グレードによって価格差が激しい家電といえば炊飯器だろう。炊飯の仕組み、容量、釜の構造・材質など、客観的に比較可能なスペックの違いもあるが、「高額機種=炊き上がったごはんがおいしい」というイメージが、高級炊飯器に関心が集まる最大の根拠になっているようだ。

食欲の秋は、炊飯器の最大の商戦期だ

 炊飯器同様、テレビも価格差が大きい。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2018年8月の液晶テレビ全体の税別平均単価(千円単位)は6万5000円。40型以上の4K/8K対応機種(4K/8K液晶テレビ)は11万円だが、4K非対応機種なると5万7000円となり、解像度によって5万3000円もの開きがある。さらに、各社がプレミアラインに位置づける有機ELテレビの平均単価は、当初よりだいぶ下がったとはいえ、28万7000円と非常に高額だ。今後、4Kに続き、8Kテレビも登場すると、テレビの価格差はさらに広がるだろう。

 実は炊飯器は、故障する前に買い替えるケースが多いという。日本人は食にこだわりをもつ人が多く、「おいしさ」への欲求は、新しい製品を試してみたいという心をくすぐるようだ。一方、テレビは、いくら画質や音質の向上を訴えても、AV機器マニア以外、それほど気になるポイントにならず、故障しない限り、なかなか購入に至らないため、買い替えニーズの喚起が業界全体の課題となっている。

 9月4日にソニーが発表した有機ELテレビ/液晶テレビは、クリエイターの制作意図を忠実に再現する「MASTER Series」と銘打ち、税別の実勢価格は、もっとも安い55型の有機ELテレビ「KJ-55A9F」で45万円前後となる見込み。
 
10月13日に発売するソニーのプレミアム有機ELテレビ
「ブラビア A9F」シリーズ。リモコンを介さず、ハンズフリーで操作できる

 高画質・高音質に続き、アピールポイントの2つめには、「ネット動画を快適に楽しめる」を挙げ、従来のAndroid TV機能搭載モデルに比べ、「Netflix」アプリは最大約4分の1、「YouTube」アプリは最大約2分の1に、起動時間を高速化したという。また、テレビ本体にマイクを内蔵し、直接話しかけてハンズフリーで音声検索・操作できるようになった。いわば「スマートスピーカー化」だ。

 高額なプレミアムモデルを売るためにこれまで足りなかった要素を、ようやくキャッチアップした印象だ。若者世代の「テレビ離れ」は、正確には“テレビ放送離れ”。4K/8Kといった画質競争より、シンプルに「これまでPCやスマートフォンの小さな画面で見ていた無料のインターネット動画や動画配信サービスの番組を大きな画面で見られる」とアピールしたほうがよほど効果的ではないかと感じるのは、筆者だけだろうか。

 4Kテレビに、別途、4K対応チューナー、BS/110度CS左旋の電波を受信できるアンテナ・ケーブルまで必要な「新4K8K衛星放送(BS/110度CS 4K8K放送)」にはあまり期待していないが、Netflixをはじめ、マルチデバイス対応の動画配信サービスのさらなる普及と、テレビ本体の操作性改善には期待したい。(BCN・嵯峨野 芙美)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。