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日立アプライアンスの徳永俊昭社長に聞く、「エコに足し算」から卒業した新コンセプト

インタビュー

2018/05/15 18:10

新デザインはシリーズで展開 イメージの刷新狙う

―― 新コンセプトのもと、「顧客視点」「デザイン」「スマート化」の三つの方針を掲げています。まず「顧客視点」ではタイに新たにお客さまセンターを立ち上げましたが、これによってどのような変化を期待しているのですか。

徳永 期待しているのは、「寄り添う」ということの徹底です。現地の生活者がどのようなものを求めているのかの分析・検証を強化します。日本ではすでに行っていますが、これを海外にも適用していきます。例えば、日本ではシックなデザインの冷蔵庫が好まれますが、東南アジアでは豪華な模様が入っているデザインなどにニーズがある。“現地スペシャル”ともいえるような製品を増やしていきます。

―― デザインは外部のデザイナーを採用すると発表されています。単一の製品をコラボレーションモデルというイメージでしょうか、それとも製品群を横ぐしにしたシリーズというイメージでしょうか。

徳永 後者を考えています。残念なことに現在の日立の家電のデザインの評価はあまり高くないと認識しています。われわれのデザインチームの中に外部のデザイナーの知見を加え、新しいデザインコンセプトをシリーズで展開していきます。
 
新しいデザインコンセプトは単一の製品ではなく製品群で展開する予定だという
―― 従来の安心感のあるデザインに愛着があるユーザーもいると思います。これまでとこれからのデザインで棲み分けも考えているのですか。

徳永 お客さまによって棲み分けるということはないです。日立の家電のデザインに対する評価を、誰が見ても評価してもらえるような広く受け入れられるものをつくりあげていきたいです。

自前のテクノロジーに強み 外部連携はオープンスタンスで

―― 最大の変化になるであろうスマート化についてはIoTプラットフォームのLumada(ルマーダ)をはじめ自前のテクノロジーを生かすことがアドバンテージになってくるのでしょうか。

徳永 日立グループのIoTプラットフォームのアドバンテージとなるのは、非常に多くの事業のユースケースが蓄積されていることです。例えば、建設機械の故障の検知や電力使用量の最適化などですが、これは冷蔵庫の故障や洗濯機の電力使用量の最適化など、家電にも生かせますよね。

 また、セキュリティが強固であることも、これからの時代には大きな優位点です。われわれのグループは原子力発電所をつくれるような事業体です。これは裏返すと、セキュリティに対して最大限に配慮できる体制をもっているということです。先日もSNSの情報流出といった事件がありましたが、われわれであれば安心して外部に接続できる家電を提供することができます。
 
日立グループのIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」が蓄積した知見を家電分野にも活用

―― 現在のIoT家電は自社製・他社製含めて連携機能が限定的であるように思います。ユーザーの買い渋りの原因にもなっていますが、日立としてカテゴリ全体を押し上げるために考えていることはありますか。

徳永 これは「日立がこう考えています」と言った瞬間にローカルな話になります。メーカー単体で独自の世界をつくっていくか、オープンにつながるものをつくっていくか、二つのスタンスがありますが、われわれは後者です。自宅の中の製品が全部日立製というのは、あればうれしいですが、考えづらい(笑)すでに「Amazon Echo」との連携も発表していますが、基本的にはオープンにつながる家電を目指します。

―― それは、例えば、Lumadaで収集したデータを他社に提供する可能性もあるということですか。

徳永 十分に考えられると思います。もっとも重要なのは、セキュアな環境を担保しつつ、データを収集し、どのような価値をお客様に還元するか、ということです。ただデータを収集するだけでは意味がありません。お客さまに「つなげたい」と思っていただけるように、そのメリットについて、必死になって考えているところです。

―― 新方針にもとづいた新しいカテゴリの家電の登場もありえますか?

徳永 現時点で具体的なプランをお話することはできませんが、考えていないわけではありません。われわれの役目は「製品の提供」ではなく、「お困りごとの解決」にシフトしてきます。いまの製品群ではどうしても解決できないということになれば、当然選択肢になってくると思います。

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