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スターターセットで迷わないPC選び、マウスコンピューターが語る「提案型戦略」と「AI PC」の未来

【Windows 10 EOS後の市場をどう動かす?・6】2025年10月14日、「Windows 10」のサポートが終了(EOS)し、国内PC市場は新たな局面を迎えている。買い替え需要やセキュリティー意識の変化が予想される中、マウスコンピューターはどのような戦略で市場を動かそうとしているのか。氏家朋成・取締役営業部門管掌兼第二営業本部本部長に、EOS後の販売戦略、注力分野、「AI PC」の可能性について話を聞いた。(BCN・佐相 彰彦)

氏家朋成
取締役
営業部門管掌兼第二営業本部本部長

EOSの駆け込み需要は過去と異なる

――今回のWindows 10 EOSをどのように見ていますか?

氏家取締役(以下、敬称略) 「Windows 7 EOS」の時と比べると、今回の需要は緩やかでした。駆け込み需要というよりも、3月から4月にかけて家電量販店様やメーカーの情報発信をきっかけに買い替えが始まり、長期的に続く傾向が見られました。クラウドストレージの普及でデータ移行の負担が減ったことも大きいですね。EOS直前には問い合わせが増えましたが、全体としては“慌てない”という印象だったといえます。

――どのような製品が売れたのですか。

氏家 売れ筋としては、一般的な価格帯のスタンダードなノートPCが大きく動きました。また、ノートPCだけでなく、デスクトップPCの需要も高まり、特にコンパクトなミニタワー型が売れ、デスクトップ環境を一新するユーザーのトレンドも見られました。さらに、性能を求めるライトクリエーター向けのノートPCなども動きました。

――EOS後の販売動向に変化はありましたか?

氏家 EOS直後は一時的に売り上げが落ち着きましたが、「ブラックフライデー」など、11月の大型セールで回復しました。セールの長期化もあり、購入タイミングを見極める動きが強まっています。年末商戦を待って購入するお客様にも期待しています。

ユーザーの迷いを解消する「提案型」販売戦略とは?

――PCの購入においてユーザーの迷いを解消するために、どのようなことに取り組んでいますか。

氏家 PC選びに迷う方に対して、単なるスペック比較ではなく「これを選べば間違いない」という提案をすることが重要です。例えば、初心者やゲーミングPCを検討する方には、液晶・キーボード・マウス・ゲームパッドを含めた「スターターセット」を用意し、周辺機器選びの手間をなくしています。当社側で最適な構成を提示する「提案型」の販売を強化しています。

――サポートも重要になってきますね。

氏家 はい。実は、EOS後も「今のPCを使い続けたい」という問い合わせが一定数あるんです。そのため、セキュリティー上の問題からネットワークに接続しない環境での修理対応を行っています。サポート体制を整え、安心して使える環境を提供することがメーカーの責任です。このような取り組みで、次の買い替え時に当社のPCを選んでもらえればと考えています。
 
「安心して使える環境を提供する」と話す氏家取締役

一般PCとゲーミングPCで攻める

――現在、メインターゲットの年齢層は?

氏家 当社のスタンダードなノートPCやデスクトップPC、クリエーター向け製品のメインユーザーは、基本的に40代から50代の層が中心となります。その顧客層を維持しながら、今後は10代から30代の若年層も増やしていきたいと考えています。

――どのように増やしていくのですか。

氏家 一つはゲーミングです。ゲーミング分野では、「G Tune」と「NEXTGEAR」の2ブランドを展開しています。G Tuneブランドで20代から40代の層をカバーし、NEXTGEARで若年層を確保する。PCゲームで楽しむハードルが下がっていることからも、ターゲット層をより細かくセグメント分けして取り組んでいきます。

 また、長期的な顧客の獲得を目指し、「キャンパスPC(学生向けPC)」など、学生層に対するアプローチを継続すべきだと考えています。さらに、動画編集などのクリエーティブ活動を始める層が増えているため、これらの分野での働きかけも強化しています。「一般的なブランド」と「ゲーミングブランド」の2軸による売上増を基本戦略としています。

AI PCは次の成長軸 GPUとNPUで広がる世界

――今後の注力分野は?

氏家 AI PCは次の成長軸です。生成系AIの活用が進む中、GPUを搭載したPCの需要が高まっています。例えば、クリエーター向けブランド「DAIV」ではGPU搭載モデルやNPUを活用したAI処理対応モデルを展開しています。画像生成や動画編集など、スマートフォンでは難しい作業をPCの大画面で効率的に行うことができる。このようなことを訴えていくことで、PCの需要増につなげていきます。

――今後の市場展望をどう見ていますか?

氏家 爆発的な成長は見込みにくいですが、PCの裾野は広がっていると確信しています。ゲーミングやクリエーティブ、AI活用など、今、新しい体験を提案するメーカーが選ばれる時代です。そういった意味でも、提案力を磨き続けていきます。