KDDI(au)がスマートフォン(スマホ)決済サービス「au PAY」で付与していた「au WALLETポイント」を、ローソンなどで使われているロイヤリティ マーケティング(LM)が運営する共通ポイントサービス「Ponta」に統一する。ローソンにとってはau PAY色が、au PAYにとってはローソン色が濃くなるという「リスク」が生じる。それでも、なお両社が資本提携までして関係を深めるのは、次世代型コンビニサービスを見据えたユーザーとの深いコミュニケーションを通じた新しい消費体験の提供を実現するためだ。

au PAYに制限するものではない?

 2020年5月以降、決済手段であるau PAYと共通ポイントのPontaは融合する。au PAYのポイント保有会員2800万人と2200万のモバイル口座数が、Pontaの会員9200万人と提携する22万店舗、126社184ブランドと共通のIDでつながる。

 両社の提携により、1億人超の会員基盤と2000億円超の年間ポイント付与額を発行するプラットフォームが誕生する。そしてここに、リアル店舗であるローソンの国内約1万4600店舗と年間来店客数41億人とのタッチポイントが得られる。

 「今回の提携は、ローソンの決済手段を制限するものでは一切ない。決済手段では、常にファーストチャレンジャーとして走ってきた自負がある」。ローソンの竹増貞信社長は、スマホ決済手段がau PAYに限定されるものではないことを強調し、NTTドコモのd払いやソフトバンクとヤフーのPayPay、メルカリのメルペイ、Origami Payなどさまざまなスマホ決済とフラットでオープンな関係を今後も続けていくことを語った。
 
ローソンの竹増貞信社長

 しかし、両社のポイント統一による会員IDの連携で、ローソンでau PAYで支払う場合と、そのほかのスマホ決済で支払う場合のユーザーメリットがまったく同じになるということはあり得ないだろう。au PAYのユーザーに付加価値のあるサービスが提供できなければ、そもそも提携する意味などないからだ。

 同じことはKDDIにも言える。au PAYを使う際に、セブン-イレブンやファミリーマートより、ローソンで使った方がお得なサービスが受けられるようになるだろう。また、自社のサービス内でいえば、au WALLETポイントがPontaに統一されることで、Ponta以外の共通ポイントサービスを使っているユーザーがauから離れるリスクがないとはいえない。

 実際に今回、KDDIはローソンの2.1%の株式を市場買付で取得するほか、Pontaを運営するLMの株式の20%を、LMの親会社である三菱商事から取得する。資本業務提携までして踏み込んだのに、他のサービスとまったく差異化されることなく同じになると考えるのは、かえって不自然だ。

KDDIにとってPontaユーザーの口座獲得が魅力

 では、こうしたリスクをとってまで提携する狙いは何か。KDDIの高橋誠社長は、「単なる決済手段として使うだけでなく、au PAYが持つユーザーの(銀行)口座にポイントを流し込めることが重要」と語り、au PAYユーザーやPontaユーザーが金融サービスでつながる重要性を繰り返し強調した。
 
KDDIの高橋誠社長

 既にau PAYは19年8月29日から、スマホのauユーザー以外でも使えるように解禁している。つまり、スマホでauと契約していないPontaユーザーもau PAYで決済することができ、本人認証をすることで銀行口座と紐づけることが可能になる。そこにPontaポイントを流し込むという一連の導線が出来上がるわけだ。

 スマホ決済事業者各社は、残高をチャージするために個人ユーザーの銀行口座と紐づけるためにあの手、この手のキャンペーンを打って勧誘するが、ユーザーはそう簡単に紐づけてくれない。KDDIにとっては、Pontaの会員9200万人の口座が魅力的なわけで、その口座とau PAYがつながれば、金融サービスと通信、ネットとリアルの新しい買物体験が提供できるようになる。
 

 会見で示された図は、リアルの消費情報である本人認証情報(口座情報)とロケーション関連情報(位置情報)、ネット消費情報(購買履歴)が、リアルやネット店舗の在庫情報などとつながるものだった。そこから、顧客の状態や行動、感動といったデータをAI技術を使って分析し、個人の嗜好にあったサービスを提供する。

 より具体的に次世代型コンビニのサービスに落とし込むとどうなるか。ユーザーの活動量など、バイタルデータと購買や食事データ、個人別の趣味嗜好などのレコメンドデータからAI分析して、例えば、タンパク質が不足がちだから豆乳がおススメで表示されたり、1万歩歩いたから栄養ドリンクの購入クーポンをスマホに配布したりして、ローソンでの購入を促せるようになるという。

 ローソンの竹増社長は、本人認証をクリアすることで、夜間の無人店舗で本人確認が自動化できたり、子供が発熱したときに病院が空いていなくても薬が提供できたりするなど、ヘルスケアやドラッグ分野にも広がる可能性を示した。
 

 また、消費者だけなく、コンビニで働く店員の生産性の向上や作業の自動化などでも効果が期待できるという。au PAYなど、モバイル決済端末のプラットフォーム、ロボティクスや5Gテクノロジーによる作業の自動化を駆使することで、労働人口の減少による人手不足問題の解消にもつなげる。
 

 今回のKDDIとローソンの提携は、通信とリアル店舗というお互いに持っていないものを補完しあうためだけでなく、顧客と企業の間で深いコミュニケーションを築くには、薄く幅広くビジネス展開できなくなるリスクをとってでも、ポイント統一による連携など、より踏み込んだ企業連携が必要なことを示している。(BCN・細田 立圭志)