むようにソフトバングが注力している非通信事業のコワーキングスペースのweworkやAI配車プラットフォームのDiDi、ホテル事業のOYO Hotels Japan、スマホ証券のOne Tap BUYのほか、ヤフーのオークションサイトであるヤフオク、ジャパンネット銀行などが並ぶ。
 

 そして、これらのサービスがユーザーのスマホ上でシームレスに連携する様子を示した。いずれも、単純に事業同士がつながるだけではあまり意味がなく、ユーザーに新しいサービスを体験してもらうには、決済手段であるPayPayとの連携が欠かせない。

 実際、4月24日にタクシー配車アプリのDiDiの会見では、5月末からPayPayと連携することが発表された。また、6月からはPayPayと「Yahoo!ショッピング」や「ヤフオク!」が連携し、売上金がPayPay残高にチャージできるようになるなど、ソフトバンクとヤフーは密接に連携する。

 実はこうした動きは、NTTドコモの「d払い」や「dポイント」ではすでに始まっていたし、KDDI(au)が4月に「au WALLETポイント」とその一部サービスとして「au PAY」を開始したこととリンクする。

 むしろソフトバンクはスマホ決済の連携で不十分ともいえる中、カギを握るPayPayでソフトバンクとヤフーが半々で支配している状況は、意思決定のスピードで競合他社に負けてしまう。そうした危機感が、ヤフーの連結子会社化の原動力になったことは想像に難くない。

 どの大手キャリアも、携帯電話の端末代と通信料金の完全分離が3月に閣議決定したことを受けて、携帯端末だけに頼ったビジネスモデルが脅かされている。「端末と通信」から「通信と金融」に転換する動きは、キャリアビジネスの生き残りをかけて、今後ますます活発になるだろう。(BCN・細田 立圭志)