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夏の終わりの「展示処分品」、顧客も店員もハッピーになる売り方

売るヒント

2019/08/16 12:00

【家電コンサルのリテールマーケティング 特別編2】昔から商売の閑散期は「ニッパチ」といわれ、2月と8月が「ヒマな時期」とされているが、最近では猛暑が長引く影響などもあり8月がまだまだ忙しい時期だ。今年は、消費増税の駆け込みも重なっている。一方で、小売業では世間一般のような盆休みの一斉休業がなく、ローテーションで休暇を取得する。そのため、慢性的に人手不足になる8月後半から、いかに手間をかけずに売りさばくかが肝心になる。
 


 少ない人数で売り上げを確保するには、作業の効率化が欠かせない。扇風機の販売を例にとって考えてみよう。

 この時期の扇風機の展示処分品売り場でよく目にするのが、「扇風機を安く、低粗利益(処分プライス)で売りながら、必死に箱に詰めている」といった光景だ。処分価格のため粗利益はとれず、時間が掛かるといった悪循環に陥る。

 通常よりも人手が足りない販売員からすれば、「展示品を分解・清掃して箱に詰める」という作業は、あまり大きな声ではいえないが、できれば避けたい作業の一つだろう。できることなら、展示処分品をそのまま引き渡しして、早めに売り切ってしまいたい。

 ここで「儲からない上、邪魔くさい」とマイナス思考になるのではなく、どうせ安く売るなら顧客も販売員も喜ぶ施策はないかとプラス思考で考えたい。その一つとして、「処分価格という安さの理由に、販売員の負荷となる作業を組み入れて、それを明示する」という手法があることを紹介したい。

 扇風機の場合なら、「展示品だから安い」という理由もさることながら、「このままの状態でお渡しするから安い」ということを加えて明示してみる。すると顧客は「だから安いのか」と納得するだろう。

 逆に、「安さの理由」を明示しない場合はどうなるだろうか。忙しいからといって展示処分品販売の負担が態度に少しでも出てしまえば、顧客に「失礼な態度の店」「安く買えて満足したのに、不愉快な気持ちになって残念」などといった思いを抱かせてしまい、店や販売員に対する不信感を持たれることだろいう。安く売るからこそ、こちらの負担も「安さの理由」として利用する発想が大切なのだ。

 ここで注意したいのが、「空箱の扱い」だ。扇風機の場合、オフシーズンには「箱に入れて押入れに収納する」という顧客もいる。そのため、扇風機の空箱は処分せずに、購入時に「箱がいるかどうか」を確認して、必要な顧客にはレジ袋に入れた本体と別にして渡せばいい。

 家電製品には、「空箱があった方がいい商品」と「空箱がなくてもいい商品」があることを理解しよう。扱っているカテゴリーごとに空箱の保存が必要かどうかを考えることが大切だ。

 その上で、販売員の手間を省くのに絶好の理由になる処分価格を上手く活用して、人手不足からくる負担を少しでも減らしていただきたい。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)


■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。