“風を感じない”エアコン誕生! 東芝「大清快」DXシリーズの新提案

新製品

2019/04/03 19:00

 東芝ライフスタイルは4月3日、東京・渋谷のハウススタジオで同社のエアコン「大清快」DXシリーズの体験会を開催した。DXシリーズは畳数別に5機種(6/8/10/14/18畳)を展開。価格はオープンで、4月下旬に発売する。

エアコンの風が当たる不快感を解消した「大清快」DXシリーズ。
秘密は新開発のルーバーにあり!

 新シリーズの特徴は、ずばり「風を感じない」ということだ。エアコンなのでもちろん風は出る。ただ、夏場にずっと冷風が体に当たることで生まれる「不快感」や「気だるさ」を感じない。同社が“無風感”と表現するこの風は、従来のエアコンの風とはなにが違うのか。

 エアコン事業部 商品企画の下沢一仁氏はこの違いを「風の質の差」と語る。「通常のエアコンは風のかたまりが一直線に送られるので、ダイレクトに冷風を感じる。しかし『大清快』DXシリーズは、かたまりを分解してシャワーのように細かい風を体に届ける。これによって部屋は冷えるが、体は冷えた風を感じにくくなる」。
 
無風感冷房の原理

 では、どのようにして風を細かく分解しているのか。その秘密は新開発した「風カットルーバー」と「温冷熱センサー」にある。風カットルーバーは送風口に取り付けられた新機構で、送風される風を小さい穴に通すことで細かい噴流に変える。流速が早くなった風は周囲の空気を巻き込み、かき混ぜる。この攪拌によって、直線的だった風がゆるやかに広がるようになる。温冷熱センサーはこの風カットルーバーが作動するタイミングを判断する役割を果たす。
 
送風口に取り付けられた新開発の「風カットルーバー」

 発表会では、スモークによって風の攪拌を可視化する実験が行われた。通常の送風だと、先述した通りに風は直線で広がっていったが、風カットルーバーをかませると、送風口のすぐ近くでかき回されている様子が確認できた。実際、通常冷房時と無風感冷房時では体の冷え方を比較すると、1時間の運転で手足の温度に明確に差が出たという。
 
スモークによる実験。
通常の送風だと風は直線で広がっていく
 
風カットルーバーをかませた風は攪拌されて広がっていった

 このほか、DXシリーズは同社として初めて無線LAN機能を標準搭載。専用のスマホアプリ経由で温度やモードのコントロールができる。サポートと直結しているのも特徴で、エラーが出た際にはアプリ経由でQ&Aを確認したり、サポートセンターに連絡することも可能だ。
 
スマホアプリからの操作に対応

 大清快の代名詞である空気清浄機能ももちろん健在。花粉やPM2.5を集じんし、熱交換器に吸着した汚れ物質は結露水で屋外に除去するので、清潔な状態が常に保たれる。また、結露水による除去だけでなく、掃除機で内部に溜まったホコリを吸引できる「楽ダストボックス」を搭載することで、メンテナンスを手軽にした。
 
専用アタッチメントを装着した掃除機でホコリを手軽に除去できる
「楽ダストボックス」を搭載

荷台数は過去最高 市場環境と開発環境に追い風

 2016年に世界のエアコン販売数量でシェア2位の中国・美的集団グループの傘下に入った東芝ライフスタイル。これにより赤字だった同社のエアコン事業は18年に黒字に転換。直近3年の年間成長率は20%をキープしている。鈴木新吾事業部長は「付加価値の高い中級クラス以上のラインアップを重点的に強化していく」と今後の方針を示した。
 
今後の販売戦略を語るエアコン事業 鈴木新吾事業部長

 新体制になり、開発環境も変わった。「DXシリーズを含めて新製品を開発するために、細かな市場リサーチが行えるようになった。資金面でも東芝時代には難しかった開発も可能になった」(鈴木部長)。また、美的集団のスケールメリットやテクノロジーの恩恵は受けつつも、東芝として半世紀にわたり培ってきた品質の高さや安心・安全の配慮は守っていることも強調する。

 国内の市場環境も明るい。エアコンは2018年の年間出荷台数で965万台を記録し、3年連続で過去最高を更新した。性能や機能もIoTやAI、センサーなどの最先端技術の搭載で、大きく進化を遂げている真っ最中。内部と市場の追い風を受けて、「大清快」は東芝ショックで低下したシェアの巻き返しを図る。(BCN・大蔵 大輔)