新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言による外出自粛で、4、5月の売上高が大きく落ち込んだ家電量販が多かった中、ケーズホールディングス(ケーズHD)が絶好調だ。各社は合理的な算定が困難として2021年3月期の業績予想を未定としていたが、同じく未定だったケーズHDは6月16日、早々に「解除」して業績予想を公表。売上高が7400億円(前期比104.5%)、営業利益が358億円(108.5%)、当期純利益が253億円(117.5%)という増収増益の強気予想を打ち出した。なぜ、ケーズデンキだけが好調なのか。

2021年3月期の業績予想を増収増益とするケーズホールディングス

新型コロナの影響が限定的だったケーズデンキ

 「休業店舗が少なかったこともあり、ケーズデンキは業界水準を上回る好調ぶりだ」。6月4日に5月度の月次速報値が発表されると、競合の家電量販本部の担当者は、その内容の良さに敵ながら健闘を讃えた。

 ケーズデンキの4月の全体売上高は98.5%と前年割れだったが、それでも他社よりも落ち込みは小さかった。例えば、ビックカメラは、単体で約4割減の62.1%、コジマと合算したグループ全体でも76.9%だった。エディオンも、4月は88.3%だった。

 4月7日の緊急事態宣言や10日の東京都の休業要請、26日の全国での緊急事態宣言などが立て続けに実施され、休業要請の対象外だったものの、家電量販店にも休業や営業時間を短縮する動きが一斉に広がった。

 ケーズデンキも時短営業を余儀なくされたが、5月7日時点で休業店舗がわずか1店舗だけで大きな影響を受けなかった。それどころか、5月25日に緊急事態宣言が解除されるまでの間、ケーズデンキの5月速報値の売上高は前年同月比121.9%と大幅に上回っていたのだ。
 
2020年5月速報値の売上高は前年同月比121.9%
(出典:ケーズHD、以下同じ)


 前年5月のゴールデンウイークが改元に伴う10連休のビックイベントだったのに対し、今年はステイホームの外出自粛が呼びかけられていたにもかかわらず、売上高が昨年より2割も上振れしたのだ。競合のエディオンも、5月に107.9%と前年を上回ったが、ケーズの伸びが際立つ。

 ケーズの商品内訳をみるとテレビ(154.8%)、PC・情報機器(182.0%)、冷蔵庫(125.0%)、洗濯機(121.2%)、クリーナー(133.0%)、調理家電(136.7%)、理美容・健康器具(120.9%)、エアコン(107.2%)と全てのジャンルで前年を大きく上回った。通常は、白物家電が良ければデジタル機器がへこんだり、その逆というパターンが多い。全ての商品で押しなべて好調というのは、増税前の駆け込みのときぐらいしかないだろう。まさに異例といえる。

外出自粛で「逆ドーナツ化」現象

 ケーズデンキに取材すると、「ノートPCは、1月のWindows 7の延長サポート終了後に相当厳しくなると予測していたが、テレワーク需要で景色が一変した。お子様のリモート授業もあり、今では家族1台から、1人1台になるぐらいの勢いで売れている」と語り、テレワーク特需によるノートPCの好調ぶりを示した。しかし、ノートPCや周辺機器の特需は各社が共通して享受しているところ。全商品の好調さの説明にはならない。

 本部担当者は続けて「郊外の昼間人口が増えて、昼の売り上げが増えている」と語る。つまり、テレワークで首都圏近郊のベッドタウンに暮らす多くの人々が自宅で過ごす“逆ドーナツ化現象”により、郊外の昼の人口が増えて、それが売上高の純増につながっているのだ。

 その上、もともと郊外型の家電量販店が、新型コロナによる「新しい生活様式」と親和性が高いという要因もある。地方なら一人1台のマイカーも珍しくないし、広い駐車場に車を止めて、商品を購入して、そのまま車に積んで帰ることもできる。人との接触を極力避けた買い物ができるというわけだ。

 「ケーズデンキは店内も広いし、通路も広い」と語るように、もともと店内で3密になりにくい構造だったのも追い風になっている。もちろん、ケーズデンキも他の家電量販店同様に、店内の感染予防対策は徹底している。

 さらに、「家の中を快適な空間にしたいという目的で家電製品を購入する方が増えている」と、郊外の巣ごもり需要もしっかりと取り込んでいることが、白物家電の好調さにつながっている。
 

 このようにケーズHDは、新型コロナのマイナスの影響は限定的だとする。増収増益予想の内訳は、上期の全店売上高を101.0%と予測。エアコンが昨年7月に長梅雨の影響で苦戦したため、今夏は気温が平年並みか高くなると見て売れると予想。ただ、昨年上期は消費増税の駆け込みがあり、それをクリアするためのハードルが高い。

 下期の全店売上高は108.4%と予想。前期が台風や暖冬の天候不順があったため、今期下期の季節商品のハードルが低いとみる。前年下期は消費増税の反動減があったため、今年下期のハードルは低いと予想する。

 売上総利益率(粗利率)は、28.1%(前期28.2%)と前年並みの予想。競合店舗の買い回りが控えられることから競争環境が穏やかになったり、チラシを自粛したりすることが利益面のプラス要因となる。一方でテレビやPCの構成比が上がると、粗利率の押し下げ要因になるという。

 販売管理費は、前年比103.4%と予想。チラシの自粛で広告宣伝費は減るが、固定費は営業時間が短縮されても大幅な減少が見込めず、また人件費はベアで増加になると予想する。

 地方では、新規感染者数ゼロが続いている県も多い。新しい生活様式が定着して、郊外の昼間人口が以前よりも増すとケーズデンキのような郊外型量販店のチャンスが増える。新型コロナ以前は都市部への出店ラッシュが目立っていたが、アンダーコロナの経済環境の変化で再び郊外への出店戦略の可能性が膨らむかもしれない。(BCN・細田 立圭志)