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動画配信サービス後発のバンダイ、勝算は“キャラクター”

経営戦略

2018/03/12 20:30

 バンダイナムコエンターテインメントが2018年春、動画配信サービス事業に参入する。タイトルは「&CAST!!!(アンドキャスト)―キャストと遊べる生配信―」。視聴者と配信者が一緒にゲームをプレイするという、視聴者参加型の新しいスマホアプリだ。配信者の中にキャラクターを交えている点が大きな特徴となっている。


画面上部でライブ配信しながら、画面下部で一緒にゲームをする

 「&CAST!!!」は、『テイルズ オブ』シリーズや『ゴッドイーター』シリーズなどのゲームからオリジナル作品まで、さまざまなコンテンツに関連した番組を配信するアプリ。配信している間に視聴者は、「キャスト」と呼ばれる動画配信者や他の視聴者と一緒に、自分のアバターを利用したゲームを楽しむことができる。アプリ本体は無料、一部アイテム課金となる。

 ゲームでは、視聴者と配信者が協力して敵を倒すことになる。コマンドは攻撃ボタンを連打するだけの手軽な仕様。戦闘で活躍すれば、ゲーム内の貴重なアイテムなど相応の報酬がもらえる。アバターの見た目や戦闘力は「ガシャ」で手に入れたアイテムで変更できる。

最大の武器は“キャラクター”


バンダイナムコエンターテインメントのIPであるゲームキャラクターの人気を生かす

 開発に携わったバンダイナムコエンターテインメントNE事業部第3プロダクション桝井大輔ゼネラルマネージャーは、「コンセプトは、『動画×ゲーム×IP』。配信とゲームを同じアプリ内で展開することは新しい試みだが、さらにキャラクターを交えたことが当社独自の強み」と説明する。
 

NE事業部第3プロダクションプロダクションプロデュース3課の大森大将アシスタントマネージャー(左)と、
桝井大輔ゼネラルマネージャー

 「&CAST!!!」の最大の特徴は、バンダイナムコグループのIPであるキャラクターだ。配信者にゲームキャラクターを据えることで、視聴者がキャラクターと一緒に遊んでいるかのような状況をつくり出す。チャットでの会話や、配信する番組の内容にアバターの衣装をあわせると一体感が増し、戦闘力も向上する仕組みになっている。

 同社のプロダクションプロデュース3課の大森大将アシスタントマネージャーは、「『キャストと一緒に遊んでいる』という感覚を引き出すため、ゲーム自体はシンプルにした。課金しなくても十分に遊ぶことはできる。一方で、当社の他のゲームアプリで蓄積してきた経験から、強さや見た目を追求したいユーザーが出てくることも予測できる。そのために課金システムを導入している」と話す。

 「&CAST!!!」は、他の視聴者よりも活躍すればするほど豪華な特典が貰えるという競争力の高さがある。キャストのサインなどを特典とすることで、活躍する意義や課金する利点を訴求し、収益をあげる方策も考えられるだろう。さらには、キャストである舞台俳優や声優を直接応援できるシステムも考案しているという。
 

新人俳優たちの共同生活をのぞき見れる「シェアハウCHU!」

 例えば、本アプリ発の作品なら、視聴者が多くなればなるほど、応援すればするほど、アニメ化や書籍化といったメディアミックスができるようになったり、キャストの生活が豊かになったりすれば、応援のしがいもあるはずだ。桝井ゼネラルマネージャーは、「サービス開始時には、100人近いキャストが参加する予定。初年度は100万ダウンロードを見込んでおり、運営には差し支えない程度の収益性を確保する。夏以降にはさらにコンテンツを拡大できるはず」とみている。
 

&CAST!!!オリジナルの作品「神酒ノ尊」。番組は「みきみこちゃんねる」

 一度のプレイ時間は、ストーリーや演出を作りこんでいても1時間程度で、短い配信なら15分ほど。競争の激しい余暇の時間、とくに寝る直前の時間の利用を狙っている。

 動画配信サービスにバンダイが参入する理由は、「消費者がスマホで遊ぶ時間のうち、ゲームアプリ以外では動画視聴の時間が増えてきているため、IPを生かせる機会として有効だと考えた」としている。桝井ゼネラルマネージャーは「動画ビジネスのなかの一つのカテゴリとして、キャラクターを軸にした新たなサービスをつり上げていきたい」と意気込みを語った。