中国通販、驚愕の不良対応「グッと押せ」──人気の動画用100WLED照明で

レビュー

2023/08/16 18:30

 また不良品に当たってしまった。あちこちで評判のいいLED照明、COLBORの「CL100X」だ。自宅から行うオンラインセミナー用に、安定して点灯する明るい照明が必要になり、調達することにした。本体重量800gと、軽く小さな筐体ながら110Wの出力があり、色温度を2700~6500Kで調整可能。スマートフォンからBluetoothでコントロールできるうえ、USB-PD給電というのも魅力だった。複数台つないで同期させて使うことも可能な、とても便利な製品だ。5月下旬に中国のAliexpressに発注。約1万7000円と、日本で買うより1万円ほど安かった。安すぎることもあり、偽物かもしれないとやや心配しつつ待つこと12日。6月初旬に到着した。すぐにテストし、きちんと点灯することが確認できた。この時点では特段問題ないように思えた。

今回問題が起きたLED照明、COLBORの「CL100X」。
本来はとてもいい製品なのだが……

 7月、とあるセミナーで初めて実戦投入することになった。午後からの本番を控え、午前中にセッティングとテストを行う。小ぶりのライトスタンドに取り付け、天井バウンスで使用することにした。とりあえず100%の光量で点灯。作業しながら、カメラやスイッチャーの調整を行っていた。すると突然、LED照明が消えた。接触が悪かったか、たまたま消えたかと思い、何度か繰り返してみたが、何分か経過するとやはり消えてしまう。何かの安全装置が働いているような雰囲気だ。これにはがっかりした。到着直後は、確かに長時間の点灯テストはしていない。まさか一定時間で消えてしまう不具合があるとは、思いもよらなかった。

 COLBORは、中国・広東省広州にある広州智英科技有限公司の照明ブランド。マイクなどの音響機器を展開する「SYNCO」も有し、品質には定評がある。すでにSYNCOのマイクはいくつも愛用しているので、安心感があった。そこでこの不良だ。なぜ消えるのかわからないまま、別の照明機材をやりくりして、何とかセミナーは乗り切った。終了後、もう一度落ち着いて不良の原因を探った。点灯した状態で耳を近づけてみると全くの無音。どうやらファンが回っていないようだ。LEDとはいえ、100Wともなると盛大に発熱する。冷却は必須だ。ファンが回らないために、一定時間点灯後、加熱で安全装置が働き、消えてしまっていたのだ。
 
細い六角棒レンチのビットを使用。
細めの六角レンチセットなら合うかもしれない

 もしかすると、単に筐体内部でファンのケーブルが外れているだけかもしれない。思い切ってフタを開けて分解してみることにした。通常なら分解すると保証が得られなくなる。できればやらないほうがいいのだが、中国まで製品を送り返す手間と時間、送料を考えれば、自分で直せるなら直したい。そう思ったからだ。フタは小さ目の六角穴付ボルト4本で止まっていた。幸い、手元に合うビットがあったので、ドライバーでフタを外した。見た感じ、ファンの電源コネクタは、しっかりとついているようだ。電源を入れると、ファンが一瞬少し動く。ファンに電流は流れている。しかし回らない。ファンの電源コネクタを抜き差ししてもダメ、筐体のファクトリーリセットをしてもダメ。お手上げだ。
 
四隅の六角穴付ボルトを外すだけで
フタが開く単純な構造で助かった

 Aliexpressでは商品到着後15日以内の初期不良であれば、Aliexpressが返品や交換のサポートをしてくれる。しかし、今回はもう到着から2カ月近くも経っている。販売店との直接交渉が必要だ。ダメモトで購入した販売店に直接メッセージを送った。「5月に購入したLED照明だが、ファンが回らずにすぐ消灯してしまう。今日、不良に気がついた。良品と交換してほしい」と。2日ほど待つと「不良を示す動画を送れ」と返信がきた。いつものパターンだ。中国通販で不良品の返品や交換を求めると、必ずといっていいほど動画をよこせ、となる。まあ、対応するつもりはあるらしい。電源を入れても点灯しても、全く音がせずファンが回っていない状態を示すビデオを撮影して送った。ちなみにやり取りはお互い、かなり怪しい英語。それでもなんとかなるもんだ。

 数日すると「メーカーに連絡し、対応策を送ってもらうのでしばらく待て」ときた。「メーカーの指示通りやってもファンが回らなければ無料で交換する」という。もしかすると自分で直せるかもしれない。とはいえ、ユーザーがやれることは限られている。せいぜいファクトリーリセットを試せということぐらいだろう。それはもう試して、直らないことを確認済みだ。結局、返品・交換になるんだろう。面倒くささから気が重くなった。

 2日ほど待つと、販売店から動画が送られてきた。早速再生すると、何の説明も躊躇もなく、いきなりドライバーでフタを開けるところからスタートだ。六角穴付ボルトの話も一切ない。終始無言。手早く4本のボルトを外し、ふたを開け、奥を示す。ファンが見える。電源を入れても回らない。おもむろにドライバーを筐体内部に突っ込む。ファンの中央部にドライバーの先端を当てて「グッ」と押した。ファンは回り始めた。なるほど。ずれてしまったファンの軸を力ずくで直せということだ。動画の通りにやってみる。やっぱりファンの軸がずれているようだ。ドライバーで「グッ」と押した。見事ファンが回り始めた。これで連続点灯しても照明が消えることはなくなった。
 
販売店からの動画通り、フタを開けてファンの中心部にドライバーの先端を当てて
「グッ」と押すと、見事にファンが回るようになって、修理完了

 中国通販あるあるだが、製品が送られてきた際の梱包は、ほぼクッションのない極めていい加減なものだった。照明本体はほんの少しクッションが効く布製のケース入り。それが紙箱に入っているというパッケージだ。輸送時の梱包はその紙箱の上にビニールをぐるぐると巻いただけの簡易なモノ。当然箱はボコボコだし、ちょっと落としたりすれば、本体に変な力が加わるのも無理はない。輸送中に落とすか、何かで筐体に力が加わり、ファンの軸がずれてしまったのだろう。送られてきた動画の様子からして、同様の不良が多いように思えた。掲示板の書き込みにも「ファンが回らない」という不良報告をちらほら見かけた。

 必要な照明が使えなかったことで、すでにもう1個同じLED照明を発注していた。後日届き、こちらは無事ファンも回り、消えることなく普通に使えている。もともと2灯欲しかったので、ちょうどよかった。それにしても、ユーザーに筐体を開けさせドライバーで押させるという不具合対策。日本では考えられない。しかし、国を超えて動画を気軽にやり取りできる時代だからこそできる対応ともいえる。中国らしいとても合理的なやり方だ。面倒な返品・交換の手間なく無事ファンが回り、正常に照明が使えるようになって、私にとってはベストの不具合対応だった。まあ、最初から不具合なく動くのが一番いいのだが……。(BCN・道越一郎)