【なぐもんGO・57】「今どこ?」。待ち合わせ時間になっても来ない友人にスマートフォンからメッセージを送る。今では当たり前の光景だが、携帯電話もポケベルもなかった時代は、ひたすら待つしかなかった。ただ、いくら待っても来なくてしびれを切らしたときに、最終手段として使われていたのが、黒板とチョークがセットになった“伝言板”だ。今ではお役御免のはずが、今年の4月、東日本旅客鉄道(JR東日本)の東神奈川駅に復活。予想以上に大きな反響があったようだ。

JR東神奈川駅に期間限定で復活した伝言板

 駅の伝言板は、20年ほど前までは多くの駅で日常的に使われていたという。筆者の親によると、待ち合わせ時間を過ぎても来ない友人に向けて「先に行く」と書き残すことも多々あったそうだ。逆に、自分が遅れた場合は伝言板を確認して、友人の行き先を確認することもあったのだろう。
 
 
期間中はさまざまな書き込みがあった

“伝言板”復活のわけ

 今ならば携帯電話で簡単に代用できる。携帯電話の普及とともに伝言板は役目を終えて姿を消していったのは想像に難くない。しかし、なぜ今になって蘇ったのか。

 JR東日本 横浜支社 東神奈川駅の荒井愛一郎助役は、「企画が立ち上がったのは4月下旬ごろ。コロナ禍で閉塞感が漂っていた頃でしょう。そんななか、若手が少しでも駅の利用者を元気づけたいと立ち上がった。悩んでいたところ、先輩が駅ならではの要素として伝言板はどうかとアドバイス。閉塞感を発散する場として設置に至った」と経緯を説明する。
 
JR東日本 横浜支社 東神奈川駅の荒井愛一郎助役

 もちろん、同駅でも伝言板はすでに撤去していたため、新たにこしらえる必要があった。幸い、今はテープ黒板などが簡単に手に入るので「経費はそれほどかからず設置できた」という。設置したのは、改札内のポスターなどが貼ってある壁面。「コロナ禍でポスター類の掲示がほとんどなかったことも伝言板の設置を後押しした」(荒井助役)。

 設置していた期間は4月30日~6月22日まで。わずか2カ月ほどだったが、「Twitterのトレンドにあがるなど、驚くほどの反響があった」という。伝言板への書き込みは1日当たり約20件。約2カ月間の合計でおよそ1000件に上る。「がんばろう」「コロナウイルスがなくなって」といった励ましのメッセージをはじめ、新型コロナウイルスに関するものが多く、なかには「XYZ」と『シティーハンター』を意識した書き込みも散見されたそうだ。

 伝言板を設置したことへの感謝の言葉もあり、荒井助役は「やってよかった。こちらが元気づけられた」と振り返る。コロナ禍の鬱屈とした雰囲気のなか、伝言板を通じて利用者や駅係員の心が一体になるような、温かい企画だったようだ。スマホで打った活字より、手書きの方が文字の向こう側にいる人を感じやすかったのかもしれない。
 
7月中旬には七夕をイメージした装飾になっていた

 今は書き込みはできず、じきにポスターの掲示場所に戻る。再び復活するかどうかは「わからない」そうだが、今だからこそわかる伝言板の良さが垣間見えた。(BCN・南雲 亮平)