プログラミング? 子どもに一体何を教えればいいんだ

オピニオン

2018/09/15 12:30

 蒸気機関車も自動車も飛行機も、移動という点では人間の能力をはるかに超えている。100m走で車と競争して負けたと悔しがる者は誰もいない。札幌まで飛べなかったといって、ジェット機に負けたと悔しがる者もいないだろう。ただそれだけのことではないのか。囲碁でも将棋でも、高速なコンピュータで効率よく計算すれば、人間を負かすことができても何の不思議もない。便利に使えばいいだけのことだ。

 AIブームは今回が3度目だという。そういえば、人口無能とかで遊んでいたのは80年代の第2次ブームの時だった。流行ったり廃れたりという波は、テレビにも及んだ3D映像のブームを思い出す。あれも確か3度目だった。当時関係者は口をそろえて「今度は本物。3度目の正直だ」と言っていた。AlphaGoがプロ棋士に勝ったとか、シンギュラリティによって世界が一変するだとか、確かに機械がものすごく賢くなりそうな予感はするが、それ以上でもそれ以下でもないように思う。
 
AI技術が進歩すれば、キーボードは過去の遺物になるかもしれない

 小学生から高校生までの子どもたちが戦うロボコン、WROの日本決勝大会を見に金沢に行ってきた。特に驚いたのは小学生の子どもたちだ。想像していたよりはるかに早くロボットを組み立て、開始からものの10分もしないうちに試走場で動作をチェックしはじめていた。与えられた課題をこなすロボットを組み立てて、プログラムを作って走らせる競技だから、それなりに時間がかかると踏んでいたのが大きく外れた。

 子どもたちは目を輝かせ、嬉々としてロボット組み立て、プログラムをつくっていく。プログラムと言っても、PC上でロボットの動作が書かれたアイコンをつなぎ合わせて目的の動作をするように組み立てていく作業だ。左タイヤ1回転とか、壁に当たったら反転とか、命令のアイコンを積み上げていき、課題の動作をするように仕上げていく。命令しなければ動かないコンピュータの基本を学んで、コンピュータにきちんと仕事をさせられるような論理的思考力も養える……。
 
WRO日本決勝大会で嬉々としてロボット競技に取り組む小学生選手

 ん、待てよ。そういう「プログラミング」は、AIの進歩でゆくゆくは必要なくなるのではないのか? 今後、命令通りに1ステップずつロボットを動かす指示をつくっていくような苦行から解放されるとすれば、無駄なことに時間を費やすことにはならないか? もっとも、自分の考えた通りに機械を動かすのは単純に楽しい。遊びとしてなら、とても充実した時間を過ごせそうだ。しかし、教育目的でとなると、とたんに怪しくなってくる。

 近い将来無理に機械の言葉を覚えなくとも、機械から歩み寄って話しかけてくれるくる時代が訪れる。いやもう訪れつつある。そのときに、AIではできない、機械はまかなえないことがやっぱり一番重要なんだろう。あるべきプログラミング教育の姿とは、そうした時代を乗りこなし使いこなして、楽しく生きていける知恵を授けていくことなんだろうと思う。何を授けてあげればいいのか、皆目見当はつかないけれど。(BCN・道越一郎)