秋の新米シーズンは、毎年、炊飯器売り場が賑わう時期。主力は熱源にIHを使用したIH炊飯ジャーで、各社とも、炊き方に加え、「釜」の素材や構造、厚さなどにこだわり、ここ数年で、昔ながらの「かまど」に近づけようと、羽根のある内釜も増えた。例えば、タイガー魔法瓶は、内釜に土鍋を選び、底部分に陶器を入れるなど、土鍋の素材にもこだわっている。

 ガスコンロで炊く「土鍋ごはん」は、おいしいおこげができ、ふっくらと仕上がっても、手間がかかり、炊きあがり時間の予約や長時間の保温ができない。炊飯ジャーのメリットは、何といっても手軽さ。特に、炊いた後の保温機能は、家族の食事時間がバラバラになりがちな世帯で必須だと思われていた。その常識を覆したのが、2016年12月発売の愛知ドビーの「バーミキュラ ライスポット」だ。
 
鍋炊きごはんのおいしさを手軽に楽しめる「バーミキュラ ライスポット」シリーズ

 バーミキュラ ライスポットは、炊飯のために進化した鋳物ホーロー鍋と、自動での火加減調節が可能な熱源を組み合わせた保温機能なしの炊飯器で、無水調理、ロースト、炒め調理、スチームといった調理用途にも利用できる。5合炊きモデルに加え、18年3月にはよりコンパクトな3合炊きモデル「バーミキュラ ライスポットミニ」を投入。少し遅れて17年2月に発売となったバルミューダの蒸気炊飯器「BALMUDA The Gohan」とともに、従来の炊飯ジャーとは異なる、「専用鍋」で炊く新しいタイプの炊飯器市場を開拓した。

 さらに、長谷園×siroca(シロカ)のコラボレーションとして、伝統工芸の伊賀焼と家電を融合した「かまどさん電気」が登場。伊賀焼窯元「長谷園」の有名な炊飯専用土鍋「かまどさん」をそのまま使い、電気の力(シーズヒーター)で直火を再現し、全自動で炊飯できるようにした世界初の全自動電気炊飯土鍋だ。炊飯モードは白米・玄米・雑穀米の炊飯とおかゆだけ。一般的な炊飯ジャーより重厚感があり、家電量販店の店頭ではとひときわ存在感を放っていた。
 
4年の歳月を経て完成した「長谷園×siroca かまどさん電気(SR-E111)」。
本体はかなり大きいが、土鍋だけ取り出して食卓に置ける

 本体サイズは幅30×奥行30×高さ26.1cm(土鍋は幅26×奥行26×高さ16.7cm)、質量は約7.6kgで、炊き上がったら土鍋だけ取り出して食卓に置くイメージだ。ちなみに、同じ3合炊きのバーミキュラ ライスポットミニは幅21.8×奥行25×高さ17.3cm、重さ約5.0kgなので、サイズ感が全く異なる。

「シンプル」VS「多機能」 おいしさの追求が続く

 かまどさん電気は、今年3月発売。試食ありの体験イベントや口コミを中心に人気を集め、さらに秋以降、各メディアも取り上げ、ますます注目度が高まっている。大手メーカーの炊飯ジャーは、全国の米どころの銘柄米をよりおいしく炊き上げられる「銘柄米炊き分け」機能を強化している。しかし、地元産の決まった銘柄やブレンド米しか買わない層にとって、この機能は余計なお世話でしかない。

 シンプルに「おいしいごはん・おかゆを炊く」にこだわった、かまどさん電気やBALMUDA The Gohanは、多機能に進みがちな製品開発へのアンチテーゼともいえるだろう。年末年始、さらに口コミで広がるか、新タイプの炊飯器に注目だ。(BCN・嵯峨野 芙美)