伝説のバンド、Queenを描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットしている。映画も面白かったが、久々に彼らの楽曲をじっくり聴きたくなり、ベスト盤のCDを購入した。再生して驚いたのは、ヒットした75年頃の記憶と比べ、音の中身がずいぶん違ったことだ。新しい音の発見がたくさんあった。当時は子どもだったこともあり、ろくにレコードも買うことができず、ラジオで流れた曲をラジカセで録音して繰り返し聴いていた。歴然とした音質の差があるからだろう。

3万円足らずのヘッドホンで聴くボヘミアン・ラプソディも、新しい音の発見がたくさんあった

 ラジカセより多少進歩したとはいえ、今でも音楽を聴く環境は簡単なものだ。CDをリッピングしてMP3ファイルに変換し、スマホで聴いているだけ。強いて言うなら、アメリカのマスター&ダイナミック社のヘッドホン、MH30の効用が多少はあるのかもしれない。一昨年購入したヘッドホンだ。迫力ある音が再生できて気に入っている。価格は2万5000円ほど。自分の中では結構高価な買い物だった。もちろん、世の中にはもっともっと高価なヘッドホンが数えきれないほど存在していることは知っている。時々試聴させてもらう機会もあるが、さすがの音の良さに圧倒されてしまう。凝り性の自分にとっては、とても危険な領域。素晴らしい音はいったん忘れ、聴かなかったことにしている。
 

 しかし実際、どれくらい高いヘッドホンが売れているのかは気になるところ。家電量販店・オンラインショップの実売データを集計した「BCNランキング」で調べてみた。便宜上、年間平均単価が20万円以上(税抜き、以下同)のヘッドホンやイヤホンを「超高級ヘッドホン・イヤホン」と定義して、実売動向を集計してみた。

 この価格帯の製品で2018年、販売金額の合計が最も大きかったのはオーディオテクニカの「ATH-L5000」だった。平均単価はなんと45万1000円。まさに超高級ヘッドホンだ。金額シェアは25.0%。世界で500台限定販売の製品だが、発売は12月14日。たった半月ほどの間で、年間の最大金額シェアを獲得した。これだけ高価でも短期間でしっかり売れるということも驚きだ。

 英国コノリー社製の革張りで本体ハウジングは木製。のびやかな低域と自然な高域と響きが特徴だという。実は2位もオーディオテクニカの定番「ATH-ADX5000」だった。こちらは23万1000円。それでも高価な製品だ。
 
税抜き45万円ながら、超高級ヘッドホンの中で2018年もっとも販売金額シェアが高かった
オーディオテクニカのATH-L5000

 昨今、アナログレコードを見直す動きもあるが、それなりの音質で再生するには、再生する環境にそれなりの「投資」が不可欠だ。誰もが手軽にいい音を聞けるようになったのはやはり1982年にCDが登場して以降だろう。1992年MDの登場、2001年iPodの登場を経て、ハイレゾ音源も普及しつつある今、一定レベルでのいい音は誰でも普通に楽しめるようになった。しかしそこからさらにワンランク上を目指すとなると、ここでも投資は必要だ。音楽を楽しむうえで効果がもっとも高いのは音の出口、つまりスピーカーやヘッドホンだと言われている。さらにいい音を求める動きが、こうした製品の単価を押し上げる動きはまだまだ続くだろう。(BCN・道越一郎)