ドイツ・ベルリンで8月31日から9月5日まで開催される世界最大級のコンシューマ・エレクトロニクスの見本市「IFA 2018」。開催に先立って4月、今年の見どころや傾向を披露するイベント「IFA GPC(Global Press Conference)2018」がイタリア・ローマで開催され、世界60か国の主要メディアから300名以上が集まった。IFA 2018の概要説明に先立ち、主要メーカーが今年の見どころを紹介するPower Briefingsが開催された。そのいくつかを紹介する。

「お一人様家電」のラインアップ強化を図るWMF

 まず目を引いたのが、ドイツのWMF(ヴェーエムエフ)のお一人様や二人暮らし向けの家電製品ラインアップ「KITCHEN minis」だ。1853年に創業したドイツのキッチン用品メーカーの老舗、WMF。圧力鍋やコーヒーメーカーを最初につくったメーカーとしても有名だ。日本でも全国の百貨店を中心に86店舗を展開している。同社は世界的傾向として核家族化が進み、2030年までにドイツやイギリス、カナダなどでは2人以下の世帯数が全体の8割を占め、中国でも7割を占めるまでに拡大するとしている。
 
「KITCHEN minis」シリーズの概要を説明する、
WMF 国際戦略・製品開発担当のMartin Ludwing シニアバイスプレジデント

 そこで、14年から小型の調理製品シリーズの展開を開始した。それが「KITCHEN minis」シリーズ。17年で4世代目に突入している。1カップ用のコーヒーメーカーや0.8リットルの電気ポット、食パン1枚分のトースターや0.8Lのコンパクトミキサーなど、ジャストサイズの調理製品群で構成されている。2人以下の世帯にマッチした分量を小型の機械でコンパクトにし、ちょうどいい大きさとすることから省エネにも配慮している。ステンレスの都会的なボディも特徴のひとつだ。IFA 2018では同社の新しい小型家電の展開を確かめることができるだろう。
 
「KITCHEN minis」シリーズの「1-slice toaster」。
食パン1枚だけをトーストする。シリーズ共通のステンレスボディは高級感が漂う

1.4兆円の開発費が支えるAI技術で撮影技術の革新をめざすファーウェイ

 スマートフォン(スマホ)で今伸び盛りなのがファーウェイ。同社からはPeter Gauden グローバル・シニア・プロダクト・マーケティング・マネジャーが登壇。3月27日にフランス・パリで発表したばかりの「P20 Pro」の強みを中心に紹介した。冒頭、Gauden マネジャーは、同社が17年に費やした研究開発費が104億ユーロ(およそ1.4兆円)だったことを明かした。世界メーカーの中では、フォルクスワーゲン、グーグルのアルファベット、マイクロソフト、サムスン、インテルに次ぐ6番目の規模に相当すると話す。「P20 Pro」に搭載したAIを駆使した新たな撮影技術は、スマホ差異化の要。こうした研究開発投資があってこそ実現できる。
 
P20 Proの詳細を説明するファーウェイの
Peter Gauden グローバル・シニア・プロダクト・マーケティング・マネジャー

 一般のデジカメを、プロ機の画質からはほど遠く使い勝手も悪いと酷評する一方、同社はプロ並みの画質を誰でも簡単に撮れるようにすることを目指している。そのキーになるのがAIだ。17年1月に発表した同社のオリジナルNPU(Neural Network Processing Unit)は「P20 Pro」にも搭載され、AIを駆使した画像認識を活用し、状況にマッチした撮影設定を自動的に行うことができる。このNPUによって犬、猫、食べ物、ポートレート、ステージ、花など19のシーンを自動認識できるようになった。
 
ライカレンズ搭載でトリプルカメラを実現した「P20 Pro」。
日本でもドコモが販売する

 しかもP20 Proには、初のトリプルカメラを搭載。4000万画素のRGBセンサ、2000万画素モノクロセンサ、光学3倍望遠の800万画素センサと、それぞれのカメラに違う機能を割り振ることによって、最終的には専用機を凌駕する写真の撮影を可能にしている。

スマートウォッチに集約されつつあるウェアラブル製品

 続いて登壇したFitbitのHelen Reidy ヨーロッパ、中東及びアフリカプロダクトマーケティング長は、スマートウォッチが、ウェルネスとヘルスの両面から生活をサポートする機器になってきたと話す。4月に欧米で発売した新製品「Fitbit Versa」を紹介しながら、広がってきたスマートウォッチの用途について説明した。
 
FitbitのHelen Reidy ヨーロッパ、中東及びアフリカプロダクトマーケティング長

 「Fitbit Versa」は1.34インチの正方形ディスプレイのスマートウォッチ。同社の「Ionic」の後継だ。丸みを帯びた形状としてデザインを洗練させたSpO2(動脈血酸素飽和度)の計測にも対応するため、脈拍だけでなく、血液での酸素供給が正常に行われているかどうかを計測することができる。スマホとの連携で、ウェルネスとヘルスの両面からサポートする。まさに腕に巻き付ける、かかりつけ医といった感じだ。
 
ウェルネスとヘルスの両面から生活をサポートする機器に進化した「Fitbit Versa」。
日本市場にも間もなく登場する見込みだ

 ウェルネス面では、体重や睡眠、ストレスの管理を把握しつつ、ヘルス面では糖尿病、心臓病、睡眠時無呼吸症候群、心の健康などの予防や対策に役立つ機器になりつつある。つまり、しっかりと体の状況を察知し記録しながら、運動へのモチベーションを高め、データの集積によって、さまざまなアドバイスを提供できる。このほか、NFC搭載の特別エディションではFitbit Payにも対応する。同社がみるように、活動量計のトレンドはスマートウォッチに収れんしていくことになりそうだ。

シャープが欧州・ロシアでも8Kモニタ発売

 また、昨年のIFAではシャープがブースを復活。戴社長のスピーチ「SHARP IS BACK」が話題を呼んだ。同社は今年も出展するが、今回の目玉は8Kだ。プレゼンテーションに登壇したシャープ ヨーロッパのSascha Lange マーケティング・セールス・バイスプレジデントは4月末に欧州・ロシアで8K映像モニタを発売すると発表した。価格は1万1199ユーロ(約146万円)。70インチの「LV-70X500E」は、チューナー非搭載のモニタで台湾で発売した製品と同タイプ。これで、中国、日本、台湾に続き欧州・ロシアでも8Kパネル搭載製品を販売することになった。
 
欧州・ヨーロッパでの8Kモニタ発売を発表する、
シャープ ヨーロッパのSascha Lange マーケティング・セールス・バイスプレジデント

 日本ではこの12月に4K/8Kの本放送が開始されるものの、欧州ではまだ具体的なスケジュールは決まっていない。しかし、デジタル化が一巡した欧州市場でも伸びているのは55インチ以上の大型モデル。55インチ未満の製品は軒並み2ケタ割れの水準だという。
 
シャープが欧州・ロシアで販売する8Kモニタ「LV-70X500E」。価格は1万1199ユーロ(約146万円)

 頼みの綱は大型テレビだが、そこで日本メーカーの高精細モニタのアドバンテージが生きる。2Kなどの映像をアップスケーリングしてなめらかな映像にする技術だ。もちろん新製品でも2Kや4Kコンテンツを8Kでなめらかに映し出すことができる。高価なこともあり、8Kモニタはまだまだ主流にはならないが、欧州でも高精細テレビの足がかりになるだろう。(BCN・道越一郎)