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【SIMフリー最新動向2017】ビックカメラとASUSの担当者が対談、売り場の今を語る

インタビュー

2017/03/10 19:30

 家電量販店のデジタル関連の売り場の中で、いま最も活気のあるのがSIMフリースマートフォンコーナーだ。当初のITリテラシーの高い層だけではなく、女性や初めてスマホを使う高齢者など、SIMフリーに関心をもつユーザー層は広がり、売り場の状況も大きく変化している。

 現場のリアルな動向を探るため、今回は、いち早く店舗内にSIMフリーコーナーを設置し、黄色をモチーフにした「格安スマホコーナー」を展開しているビックカメラ、2015年11月に「ZenFone 5」を投入して以来、市場拡大をけん引してきたASUSの2社の対談を実施。ビックカメラで通信事業を統括する商品本部商品部モバイルグループ長 兼 営業本部営業部通信事業部の平賀直也事業部長と、商品流通を担当するASUS JAPANのコンシューマー事業部リテール営業1課の佐藤哲生アカウントマネージャーにお話をうかがい、製版双方の視点から、今後さらにSIMフリースマホ市場が成長するために何が必要か、語り合ってもらった。

14年11月がターニングポイント、「ZenFone 5」登場で市場が一変

―― 家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、SIMフリースマホは、16年12月に、初めてスマホ全体の販売台数2割を超えました。ビックカメラではかなり早い時期からSIMフリースマホに力を入れていますね。売り場での展開はいつ開始したのですか?

平賀:当社では、オリジナルSIMカード「BIC SIM」を13年6月から販売し、14年3月に音声通話対応版を投入しました。音声通話対応の「BIC SIM」とSIMフリースマホをセット販売するにあたり、売場展開を14年4月に強化しました。それから徐々に市場が認知され始め、11月頃から急速に市場が動き始めました。ちょうどASUSの「ZenFone 5」が発売したタイミングですね。
 

ビックカメラ通信事業部の平賀直也事業部長

―― 「ZenFone 5」はASUSにとっては、日本で初めて展開するスマートフォンでした。市場がほとんど形成されていないなかで、勝算はあると踏んでいたのですか?

佐藤:海外では一般的ですが、日本ではそもそも「SIMフリー」という言葉自体がほとんど知られていなかった。もちろん、リリース前はとても不安でしたよ。しかし、投入した11月に非常に好調に推移したことで、いけるぞと確信しました。
 

ASUS JAPANのコンシューマー事業部リテール営業1課 佐藤哲生アカウントマネージャー

―― ユーザーは「格安」という言葉に反応したのでしょうか?

佐藤:とっかかりはそうかもしれません。しかし、ASUSとしては「格安」という意識は全くなく、日本市場でどんなSIMフリー端末は必要なのかをリサーチし、最初のモデル「ZenFone 5」を導入しました。日本用に完全カスタマイズし、最初からLTE対応モデルを導入するなど「格安で運用できる」だけではなく、端末として「ワンランク上の贅沢」の提供することを意識していました。SIMフリースマホ自体は世の中にすでにありましたが、上質な端末はほとんどありませんでした。お客様が反応を示したのは、品質・デザイン・コストパフォーマンスなどの要素が大きかったと分析しています。

平賀:お客様も「大手キャリアが販売する端末と遜色ない」ということを理解して買っていただいていたと思いますよ。「ZenFone 5」が登場した月のビックカメラのSIMフリースマホの売上は、前月の300%以上でした。商品としての魅力がなければ、ここまで伸ばすことはできません。__RCMS_CONTENT_BOUNDARY__

キャリアコーナーとの差別化で認知上昇、ユーザー層も拡大

―― その後、各社が参入して市場は急速に拡大しました。売り場の状況はどのように変化したのでしょうか?

平賀:初期はリテラシーが高いお客様がほとんどです。「キャリアからSIMフリー」ではなく「通話用にキャリア、データ通信用にSIMフリー」という2台持ちの方が多かった。売り場は、市場規模ほど急速に拡張したわけではありませんでした。

 契機になったのが、16年1月末の「0円販売」の終了でした。これまでと同じようなやり方ではスマホ販売は頭打ちということもあり、15年末頃からSIMフリー売り場を少しずつ変えていきました。

―― アーリーアダプター以外のユーザーにリーチできるようになってきたのもこのタイミングですか?

平賀:それはもう少し後になります。16年夏頃でしょうか。「格安スマホ」という言葉を全面に出し、売り場のPOPを黄色で統一したことで、これまで興味をもっていなかったお客様の目にも止まるようにしました。キャリアと明確に売り場を棲み分けたことで、認識されやすくなったという要因もあると思います。売り場がわかりやすくなり、お客様の幅が広がっていきました。
 

ビックカメラ有楽町店の「格安スマホコーナー」

―― ASUSの「ZenFone」シリーズも16年は非常に多彩な端末が登場しました。ユーザー層が拡大することを見越しての戦略だったのですか?

佐藤:「ZenFone 5」が登場したときの選択肢はわずか2機種でしたが、好評を受けて、SIMフリー市場にはまだまだお客様のニーズを掘り起こす余地があると感じました。ASUSは「顧客ニーズを真に理解して、共感を得る(Start with People=人を中心に据えた製品開発)」という企業理念をもっています。その理念に従い、ラインアップを拡充したことが、市場の成長とうまく合致しました。

―― 売り場では、どのようにアプローチされたのですか?

佐藤:例えば、ビックカメラだと「ASUSコーナー」を設置してもらい、さまざまな端末を体験していただけるようにしました。先ほど平賀さんからお話いただいた黄色で統一した「格安スマホコーナー」の中でも、「誰もが堪能できるワンランク上の贅沢」という「ZenFone」のコンセプトが伝わるように、かなり無理を聞いていただきました(笑)
 

売り場での協業について語る佐藤アカウントマネージャー

―― SIMフリー売り場を訪れるユーザーは具体的にどのように変化していますか?

平賀:相当変わりましたね。当初はご自身で情報をリサーチして購入される方がほとんどでしたが、現在はリテラシーや求めるニーズの幅が非常に広い。サービスと端末、どちらも選択肢が増えているので、いかにわかりやすく伝えられるか意識し、SIMと端末をセットで販売するなど、すべてのお客様が求めやすい売り場を意識しています。

―― ユーザーから売り場に対する要望も挙がっていますか?

平賀:端末の違いを明確に知りたいというニーズは強く感じます。商品を触っていただくのはもちろんですが、触ってもわからないというお客様にはどのように伝えるべきかという課題もあります。機能だけではなく、価格の幅も広がっているので、売り場でそうした違いを伝える必要も高まっていると感じています。

―― ASUSは実売データを集計した「BCNランキング」で、2年連続SIMフリースマホ年間No.1を受賞しました。国内で高いシェアを獲得できた要因は何ですか?

佐藤:ASUSではラインアップを「エントリ・ミドル・ハイエンド」の三つに分けています。繰り返しにはなりますが、「ZenFone」シリーズのコンセプトは「誰もが堪能できるワンランク上の贅沢」です。なので、お客様がどのレイヤーの端末を選択しても、想定以上の満足を得ることができます。「エントリなのにワンランク上」「ミドルなのにハイスペック」「ハイエンドなら最先端」というイメージですね。この戦略により、潜在的なニーズを掘り起し、結果として多くのお客様に選んでいただくことができました。
 

ASUSは2015年、2016年と2年連続でNo.1を獲得。「BCN AWARD 2017」を受賞した

―― 日本市場向けのローカライズにも力を入れていますね。

佐藤:ご指摘の通り、日本語入力システム「ATOK」やマルチキャリアに対応するなど、日本のお客様の使いやすさは重視しています。こちらもラインアップの充実と合わせて、No.1を獲得した大きな要因になっていると思います。

―― ユーザーの端末選択にも変化はみられますか?

佐藤:SIMフリースマホに対するイメージは大きく変化してきています。特に性能比を気にするお客様が増加しました。例えば、昨年末に発売した「ZenFone 3 Deluxe」は8万円を超える価格でしたが、われわれの想像を上回る販売台数を記録しました。お客様がいかに性能、高いパフォーマンスの追求に重きを置いているか、再認識しました。__RCMS_CONTENT_BOUNDARY__

年配のユーザーが増加、売り場の変化はまだまだ必要

―― SIMフリーサービス・端末を販売するリアル店舗は増えています。他社に先行して取組みを実施していたビックカメラとしては、今後どのように差別化を図る方針ですか?

平賀:先ほど課題にも挙げましたが、SIMサービス・端末ごとの「違い」を明確に示すことです。現時点では表記できませんが、通信スピードなど比較検討できる材料は増やしていきたいですね。端末であれば、今後ますます自分の好みに合った端末を選ぶ方が増えるはずです。「防水」「おサイフケータイ」など、お客様が重視する要素で直感的に端末を選べる売り場を目指しています。
 

今後の売り場のつくり方について語る平賀事業部長

―― 売り場では年配の方も多く見受けられます。大手キャリアからの乗り換えが加速しているのでしょうか?

平賀:「キャリアからの乗り換え」というよりは、スマホ初心者の方が多いです。キャリアではなかなかスマホに踏み切れなかった年配の方が、価格が安いということを理由に入門機として購入されています。あえて特定の端末をプッシュしているわけではありませんが、SIMカードと端末のセット割引など、ニーズを満たすための施策は打っています。

―― ASUSは16年4月発売の「ZenFone Go」からキッズモードや簡単モードを搭載していますね。

佐藤:端末を問わず「ZenFone」は、どんなお客様にとっても使いやすいことを目指しています。これは日本向けのローカライズではなく、ワールドワイドで共通していることです。

平賀:販売サイドとしても、セールストークのネタとして訴求しやすいです。「このモードを使えば、こんな使い方もできます」という具体的なシーンで説明することができます。

ニーズの多様化が予想される市場で次なる一手は?

―― 今後のSIM市場はどのように成長すると考えていますか?

平賀:現在の黄色をモチーフにした「格安スマホコーナー」によって、SIMフリーの認知はだいぶ拡大しました。今後はそれぞれの端末に対するニーズがより細分化してくるでしょう。そのとき、売り場は現在のままでよいのか、それともメーカーや端末ごとの差異が見えやすいように変化させるべきなのか。ここ数年で醸成してきたイメージもありますから、少しずつにはなると思いますが、変えていく必要はあると思います。

佐藤:前提として、スマホ自体の用途がもっと多種多様になってくると考えています。カメラ機能だけをとっても、食事を撮影してSNSにアップするなんて使い方は10年前までは誰も予想していなかったことです。次にどのようなシーンでスマホが活用されるか、われわれから提案していくことは欠かせません。また「安心」も重要なキーワードです。普及してきたとはいえ、まだまだSIMフリーは認知拡大の余地があります。今後も「いかに安心してSIMフリーを選んでいただくか」は注力すべきポイントです。

―― 最後にメーカーと小売りで協力してやっていくべきことはありますか?

平賀:商品開発をもっと密にやりたいという思いはあります。変化を止めてしまうと、お客様は飽きてしまう。売り場の声をメーカーにフィードバックし、スピード感をもってお客様のニーズを汲み取った商品を世に出すことができれば、この市場はまだまだ成長するのではないでしょうか。

佐藤:平賀さんのご指摘の通り、売り場のご意見は非常に重要です。メーカーの想像を超える、小売りの想像を超える、そんな商品はお客様の声なしには生み出せません。今後も今まで以上に手を取り合って市場を盛り上げていきたいですね。
 

メーカーと小売りの密な連携は、両者共通で市場活性化のキーワードに挙がった

―― ありがとうございました。17年はSIMフリーにとってますます変化の1年になりそうですね。両社の取り組み、楽しみにしています。
(BCN・大蔵 大輔)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。