いまや生活家電でもAIが搭載される時代になった。デジタル家電であれば、ユーザーの先回りをした提案や性能の最適化などがAIの果たす役割になっているが、たとえばエアコンの場合はどのようなメリットがあるのだろうか。富士通ゼネラルは、1月17日、昨年12月4日に発表した「nocria(ノクリア)」Xシリーズ新製品の内覧会を開催。同社ならではのAI機能を説明した。

富士通ゼネラルが開催した「nocria(ノクリア)」Xシリーズ新製品の内覧会

「エッジ」と「クラウド」 二つのアプローチで早くて賢いAIを実現

 新しい「nocria(ノクリア)」XシリーズのAIの特徴は、エアコン本体がリアルタイムに使用環境の監視や収集を行う「エッジ」と、富士通独自のAIであるZinraiにデータを吸い上げて情報の蓄積・学習を行う「クラウド」を融合したアプローチにある。
 
「nocria(ノクリア)」Xシリーズ新製品

 現在の市場では、エッジもしくはクラウドのどちらかを採用しているメーカーが多い。その中で富士通ゼネラルが双方を採用するのは、エッジによる「レスポンスの早さ」とクラウドによる「学習能力の高さ」を両立できるからだ。担当者いわく「1週間程度の使用でも効果を実感できる」という。

 具体的なシーンで説明してみよう。たとえば、室温がなかなかベストな状態にならずにエアコンの温度を上げたり下げたり微調整を繰り返した経験をもつ人は多いだろう。これがnocria XシリーズのAIを介せば、ユーザーの寒いと感じる温度、暑いと感じる温度を学習し、人の手で細かく調整するということがなくなってくる。
 
エッジ&クラウドによるAIの仕組み

 AIと聞くと使いこなすのが難しそうという印象を受けるが、実はその逆。“使いこなさなくても、勝手に働いてくれる”ことこそ、AIを搭載する価値なのだ。

使い勝手や清掃機能も新基準

 AI以外にも先進技術による進化はある。分かりやすいのが、円柱形のリモコンだ。この特徴的なデザインはスマートスピーカーとの親和性を重視してのもの。現在、一般家庭にスマートスピーカーを置いている割合は高くないが、近い将来に広がるであろうライフスタイルを先読みしての提案だ。

 縦に長いリモコンに慣れていると、最初は戸惑うかもしれないが、使い勝手を試してみるとこれが想像以上に便利。手がぬれていてリモコンに触れないといったシーンや就寝中に暗い中でリモコンを操作しなくてはいけないといったシーンでも、手をかざすだけで画面の点灯、起動/停止が可能。また、通信はBluetooth方式を採用しているので、リモコンの設置位置や向いている方向の制約が少ない。見た目のインパクト以上に実用性を考えて設計されているのだ。
 
Bluetooth方式を採用した円柱型のリモコン

 最近は、自動で内部を清掃する機能が搭載されているエアコンが増えているが、新しいnocria Xシリーズは、カビ菌や細菌の清浄・予防・抑制だけでなく、もう一歩踏み込んだ“除去”にまで対応。これを可能にするのは、熱交換器を55℃で10分間加熱する「熱交換器加熱除菌」だ。他社モデルでも熱による同様のアプローチはみられるが、同社は“短時間で55℃まで上昇される、かつその状態をキープする”ことで“除去”といえるレベルまで性能を高めたそうだ。
 
55℃で10分間加熱する「熱交換器加熱除菌」でカビ菌や細菌の除去を実現

 富士通ゼネラルは昨年7月から2014年以降に発売した400機種のエアコンで「Google Home」に対応したが、新製品ももちろんIoT家電として音声操作に対応する。今回の展示ではGoogle Homeを搭載したソニーの液晶テレビ「ブラビア」による操作を実演していた。
 
Google Homeをビルトインしたソニーの液晶テレビ「ブラビア」による操作を実演

 エアコンは長らく省エネ性能が大きな購入基準となってきた。機能の進化は限定的で、大きくフォーカスするポイントも少なかった。しかし、AIやIoTの実用化で新たな可能性が開かれた。現在、実現しているのはまだその一部。周辺の環境が整えられることで、エアコンはよりダイナミックに進化を遂げるはずだ。富士通ゼネラルがZinraiによって独自性を模索しているように、各社のエアコンがそれぞれの持ち味を武器に多様な方向性を目指していくことを期待したい。(BCN・大蔵 大輔)