CP+2026でポラロイドが復活の狼煙、サムスンも別角度でカムバック、ほか気になる出展は【道越一郎のカットエッジ】
カメラ・映像機器の祭典「CP+2026」が2月25~28日の4日間、パシフィコ横浜で開催された。来場者数は速報値で5万8294人と、昨年より約4%増えた。コロナ禍後、リアル開催を再開した2023年以降では最高だった。一方、過去最高だった、2019年の6万9683人に比べると16%減。コロナ禍からの回復はまだ途上だ。スマートフォン(スマホ)に市場を奪われつつも、カメラの人気はまだまだ持続している、とも言えるだろう。
人だかりが絶えなかった富士フイルム
「instax mini Evo Cinema」ブース
今年は目玉が少なかったものの、いくつか気になる製品が出展されていた。まずは富士フイルムの「instax mini Evo Cinema」。常に人だかりが絶えなかった。特筆すべきは「ジダイヤル」。1930年代から2020年代までの、1世紀にわたる映像表現の変遷を10年刻みの実写で体験できる、という機能だ。要するに年代ごとの「昔風の動画」が撮れるカメラだ。最大15秒までの縦位置動画、というフォーマットそのものは今風。まさに温故知新を地で行くようなカメラだ。
キヤノンのコンセプトモデル
「アナログコンセプトカメラ」
レトロと言えばキヤノンのコンセプトモデル「アナログコンセプトカメラ」も大人気だった。ウエストレベルと呼ばれる、ファインダーを上からのぞき込むスタイルで撮影するカメラの試作品。オールドファンには、往年のハッセルブラッド風とでも言えばわかりやすいだろう。試作機はごつごつしたアルミ製で、手に取るとずっしりとした重量感がある。レンズから入った光をミラーで反射させ、一旦スクリーンに投影。そこに映った画像を見て画角を決めピントを合わせる。撮影時には、スクリーンに映った像をさらにミラーで反射させて、ようやく画像センサーに到達し、画像データを記録するというスタイル。一旦スクリーンに写した像をセンサーで記録するため、極めてアナログチックな写真が撮れる。デザインモックは「Retro style」「Simple box」の2種類が展示されていた。発売時期は未定だというが、同社はCP+で発表した試作機を市場投入するのは珍しくない。そう遠くない将来、発売されそうだ。
ピンホールカメラの進化形、
ズノンの「ZNONZ II」をニコンZ6に装着
写真の写りを最も左右するのはレンズだ。しかし、レンズなしで写真や動画が撮れるユニットが人気を呼んでいた。ズノンが出品した「ZNONZ」だ。地味ながらも人の絶えない人気ブースになっていた。ガラスレンズを使わずに撮影するものの代表格として「ピンホールレンズ」がある。つまり、穴が開いただけの板だ。ZNONZはこれに改良を加えたもの。単なる穴あきの板ではなく、さまざまな形状で穴の空いたプレートに光を透過させることで、独特の表現を実現。滲みによる空気感も伝わるレトロ調の「エモい」写真が手軽に撮れる。焦点距離は20mm相当の広角。マウントはライカMマウントだが、アダプターを介してほぼすべてのミラーレスカメラに使用できる。
見事復活したポラロイド。
フラグシップモデル「Polaroid I-2」
レトロと言えば、ポラロイドも目立っていた。CP+初の出展だ。1937年創業の同社は、1970年代以降インスタントフィルムとカメラで世界を席巻。スタジオでのフィルム撮影では「ハッセルでポラを切る」、つまりハッセルブラッドのカメラにポラロイドのフィルムを入れて撮影し、ライティングなどを確認する、という定番のルーチンにも組み込まれていた。その後、2度の連邦破産法第11条(チャプター11)申請を経て、08年に一旦はインスタントフィルムの生産終了を宣言した。しかし、Impossible Project(インポッシブル・プロジェクト)の名のもとに、有志がオランダの古い工場を買い取り、細々とフィルム生産を継続。その後、インポッシブル・プロジェクトの筆頭株主だったポーランドの実業家が、ポラロイドをブランド資産ごと買収。2020年、本家のポラロイドブランドが復活した。ポラロイドの特徴はいったん内部でネガフィルムを生成したのち通常の写真を生成する。クリアな画像が特徴だ。冒頭の富士フイルムが擁する「チェキ」のライバルとして、同社は今年から日本市場の拡大に力を入れるとしている。ブースでは、プロ仕様でマニュアル操作が可能なカメラ「Polaroid I-2」や超小型の「Polaroid Go」などが展示されていた。
最新レンズ、ニコンの
「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S II」。
1kgを切るまでの軽量化を実現(写真中央)
最新のレンズも出品されていた。代表例はニコンの「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S II」だ。いわゆる広角から望遠までを3本のズームでカバーする代表的な「大三元レンズ」の一角。三脚座や保護カバーを外せば約998gと1kgを切る軽さが最大の特徴。画質を向上させると同時にレンズ構成を見直すことで実現。さらに全長も旧モデルより12mm短くなり、取り回しも楽になった。インターナルズーム機構の採用で、重心移動が極めて少なく、ジンバルを使った動画撮影にも威力を発揮する。また、三脚座はニコン初のアルカスイスタイプのクイックシューに対応。よりスピーディーに雲台への着脱ができるようになった。ただ税込みのニコンダイレクトショップ価格は44万3300円。購入するには、かなり勇気が必要だ。
ソニーのスマホサイズ3Dディスプレイ。
しっかりと立体画像を表現できていた
ソニーでは、空間コンテンツ制作支援を行うソリューション「XYN」(ジン)の展示が面白かった。裸眼で3D映像を再現する「空間再現ディスプレー」と撮影システムを組み合わせたものだ。主に業務用として、15.6インチや27インチといったサイズのディスプレーが商品化されている。今回はスマホほどのサイズの画面でしっかりと3D画像を再現する試作機を展示していた。空間再現ディスプレーの特徴は、付属のカメラで見ている人の目の位置を検知し、最適な3D効果を発揮するよう設計されている点。とてもリアルな裸眼3Dを実現できていた。今後の製品化が楽しみだ。
そのほか、今回はサムスン日本研究所が初出展。かつてはカメラも手掛けていたサムスン。CP+には何度も出展していた。だが現在は撤退。カメラで得たノウハウはスマホ事業に集約し、今やカメラ市場の巨大なライバルだ。今回は研究所として別の形での再登場だ。出展ブースはこじんまりとしており、内容は、プロ仕様で劣化の少ない動画フォーマット「APV(Advanced Professional Video)」を紹介するもの。同社のスマホ「Galaxy S26 Ultra」に初搭載された。高品質を維持しつつファイルサイズが2割程度小さくなる。ロイヤリティフリー、つまり無償で利用できオープン規格なのが最大の特徴だ。
サムスンが普及を狙う動画フォーマット「APV」を初搭載した
Galaxy S26 Ultraを使った動画撮影セット
富士フイルムやキヤノンを筆頭に、レトロ志向で後ろ向きな展示が目立った今回のCP+。一方で、今AIが爆発的に拡大しつつある。しかし写真や動画の撮影は、AIだけでは不可能だ。ドローンやロボットだけでは撮影行為をすべて代替できるとは思えない。写真や動画の撮影は、当面人間の存在が欠かせないだろう。人間が撮影することを前提にしながら、カメラにAIを全面的に取り入れることで、全く別のブレイクスルーが訪れそうな予感がある。次回CP+2027ではぜひその片鱗を見てみたい。なお、CP+2026 オンラインイベントのアーカイブは3月31日まで視聴できる。(BCN・道越一郎)
「instax mini Evo Cinema」ブース
今年は目玉が少なかったものの、いくつか気になる製品が出展されていた。まずは富士フイルムの「instax mini Evo Cinema」。常に人だかりが絶えなかった。特筆すべきは「ジダイヤル」。1930年代から2020年代までの、1世紀にわたる映像表現の変遷を10年刻みの実写で体験できる、という機能だ。要するに年代ごとの「昔風の動画」が撮れるカメラだ。最大15秒までの縦位置動画、というフォーマットそのものは今風。まさに温故知新を地で行くようなカメラだ。
「アナログコンセプトカメラ」
レトロと言えばキヤノンのコンセプトモデル「アナログコンセプトカメラ」も大人気だった。ウエストレベルと呼ばれる、ファインダーを上からのぞき込むスタイルで撮影するカメラの試作品。オールドファンには、往年のハッセルブラッド風とでも言えばわかりやすいだろう。試作機はごつごつしたアルミ製で、手に取るとずっしりとした重量感がある。レンズから入った光をミラーで反射させ、一旦スクリーンに投影。そこに映った画像を見て画角を決めピントを合わせる。撮影時には、スクリーンに映った像をさらにミラーで反射させて、ようやく画像センサーに到達し、画像データを記録するというスタイル。一旦スクリーンに写した像をセンサーで記録するため、極めてアナログチックな写真が撮れる。デザインモックは「Retro style」「Simple box」の2種類が展示されていた。発売時期は未定だというが、同社はCP+で発表した試作機を市場投入するのは珍しくない。そう遠くない将来、発売されそうだ。
ズノンの「ZNONZ II」をニコンZ6に装着
写真の写りを最も左右するのはレンズだ。しかし、レンズなしで写真や動画が撮れるユニットが人気を呼んでいた。ズノンが出品した「ZNONZ」だ。地味ながらも人の絶えない人気ブースになっていた。ガラスレンズを使わずに撮影するものの代表格として「ピンホールレンズ」がある。つまり、穴が開いただけの板だ。ZNONZはこれに改良を加えたもの。単なる穴あきの板ではなく、さまざまな形状で穴の空いたプレートに光を透過させることで、独特の表現を実現。滲みによる空気感も伝わるレトロ調の「エモい」写真が手軽に撮れる。焦点距離は20mm相当の広角。マウントはライカMマウントだが、アダプターを介してほぼすべてのミラーレスカメラに使用できる。
フラグシップモデル「Polaroid I-2」
レトロと言えば、ポラロイドも目立っていた。CP+初の出展だ。1937年創業の同社は、1970年代以降インスタントフィルムとカメラで世界を席巻。スタジオでのフィルム撮影では「ハッセルでポラを切る」、つまりハッセルブラッドのカメラにポラロイドのフィルムを入れて撮影し、ライティングなどを確認する、という定番のルーチンにも組み込まれていた。その後、2度の連邦破産法第11条(チャプター11)申請を経て、08年に一旦はインスタントフィルムの生産終了を宣言した。しかし、Impossible Project(インポッシブル・プロジェクト)の名のもとに、有志がオランダの古い工場を買い取り、細々とフィルム生産を継続。その後、インポッシブル・プロジェクトの筆頭株主だったポーランドの実業家が、ポラロイドをブランド資産ごと買収。2020年、本家のポラロイドブランドが復活した。ポラロイドの特徴はいったん内部でネガフィルムを生成したのち通常の写真を生成する。クリアな画像が特徴だ。冒頭の富士フイルムが擁する「チェキ」のライバルとして、同社は今年から日本市場の拡大に力を入れるとしている。ブースでは、プロ仕様でマニュアル操作が可能なカメラ「Polaroid I-2」や超小型の「Polaroid Go」などが展示されていた。
「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S II」。
1kgを切るまでの軽量化を実現(写真中央)
最新のレンズも出品されていた。代表例はニコンの「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S II」だ。いわゆる広角から望遠までを3本のズームでカバーする代表的な「大三元レンズ」の一角。三脚座や保護カバーを外せば約998gと1kgを切る軽さが最大の特徴。画質を向上させると同時にレンズ構成を見直すことで実現。さらに全長も旧モデルより12mm短くなり、取り回しも楽になった。インターナルズーム機構の採用で、重心移動が極めて少なく、ジンバルを使った動画撮影にも威力を発揮する。また、三脚座はニコン初のアルカスイスタイプのクイックシューに対応。よりスピーディーに雲台への着脱ができるようになった。ただ税込みのニコンダイレクトショップ価格は44万3300円。購入するには、かなり勇気が必要だ。
しっかりと立体画像を表現できていた
ソニーでは、空間コンテンツ制作支援を行うソリューション「XYN」(ジン)の展示が面白かった。裸眼で3D映像を再現する「空間再現ディスプレー」と撮影システムを組み合わせたものだ。主に業務用として、15.6インチや27インチといったサイズのディスプレーが商品化されている。今回はスマホほどのサイズの画面でしっかりと3D画像を再現する試作機を展示していた。空間再現ディスプレーの特徴は、付属のカメラで見ている人の目の位置を検知し、最適な3D効果を発揮するよう設計されている点。とてもリアルな裸眼3Dを実現できていた。今後の製品化が楽しみだ。
そのほか、今回はサムスン日本研究所が初出展。かつてはカメラも手掛けていたサムスン。CP+には何度も出展していた。だが現在は撤退。カメラで得たノウハウはスマホ事業に集約し、今やカメラ市場の巨大なライバルだ。今回は研究所として別の形での再登場だ。出展ブースはこじんまりとしており、内容は、プロ仕様で劣化の少ない動画フォーマット「APV(Advanced Professional Video)」を紹介するもの。同社のスマホ「Galaxy S26 Ultra」に初搭載された。高品質を維持しつつファイルサイズが2割程度小さくなる。ロイヤリティフリー、つまり無償で利用できオープン規格なのが最大の特徴だ。
Galaxy S26 Ultraを使った動画撮影セット
富士フイルムやキヤノンを筆頭に、レトロ志向で後ろ向きな展示が目立った今回のCP+。一方で、今AIが爆発的に拡大しつつある。しかし写真や動画の撮影は、AIだけでは不可能だ。ドローンやロボットだけでは撮影行為をすべて代替できるとは思えない。写真や動画の撮影は、当面人間の存在が欠かせないだろう。人間が撮影することを前提にしながら、カメラにAIを全面的に取り入れることで、全く別のブレイクスルーが訪れそうな予感がある。次回CP+2027ではぜひその片鱗を見てみたい。なお、CP+2026 オンラインイベントのアーカイブは3月31日まで視聴できる。(BCN・道越一郎)





