キャッシュレス決済の方が客単価はアップする?

【家電コンサルのリテールマーケティング Vol.19】 キャッシュレス決済といえば、2018年12月に爆発的にユーザー数を増やしたPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」が記憶に新しい。現在、家電量販各社でもPayPayをはじめ、「d払い」「楽天ペイ」「LINE Pay」などのスマートフォン(スマホ)決済を数多く導入するケースが増えているが、クレジットカードを含めて、これらキャッシュレス決済のメリットとデメリットを正しく理解しているかどうか、改めて確認することが大切だ。


 まず、メリットとして挙げられるのは次の4点。(1)支払い方法の増加による買いやすさ(2)還元ポイントなどの購入特典(3)新規顧客の獲得(4)客単価の向上、である。

 顧客からすれば、支払い手段が増えることによって「今、購入できる」というケースが増えるし、決済会社の還元ポイントも付けばお得感が高まる。

 また、店舗側にとっても新規の顧客獲得につながり、キャッシュレス決済の方が客単価の向上も期待できる。実際に、マサチューセッツ工科大学が「クレジットカードで決済すると、支出の現実感が薄れるため支出機会が増加し、1回あたりの支出においても現金よりも多くのお金を使う可能性が非常に高くなる」という実験結果を出している。

 しかし、おさえておきたいのはデメリットである。クレジットカードもスマホ決済も基本的には手数料が掛かるということだ。例え、現在は決済手数料が無料でも、それはあくまでも期間限定など条件付きのもの。今後は、大きなキャンペーン時に多額の負担額を求められることも想定しておかなければならないだろう。

 店舗としては、「お客さまに特典が多く、チラシにも掲載されているスマホ決済は大きく訴求」しつつも、「現金でも、クレジットカードでも、スマホでもいい」という顧客に対しては、各販売員が迷わず現金を選択できる体制になっているかを確認する必要がある。

 また、各決済の締め日、支払日、手数料などは予め一覧表にしておくなど、キャッシュレス決済に慣れていない顧客からの質問に時間を取られない仕組みをつくることが顧客満足度(CS)の向上の観点からも必要になってくる。

 キャッシュレス決済は商売の間口を広げるツールと認識し、販売商品の粗利確保と経費(手数料)削減を全販売員に教育する必要があるといえるだろう。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)


■Profile

堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。