ソニー、次世代PlayStationの二つのテクノロジーを披露

経営戦略

2019/05/21 19:00

 ソニーは5月21日に開催した経営方針説明会の中で、ゲーム機「PlayStation」の次世代コンソール機の中軸テクノロジーとなる開発中の描画技術を公開した。新しい技術は、シーンの切り替えにPS4 Proで8秒かかっていたものが、わずか0.8秒で切り替わる。

ソニーの吉田憲一郎社長兼CEO

 「テラフロップス(浮動小数点演算を1秒間に1兆回)という単位で表される高速データ処理のさらなる向上と、超高速広帯域の専用SSDの組み合わせによって飛躍的な描画スピードの向上を実現した」と吉田憲一郎社長兼CEOは新しい技術をアピールしながら、デモ映像を披露した。

 まず、大量なデータ処理が必要になるシーンチェンジのデモでは、現行のPS4 Proがシーンの読み込みに約8秒かかるのに対して、次世代機では10分の1以下の0.8秒と一瞬で切り替わった。
 
次世代機は0.8秒でシーンが切り替わる

 次に、スパイダーマンが速度を上げながらニューヨークの街中を浮遊していくシーンを表示。PS4 Proでは移動速度を上げると、描画性能に限界が生じるために処理が追い付かなくなる。そのため、実際のPS4用のゲームではキャラクターの移動速度に制限をかけることで映像の破綻を防いでいる。

 ところが、開発中の次世代機ではキャラクターのスピードに制限をかけることなく、瞬時に移動していく街並みをきれいに描画していた。
 
PS4 Proではキャラクターの高速移動を制限
 
次世代機はキャラクターの高速移動を制限せずにきれいに描画

 経営方針発表会の冒頭で吉田社長兼CEOは、「ソニーはテクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニーとして進化する」と今後のソニーの在り方について語った。

 まさに次世代ゲーム機に搭載された二つの技術は、テック企業としてのソニーの存在感を示す重要なキーテクノロジーとして紹介された。

 19年3月期決算で、2期連続となる過去最高の営業利益をたたき出して復活を印象付けたソニー。営業利益の35%、売上高の27%を占めるG&NS(ゲーム&ネットワークサービス)事業は、まさにソニーの経営の屋台骨で、次世代ゲーム機はそのビジネスの中核を担う。

 G&NSの中期的なテーマとして吉田社長は、「イマーシブ(没入感)」と「シームレス(いつでも、どこでも切れ目なく)」を掲げた。会見で紹介された二つの技術は「イマーシブ」な体験をユーザーに提供する。「シームレス」な体験は、PlayStationのストリーミングサービスとしての「リモートプレイ」と「PlayStation Now」を進化させることで実現していく。(BCN・細田 立圭志)