アクションカメラの代名詞的存在だったGoProのシェアが急落している。同社が最後にトップシェアを獲得したのはこの1月。39.6%で一瞬首位を奪還した。ライバル2社の平均単価が上昇するのをしり目に、年始特価で単価を1割下げ台数を稼いだ。しかし、その後シェアは下落の一途。この11月では9.6%と、ついに2桁を割り込んだ。毎年発売しているフラグシップの新モデルが登場しなかったことも響いた。一方、激しくトップを争っているのはDJIとInsta360だ。11月現在でDJIが45.2%でトップ。Insta360も43.3%と僅差で追いかける。2月以降この2社でトップシェアを取り合うデッドヒートが続いている。全国2300の家電量販店やオンラインショップの実売を集計するBCNランキングで明らかになった。
シェアが1割を切ったGoPro。
現在ではDJIとInsta360の2強だ
2023年ごろまでは、アクションカメラと言えばGoProだった。例えば23年の5月。販売台数シェアは75.5%を占めダントツ。その牙城が大きく崩れ始めたのが昨年9月だ。トップの座をDJIに譲った。それどころかInsta360にも抜かれ、GoProは一気に3位に転落した。GoProが大きく躓いたのは16年。新たに参入したドローン事業に失敗。わずか2年足らずで撤退を余儀なくされた。結局、研究開発投資が分散し回収もままならなかった。この影響で、22年発売のGoPro HERO11 Blackあたりから、進化のスピードが急激に鈍化。後進2社に逆転を許す結果を招いた。DJIもInsta360も中国メーカー。アクションカメラでは新興勢力だ。
DJIはドローンの世界トップメーカー。産業用、民生用で圧倒的なシェアを誇る。ドローン用搭載カメラの技術を応用して開発したアクションカメラ「Osmo Action」シリーズを展開する。最近では、ジンバル付きで大人気のビデオカメラ「Osmo Pocket 3」で一気に知名度を上げた。一方、Insta360は、その名の通り360度カメラでデビュー。広角撮影の技術を応用して超小型のカメラから、アクションカメラ市場に参入した。現在は「Ace Pro」シリーズが売れている。両社とも、アクションカメラの初号機を発売したのが19年だ。GoProが初めて動画の本格アクションカメラをリリースしたのが10年。GoProから10年近く遅れてのスタートだった。にもかかわらず、このところ性能の向上が著しく、シェアを急拡大させている。
アクションカメラ市場自体は絶好調だ
アクションカメラ市場全体は伸びている。販売前年比はここ数年、毎月のように2桁増で推移。足元の11月でも、台数160.7%、金額173.0%と絶好調だ。ビデオカメラに占める販売台数構成比も、この3年で急速に拡大。22年11月時点では24.1%に過ぎなかった。しかしこの7月では56.6%と過半を占めるまでに増大している。11月でも48.2%と、市場のほぼ半数を占めるペースを維持している。ちなみに、従来からある「横型」のビデオカメラは、22年11月には販売台数の65.9%を占めていた。しかしこの11月では13.4%まで縮小している。
ビデオカメラ市場の地殻変動の要因はいくつか考えられる。横型ビデオカメラの大きな用途は「運動会」だった。わが子の雄姿を動画で残そうと、両親が家電量販店に駆け込んだ結果、毎年9月に最大の需要期を迎えていた。ところが、運動会そのものの位置づけが大きく変化。昔のような一大イベントでもなくなってきた。さらに、スマートフォン(スマホ)の動画機能が充実してきたことを受け、手軽に撮影できる動画需要の大部分はスマホに吸収された。一方で、本格的な動画撮影需要はかなりの部分、レンズ交換型のデジタルカメラに移行。横型のビデオカメラ市場は、活躍の場を奪われる形で縮小していった。
アクションカメラ各社の最新フラグシップモデル。
左から「DJI Osmo Action 6」「Insta360 Ace Pro 2」「GoPro HERO13 Black」
そこで浮上してきたのがアクションカメラだ。スマホを使うのが躊躇されるような過酷な状況でも撮影可能。天候を選ばず、ラフに扱っても壊れず、それでいて小さく軽い。スマホとは全く異なる特徴を備えることで共存し、市場の拡大に成功した。この活況をいつまで継続できるかは、上位2社がいつまで進化のスピードを維持できるかにかかっている。(BCN・道越一郎)
現在ではDJIとInsta360の2強だ
2023年ごろまでは、アクションカメラと言えばGoProだった。例えば23年の5月。販売台数シェアは75.5%を占めダントツ。その牙城が大きく崩れ始めたのが昨年9月だ。トップの座をDJIに譲った。それどころかInsta360にも抜かれ、GoProは一気に3位に転落した。GoProが大きく躓いたのは16年。新たに参入したドローン事業に失敗。わずか2年足らずで撤退を余儀なくされた。結局、研究開発投資が分散し回収もままならなかった。この影響で、22年発売のGoPro HERO11 Blackあたりから、進化のスピードが急激に鈍化。後進2社に逆転を許す結果を招いた。DJIもInsta360も中国メーカー。アクションカメラでは新興勢力だ。
DJIはドローンの世界トップメーカー。産業用、民生用で圧倒的なシェアを誇る。ドローン用搭載カメラの技術を応用して開発したアクションカメラ「Osmo Action」シリーズを展開する。最近では、ジンバル付きで大人気のビデオカメラ「Osmo Pocket 3」で一気に知名度を上げた。一方、Insta360は、その名の通り360度カメラでデビュー。広角撮影の技術を応用して超小型のカメラから、アクションカメラ市場に参入した。現在は「Ace Pro」シリーズが売れている。両社とも、アクションカメラの初号機を発売したのが19年だ。GoProが初めて動画の本格アクションカメラをリリースしたのが10年。GoProから10年近く遅れてのスタートだった。にもかかわらず、このところ性能の向上が著しく、シェアを急拡大させている。
アクションカメラ市場全体は伸びている。販売前年比はここ数年、毎月のように2桁増で推移。足元の11月でも、台数160.7%、金額173.0%と絶好調だ。ビデオカメラに占める販売台数構成比も、この3年で急速に拡大。22年11月時点では24.1%に過ぎなかった。しかしこの7月では56.6%と過半を占めるまでに増大している。11月でも48.2%と、市場のほぼ半数を占めるペースを維持している。ちなみに、従来からある「横型」のビデオカメラは、22年11月には販売台数の65.9%を占めていた。しかしこの11月では13.4%まで縮小している。
ビデオカメラ市場の地殻変動の要因はいくつか考えられる。横型ビデオカメラの大きな用途は「運動会」だった。わが子の雄姿を動画で残そうと、両親が家電量販店に駆け込んだ結果、毎年9月に最大の需要期を迎えていた。ところが、運動会そのものの位置づけが大きく変化。昔のような一大イベントでもなくなってきた。さらに、スマートフォン(スマホ)の動画機能が充実してきたことを受け、手軽に撮影できる動画需要の大部分はスマホに吸収された。一方で、本格的な動画撮影需要はかなりの部分、レンズ交換型のデジタルカメラに移行。横型のビデオカメラ市場は、活躍の場を奪われる形で縮小していった。
左から「DJI Osmo Action 6」「Insta360 Ace Pro 2」「GoPro HERO13 Black」
そこで浮上してきたのがアクションカメラだ。スマホを使うのが躊躇されるような過酷な状況でも撮影可能。天候を選ばず、ラフに扱っても壊れず、それでいて小さく軽い。スマホとは全く異なる特徴を備えることで共存し、市場の拡大に成功した。この活況をいつまで継続できるかは、上位2社がいつまで進化のスピードを維持できるかにかかっている。(BCN・道越一郎)





