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Dynabookが仕掛けるAI時代のPC戦略、価値創出や次世代の顧客獲得で市場を変える

【Windows 10 EOS後の市場をどう動かす?・7】2025年10月14日の「Windows 10 EOS」を境に、国内PC市場は一時的な買い替え需要を迎えた。しかし、真の成長は「AI時代のPC価値創出」。Dynabookは、ローカルAI処理に対応するCopilot+PC「XPシリーズ」と、若年層に向けた新色「セレストブルー」採用の「Gシリーズ」などで製品を強化しているほか、イベントやVTuberとのコラボなどでSNS時代に響くマーケティングを展開。次の市場を切り開こうとしている。杉野文則・国内マーケティング本部本部長に、今後の戦略を聞いた。(BCN・佐相 彰彦)

杉野文則
国内マーケティング本部
本部長

Windows 10 EOS後の市場は?

――Windows 10 EOS後、PC市場の動きをどう見ていますか。

杉野本部長(以下、敬称略) EOSに向けて9月に需要のスパイクがあり、10月14日まで買い替えが盛り上がりました。法人はEOSの1年前からWindows 11移行を進め、一般のお客様は10月前後に集中しました。11月以降は落ち着きを取り戻していますが、過去のEOS時よりもピークは小さめといえます。これは法人の早期移行や機能アップデートの影響で、ピークが分散したためです。

――売れ筋モデル製品は何でしたか。

杉野 スタンダードなPCで16.0インチのモデルが売れました。オールインワンノートPCとして人気を博したと考えています。ただ、今後はCopilot+PCの「XPシリーズ」の販売にも力を注いでいきます。クラウド接続なしでPC本体でAI処理ができることは大きな価値です。AIエージェントによる生成・編集をスムーズに行うことができるため、ビジネスからクリエーティブまで幅広いニーズに応えます。

 新規顧客を獲得するという点では、若年層向けに発売した「Gシリーズ」の販売も強化していきます。Gシリーズは13.3インチで、新色「セレストブルー」を採用しています。当社のお客様は40~50代がメインですが、10~20代の認知を広げるためにデザインを刷新しました。学生などの新しい顧客層に「Dynabook」というブランドを知ってもらい、使ってもらうことを目的に色やデザインで差異化を図りました。
 
「新規顧客の開拓にも力を注ぐ」とアピールする
杉野本部長

SNS・イベント・VTuberコラボで広がるブランド体験

――マーケティング策ではどんな取り組みを?

杉野 若年層を獲得するための策として、東京・原宿の人気カフェとコラボして「dynabook BLUE STUDIO」というイベントを開催しました。このイベントでは、タッチ&トライやAI体験、SNS映えするフォトスポット、オリジナルメニュー、人気YouTuberのマリマリマリーさんとコラボした展示コーナーなどを設置。若年層が集まる場で製品体験を広げました。また、SNSやYouTubeを活用してブランド認知を高める策も強化しています。特にYouTubeでは、こちらもマリマリマリーさんとコラボして、製品の魅力を自然に伝えています。

――XPシリーズでは新製品を発売しましたね。

杉野 はい、12月19日(本日)に発売した「XP9」「XP6」は、AI時代に最適化したCopilot+PCです。「Intel Core Ultra Series 2」を搭載し、動画編集やAI生成を快適にこなせます。加えて、dynabookシリーズとして初めてクアルコムの「Snapdragon X Plus」を搭載した「dynabook XD5」も発売しました。

 今回、発売した製品では放熱技術を駆使したdynabook独自の「エンパワーテクノロジー」を組み合わせることでCPU性能を安定的に維持しています。また、長時間の高負荷処理による電力消費増加や、それに伴うバッテリー劣化の課題にも対応。万が一劣化した場合も、お客様自身で簡単に交換できる「セルフ交換バッテリー」を採用しています。AI機能に加えて、お客様の利便性を高めた製品に仕上げています。

買い替えサイクル短縮へ

――AI時代にPCの価値をどう伝えますか。

杉野 PCで何ができるかを具体的に「見える化」することです。ローカルAIによる生成・編集のスピード、大画面による作業効率、そして長時間駆動を実演やコンテンツで分かりやすく提示することがカギを握ると判断しています。EOSはPCに詳しい層の背中を押して買い替えにつながりましたが、「PCを持っているけれど久しく使っていない」、また「まだPCを買ったことがない」といった顧客層にはベネフィットを明確にすることがカギだと考えています。

――今後の市場展望は?

杉野 AI機能の進化に合わせ、買い替えサイクルの短縮が進むと捉えています。ハードとソフトの両面でAI体験を磨き、若年層から法人まで広いお客様に「次はdynabook」と選んでいただけるよう、継続的に製品とマーケティングの戦略をアップデートしていきます。