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経路検索の普及へ、苦戦しながらも逆境を乗り越えた「駅すぱあと」

経営戦略

2019/01/14 18:30

【「駅すぱあと」の今までとこれから・4】 1988年2月、日本初の経路検索ソフトとして生まれたヴァル研究所(ヴァル研)の「駅すぱあと」。満を持しての発売だったものの、認知されるまでに長い道のりを歩んだようだ。今まで世になかったソフトなだけに、ユーザーにとっては未知の世界だったことに加え、家電量販店などの販売側にとっては売れるかどうか分からないものだったというのが大きな理由だった。

 「売れなくて苦労した」と打ち明けるのは、発売当初、営業に携わっていた太田信夫社長。今でこそ、経路検索や地図に関連したソフトやアプリは当たり前になっているが、「駅すぱあと」が日本初というだけに、当初はそのようなジャンルが存在していなかった。「家電量販店さんも困っていたのだろう。『ユーティリティ』や『その他』などのコーナーに置かれることが多かった」という。
 
太田信夫社長

 また、80年代はまだ一般的にPCが普及していたわけではない。業務でPCを利用する例が出てきたものの、部門に1台、ましてやオフィスに1台あるかどうかという状況である他、今と比べればPCの性能が低く、1つのソフトが専有するほどの余裕はない。しかも、紙の時刻表がメインの時代だ。ユーザーにとっても、購入すべきかどうか迷うソフトだったといえよう。

 展示会で披露したり、営業担当者が挨拶代わりに試用版を配ったり、さまざまな取り組みを進めた結果、「直感的に使えるという点は評価が高かった」(太田社長)という点で、徐々にではあるがユーザーが増えていった。しかし、ビジネスとして成立していたかといえば、それは難しいものだった。

 転機が訪れたのは93年。これまで発売していた「首都圏版 駅すぱあと for MS-DOS」のユーザーから、「全国の出張に対応できるソフトが欲しい」という要望に対応する形で開発して発売になった「駅すぱあと 全国版 for MS-DOS」がヒットしたときからだ。

 しかも、Windows版として94年にWindows 3.1対応版「駅すぱあと 全国版 for Windows」を発売、95年にWindows 95にも対応。個人向けPCを普及させる流れが出ていた中、「初心者にPCを使ってもらうため、操作しやすいソフトということで『駅すぱあと』がPCのバンドルソフトとして採用された」と太田社長は説明する。これによって、「駅すぱあと」の知名度が上がった他、PCユーザーの増加とともにパッケージ版の「駅すぱあと 全国版」も売れるようになった。
 
「駅すぱあと」は早い段階で全国に対応

 その後は、順調にユーザーを増やしていった他、競合メーカーの参入によって経路検索ソフト市場が拡大。インターネットサービスの広がりとともに、サービス事業者とパートナーシップを組むケースも出てきた。「駅すぱあと」10周年となる98年、「Yahoo!JAPAN」の検索サイトで経路検索サービスを開始したのである。