スマートフォン決済サービス「au PAY」が悪手を連発している。2月10日に開始した「誰でも!毎週10億円!もらえるキャンペーン」で、2度の後出しのルール変更を行い、ユーザーからブーイングが起こっている。

au PAYは2月20日にキャンペーンの1日あたりの還元ポイントを引き下げた。
開催中にルールを変更するのは今回が2回目だ

「100億円還元祭」に匹敵も 複雑なルールに戸惑いの声

 「誰でも!毎週10億円!もらえるキャンペーン」は、au PAYの全ユーザー、全加盟店を対象にした20%還元キャンペーン。上限金額が最大7万円相当と高額であることもあり、かつてPayPayが実施した「100億円還元祭」に匹敵するお得さと話題を集めた。

 しかし、当初から太っ腹な還元金額とは別にルールの複雑さも注目されていた。それがキャンペーン期間と上限金額の区分だ。本キャンペーンは、ステージ1(2月10日~3月1日)で3万円相当、ステージ2(3月2~22日)で3万円相当、ステージ3(3月23~29日)で1万円相当と上限金額が期間で分かれている。要するに最大7万円相当の還元を得るためには、それぞれの期間でau PAYによる決済をする必要があるわけだ。

 これだけでも理解するのに少し時間がかかるのだが「毎週10億円が還元総額の上限で、運営が翌日中に還元総額に達すると判断した場合は翌日にキャンペーン終了。翌週の月曜日に改めて10億円が還元総額として設定される」というルールがさらにユーザーを混乱させた。記者は状況を整理するために図を作成したほどだ。
 
記者が作成したキャンペーン期間と還元上限の関係図

 現在のスマホ決済への関心度合や過去の100億円還元祭の状況からして「高額還元に釣られて一部の転売ヤーによる買い占めが発生する」「毎週火曜日にキャンペーンが終了する」ということは容易に予測できた。これは記者でなくても、多少スマホ決済のキャンペーンを利用したことがあるユーザーであれば思いつきそうな、極めて実現性の高いシナリオだ。

 案の定、キャンペーン1週目は初日に「翌日には還元総額に到達する見込み」と通知があり、キャンペーンは翌日の火曜日に終了した。そして、これまた予想通りに一部のユーザーによる転売を目的とした高額商品の買い占めが発生していた。記者はこの時点で「多くのユーザーが利用できない本キャンペーンの効果は少し疑問」という旨で記事(https://www.bcnretail.com/market/detail/20200214_158480.html)を執筆した。
 
記者がキャンペーン1週目が終了したあとに執筆した記事。
このときはキャンペーン効果に少し疑問を抱く程度だったが…

甘すぎるキャンペーン設計 “後出し変更”は既定事項?

 最初のルール変更が告知されたのは、キャンペーン2週目が開始する2日前だ。変更されたのは「10億円の還元総額に達した場合の終了日」。当初のルールであれば必ず「火曜日」までキャンペーンが継続する仕組みだったが、これが「月曜日」になった。

 運営側が2日間の開催だと10億円の還元総額を軽々と超えてしまうと判断しての決定だろうが、ユーザーからすればキャンペーン期間の短縮はデメリットでしかない。2月10日~3月29日の1か月以上にわたるキャンペーンと周知しておきながら、実質的には各週の月曜日(計7日)しか使えないことが濃厚なわけだから、反感の声が出るのは当然だろう。また、月曜日が定休日の加盟店であればキャンペーンの恩恵を受けることはできなくなる。

 そして、2回目のルール変更が発表されたのが、2月20日。その内容は「1日あたりの還元ポイントが最大6000円相当」に変更されるというものだった。本来であれば1日あたりの還元上限は設定されておらず、ステージの上限(3万円もしくは1万円)=1日あたりの上限だった。つまり、当初の設定から1日あたりの上限は5分の1に引き下げられたことになる。
 
相次いで発表されたルール変更。
通知はなくアプリを開いたときにポップアップが表示されるだけというのも不親切だ

 これが転売ヤーをはじめとする買い占めに対する対策であり、かつキャンペーンの利用ユーザーを拡大するための変更であることは理解できる。しかし、au PAYがこの2度のルール変更を「ユーザーファースト」と考えているなら、それは勘違いといわざるをえない。

 一部の転売行為を是とする気はまったくない。しかし、「キャンペーン期間の短縮」と「上限金額の引き下げ」は明らかに健全なユーザーにもマイナスの影響を与えている。実際に身近にも翌週にiPhoneを購入するために15万円をチャージしたが、今回の変更で還元金額が3万円から6000円になってしまったというユーザーがいた。損したわけではないが「約束が違う」と憤る気持ちは当然だ。

 そもそもユーザーに不利益か否かに関わらず、キャンペーンの根幹にかかわるルールを後出しで変更するのは、それこそルール違反といえる行為だろう。先述したように、今回の2回のルール変更が発生しうる状況は十分に予測された。なぜ運営サイドは甘く見積もったのか。最初から「途中でルールを変えればいい」というスタンスだったのではないかと疑ってしまう。70億円という大金を賭して開催した今回のキャンペーンは「効果は少し疑問」どころか「逆効果」にもなりかねない事態に陥っている。(BCN・大蔵大輔)