オリンピック効果で大型化・有機EL化が進むテレビ

 コロナ禍で東京オリンピックが開幕した。感染拡大の影響で海外からの一般観客はゼロ。ほとんどが無観客試合とされ、国内の観客もテレビやインターネットを通じた観戦を余儀なくされている。一方、テレビ市場では販売台数前年比が2桁割れと振るわないものの、大型化、有機EL化が進み、一部ではオリンピック需要による盛り上がりも見せている。


 テレビの販売台数は6月、前年比で82.0%と2桁割れに終わった。コロナ禍1年目の昨年6月に140.9%と大幅増だった反動だ。昨年は巣ごもり需要が活発化した影響で多くのカテゴリーで販売が伸長した。テレビのその一つ。確かに前年比では2桁割れだが、コロナ禍の影響のない一昨年との比較「前々年比」では115.6%。テレビ市場は、ある程度の活況を維持していると見ていいだろう。オリンピックの効果もある程度は出ていると思われるが、例年とは異なるコロナ禍による影響が大きく、オリンピック単独での影響は見えにくくなっている。

 一口にテレビといっても画面サイズや液晶、有機ELといったパネルの違いによってバリエーションが豊富だ。全体でこそ前年割れだが、60型以上の大型テレビに限ると好調だ。6月の販売台数前年比で113.0%と依然2ケタ増。画面サイズ帯、パネル形式別に細分化してみると、液晶の70型以上と有機ELは2ケタ増の伸びを維持している。
 

 テレビ市場の状況を販売金額で集計すると60型未満の液晶が過半を占めている。しかし、その比率は徐々に下がっている。このところ伸びているのが60型未満の有機ELだ。一番の売れ筋、55型がけん引して全体の19.9%を占めるまでになってきた。次いで伸びてきたのが有機ELの60型台。9.3%と2桁シェア目前だ。10.5%の液晶60型に迫っている。70型以上では価格差が大きいこともあり、液晶が5.4%と依然優勢。有機ELは1.6%とまだまだこれからだが、昨年6月に比べれば構成比は2倍に迫る勢いだ。
 

 活況を示す60型以上のテレビ市場でメーカー別シェアを見ると、最も強いのがソニーだ。この6月では38.7%と過去1年で最も高いシェアを獲得している。次いでシャープが18.4%、パナソニックが17.5%で追いかける。TVS REGZAが10.2%、Hisenceが8.2%と続く。この1年でシェアを伸ばしたのがパナソニック。昨年6月の8.3%から倍増させた。同社はオリンピックの最高位のスポンサー「ワールドワイドパートナー」。昨年は開催1年延期の影響をダイレクトに受けた。開催にこぎつけた今年、シェアを挽回しつつある。

 有機ELは画面の反応速度が速くスポーツ観戦に適している。どうせ見るなら大画面でと考える消費者も少なくないだろう。オリンピックは、有機ELや大画面製品の好調に貢献していると言えそうだ。(BCN・道越一郎)