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<売れるワケ>動画編集ソフト強化が上半期No.1の原動力、サイバーリンク

時事ネタ

2015/09/28 18:49

 動画撮影は、スマートフォンやタブレット端末の台頭で、思い立ったときに手軽に記録するカジュアルな楽しみ方が浸透してきた。一方で、4K対応ビデオカメラやアクションカムなど、ハイクオリティの映像を撮影するための専用機材も注目度を高めている。撮影機器が多様化するなか、動画を再生したり、編集したりするためのビデオ関連ソフトもこのトレンドを追随し、進化を遂げている。その中で、家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」で、ビデオ関連ソフト部門の2015年上半期No.1を獲得したのはサイバーリンク。ユーザーそれぞれのニーズに合致する機能と使い勝手を備えた製品群が支持を集めた。

 

サイバーリンクの萩原英知チャネルセールスディレクター

 サイバーリンクが2015年上半期に獲得した販売本数シェアは27.4%。15.7%で2位のジャングルと14.4%の3位イーフロンティアに10ポイ ント以上の差をつけた。市場全体の販売本数が前年に比べ77.3%と低調であるのに対し、サイバーリンクは128.6%と上昇している。この上半期の躍進 を支えたのは、DVDやBlu-rayの再生ソフト「PowerDVD15」と、動画編集ソフト「PowerDirector 13」だ。
 

2015年上半期の躍進を支えた「PowerDVD15」と「PowerDirector 13」

 萩原英知チャネルセールスディレクターが「従来とは比較にならないほどの大幅なバージョンアップ」と自らを評したのは、動画編集ソフト 「PowerDirector 13」だ。注目はユーザーの使い勝手に関連する改善だ。これまで20ページ程度だったパッケージ同梱のマニュアルを200ページに増強。「動画編集はハー ドルが高い」と手を出せずにいたビギナーにリーチすることで、新規ユーザーの売り上げを伸ばした。

 萩原チャネルセールスディレクターは上半期No.1の理由について、こう語る。「2014年も好調だった『PowerDirector』だが、昨年のメ インターゲットは乗り換えユーザー。今年はこれまで十分にカバーできていなかった新規ユーザーにアプローチすることができた」。

 ビギナーに向けた施策は、先に述べた「マニュアルの増強」だけにとどまらない。機能面やユーザーインターフェースの見え方も、海外版を日本で改めてレ ビューし、プログラムを大幅に見直したという。「アップデートユーザーを大事にしつつ、新規ユーザーをいかに獲得するか模索することは、市場をリードする メーカーがやらなければいけないこと。動画編集は『やりたいけど、初めの一歩が踏み出せない』というユーザーがとても多い分野。この潜在的なユーザーに働 きかけることは市場の活性化のために欠かせません」(同)と、ビデオ編集ソフト市場が抱える問題に正面から向き合う姿勢を示した。
 

好調の理由を語る萩原チャネルセールスディレクター

 9月15日には下半期の主軸となるであろう「PowerDirector」シリーズの新バージョン「PowerDirector 14」を発表した。最大の注目機能は、人気を集めているアクションカムで撮影した映像の編集に特化した「アクションカムセンター」だ。
 

アクションカムに特化した機能を新搭載する「PowerDirector 14」

 アクションカムは通常のビデオカメラよりレンズが広角だが、各メーカーによって、その度合いにはばらつきがある。新機能では、この広角レンズの補正を各メーカーのアクションカムごとに個別に対応したという。

 120/240fpsのハイフレームレート映像をサポートし、アクションカムならではの動きの美しさを生かした滑らかな映像に、スローモーションなどの エフェクトを簡単に加えることができる。コンシューマー向けの動画編集ソフトでは、ここまでアクションカム映像にフォーカスを当てたプロダクトは現時点で はない。市場をリードしているからこそ打ち出せる“攻め”の機能といえるだろう。
 

広角レンズ補正やハイフレームレート映像のサポートなど、アクションカムユーザーのニーズに細かく対応

 トレンドをタイムリーに捉えた機能を突き詰める一方で、「PowerDirector 13」から継続して、動画編集ビギナーへの目配せも忘れていない。あらかじめ用意されたテンプレートに動画や写真を配置するだけで、テーマに合わせたビデ オ作品が制作できる「クイックプロジェクト」や、指定したビデオ内の人や物の動きにエフェクトを追従しながら表示する「オブジェクトトラッキング」など、 ハイレベルの編集を直感的な操作で実現する新機能も搭載する。

 「新しいユーザーにいかにコンタクトできるかということは、まだまだ課題がある。認知を高めるためのイベントや異業種のコラボレーションなどを企画して いく予定だ。リアル・インターネットを問わずアプローチすることで、動画編集の入り口を広げていきたい」(同)と、プロモーションでも多彩な攻め手を用意 するサイバーリンク。ニーズを先読みする新バージョンが新規・乗り換えユーザーの双方にどのように受け止められるか、下半期の動向にも注目したい。 (BCNランキング 大蔵 大輔)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。