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小売業をデジタル化で支援する、アドビの佐分利社長に聞く(前編)

インタビュー

2016/11/30 16:31

 アドビ システムズは、法人向けに総合マーケティングソリューション「Adobe Marketing Cloud」を提供している。顧客企業のモバイル戦略やマーケティング戦略を支え、データに基づいた的確な分析で売上拡大や、宣伝・集客の最大化を図るクラウドサービスだ。「これからの小売業は、リアル店舗を持つ持たないに関わらず、消費者の購買行動の変化を敏感に捉え、すばやく順応していかなければならない」とアドビの佐分利ユージン社長は語る。小売業が導入するメリットと、同社の今後の展望を聞いた。


アドビの佐分利ユージン社長

―― 実店舗を持つ小売店がソリューションを導入するメリットを教えてください

佐分利 大きく四つあります。一つが、「デジタルならではのスピード感」です。リアル店舗の場合、新しい情報を顧客に届けるには、実際に足を運んでもらうか、チラシを配るかといったように、時間がかかります。しかし、デジタルを利用すれば、新製品情報が解禁された瞬間にインターネットで配信できるだけでなく、蓄積した顧客の購入記録やユーザーのレビューをすぐに届けることができます。

 二つ目は、顧客一人ひとりに向けて、精査された情報を届ける「パーソナライゼーション」です。製品画像を元に、その製品がどこの店舗のどの棚にあるのかを探してくれる登録制のアプリがあります。これなら、実物を見たい顧客にとって便利なだけでなく、顧客が求める製品や顧客の属性も集めることができます。このように、店舗内を回遊する際のおもてなしのような対応を、デジタルで行って効率を高めることが重要だと考えています。
 

リアル店舗で重視される「おもてなし」をデジタル化する(利用イメージ)

 三つ目は、「デジタル化の難易度の軽減」です。デジタルマーケティングや顧客が閲覧しやすいウェブサイトの作成など、デジタル化には技術や経験、知識の蓄積が必要なので、その分さまざまな面で投資を要します。その難易度を下げることが、弊社のマーケティング事業の役割でもあります。

 最後に「店舗に対する信頼性」。これからの小売店は、価格競争で苦しむのではなく、顧客体験型の競争が大切です。「あの店に行けば、いつでもすばらしい体験ができる」と顧客が期待を抱くような仕掛け作りが必要です。そうすることで、サービスを高め合いながら競争することができます。

 アドビはこれらを解決・促進できるように、世界的な成功事例も有効に活用しながら、日本の小売企業の成功をサポートしていきたいと考えています。

どのようにリアル店舗をデジタル技術で補うか?

―― サポートするにあたって、小売業ならではの難しさはありますか?

佐分利 人事異動の多さです。日本の企業全般にも言えることですが、人材育成の基本姿勢として、会社のことを幅広く知ってもらうための人事異動が多いです。さまざまな経験や知識を蓄積できるので、これはこれで素晴らしい取り組みに違いありません。しかし一方で、働く人の適性に応じた職種に沿った異動とは言えない面もあります。

 また、マーケティングを専門職として手がける人が少ないことも課題です。デジタルマーケティングは技術志向が強いので、ジョブローテーションの人数を少し減らし、熟練したスペシャリストを育成しながら増やしていくべきだと考えます。

―― 現在のサポート状況はいかがでしょうか?

 家電を扱う小売業界からの相談も増えています。競合対策の意味もありますが、家電量販店ではなく、メーカー直販で購入するユーザーが増える傾向にある状況で、どのようにリアル店舗をデジタル技術で補うか、デジタルマーケティングに興味をもつ企業は多いようです。

(12月上旬公開予定の後編へ続く)