「総額表示」で変わる家電量販店のチラシ

経営戦略

2021/02/20 18:00

 【家電コンサルのお得な話・36】 4月1日から税込表示の総額表示が導入される。価格表示の例については数種類があり、多くのサイトで解説しているため、ここでは家電量販店のチラシを例に、実際の運営について考えてみたい。


 日本では消費者に向けて商売する場合、税込表示が義務付けられている。いわゆる総額表示義務だが、消費税率のアップに伴い、消費意欲の減退を防ぐため「期間限定で税別表示を認める」という特例措置が取られている。

 この特例措置は2021年3月31日で終了し、4月1日からは税込表示に戻さなければならない。違反の罰則はなく、違反しても消費税法違反で処罰されることはないが、消費者の企業イメージや信頼に影響を与えるのは間違いない。

 図は、家電量販店のチラシ価格表示を例にしたものだが、現状は、企業によって税別価格と税込価格の目立たせ方が異なっているのがわかる。

 A社は税別価格を大きく、税込価格を小さく表示しているのに対し、B社は真逆で税込価格を大きく、税別価格を小さくしている。いずれもフォントの大きい価格を「キリのいい数字」にしてアピールしているが、企業によって対象が異なる価格訴求になっている。

 国税庁の総額表示の表示例からすればAとBの両社ともすでに総額表示義務の基準は満たしており、4月1日以降もこのスタイルのチラシで問題は生じない。しかし、税別価格をキリのいい数字で表示しているA社は、今のままでの税込価格では端数価格の心理効果が崩れるという不都合が生じる。

 これに加えて、税込価格が明瞭に表示されることが求められているため、B社のように税込価格の方を大きく表示するといった変更が考えられる。そのため、4月1日までに売価変更を戦略的に行う可能性が非常に高くなると筆者は予想している。

 具体的には、税込価格表示の大きさが同じなら、競合との価格比較が容易になるため、テレビや冷蔵庫、エアコンなどの大物商品はさらにタイムリーな売価変更が行われるだろう。消費者にとっては、より安く購入できるメリットが得られる機会が増えるはずだ。

 一方で、ディスクやインクカートリッジなどの消耗品は税込価格をキリのいい数字にそろえるため、切り捨てか切り上げかで企業によって通常売価に差が生じることが考えられる。消耗品を継続的に同一店舗で購入している人は、「価格の高い商品を買い続ける」という不都合も生じるかもしれない。

 こうしたことから、利用する店舗を決めていた人も総額表示を機に他店との比較を行い、利用店を見直すことで、お得な買い物をしていただければと思う。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)

■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。