2018年は、eスポーツに投資する企業が次々に登場し、“eスポーツ元年”や“eスポーツバブル”が到来している、といわれている。ところが、社会学者の加藤裕康氏は、「このバブルは今後1年で崩壊する恐れがある」と警鐘を鳴らす。継続して発展させるためには、「イベント・マーケティングが欠かせない」という。

産業としてのeスポーツの課題について語る社会学者の加藤裕康氏

 日本スポーツ産業学会が7月22日、明治大学駿河台キャンパスで開催した第27回大会セミナーに講師として登壇した加藤氏は、「産業としてのeスポーツの課題」というテーマで講演した。

 eスポーツはビデオゲームを用いた競技・スポーツの名称。今年2月にはeスポーツ業界を代表する団体「日本eスポーツ連合(JeSU)」が立ち上がり、政府はクールジャパン戦略にeスポーツを取り入れた。また、2019年の茨城国体の文化プログラムに採用されたり、国際オリンピック委員会がeスポーツに関する公開討論会を開催したりと、国内外で注目度は高い。

 その注目度の高さから、さまざまな場所で取り上げられるようになったeスポーツ産業は現在、関連株の高騰や話題に乗じるかたちで参入してきた企業の活動によって盛り上がりをみせている。加藤氏が危惧しているのは、この盛り上がりが一過性のものになってしまう恐れがある点だ。

 eスポーツ産業を継続的に成長させるためには、「ゲームは悪いもの」「ゲームはスポーツじゃない」といったイデオロギーの転換と、「放映権料の確保」「スポンサーの確保」が必要だと加藤氏は語る。これらの課題を解決するカギが、イベント・マーケティングだ。
 
eスポーツが継続的に発展するために必要な要素

 加藤氏は、「スポーツ産業では昔からいわれているが、営利だけを追求するのではなく、コミュニティ(顧客)と価値観を共有しなければ、失敗する」と、イベント・マーケティングの大切さを訴える。

 eスポーツ産業に置き換えれば、ゲームソフトやゲーム内のアイテム、デバイス、グッズなどを購入して、eスポーツ経済を根底で支えているファンに寄り添わなければ宣伝効果も期待できないので、スポンサーがつかないまま資産だけを失ってしまうことになる、ということだ。

 ゲームセンターやインターネットなどを寄合所にした、大小を問わず無数にあるゲームファンたちのコミュニティに受け入れられれば、広告でもスポンサーでも、常に一定の層に訴求することができる。ユーザーのメリットに繋がれば、そこから輪が広がる可能性にも期待できる。

 加藤氏は、「ただ話題に乗って参入した企業が市場を食い荒らしてしまい、本気でゲームで何かをしようとしている人もダメになってしまう事態は、避ける必要がある」と訴えた。(BCN・南雲 亮平)