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メタバース時代に向け空間丸ごと保存するならこれしかない! ライカ共同開発の全天球カメラ「Insta360 ONE RS 1-Inch 360 Edition」

レビュー

2022/07/02 17:00

【木村ヒデノリのTech Magic #117】 全天球カメラ市場をリードするInsta360から立て続けに新製品が発表されている。「Insta360 One RS」は性能のアップデートがメインだったが、なんとそのシステムを使って組み立てられるライカ社共同開発レンズの360度モジュール「1-INCH 360 EDITION」が登場した。光学系はライカのノウハウを存分に活用して設計され、かつ1インチのセンサーを2機搭載、6K・2100万画素での撮影ができる。これまでのコンシューマー向け360度カメラといえば面白いコンテンツが撮れるものの解像度の面で難があったが、今回の1-INCH 360 EDITIONはリフレームして4Kで書き出してもミラーレス一眼などで撮った画と遜色がない。さらに写真の綺麗さは格段に上がっており、同じく1インチセンサーを積んでいたRICOHのTHETA Z1を凌ぐレベルだ。昨今の情勢でバーチャル内見や建築のオンライン確認なども再注目されるなかで、1-INCH 360 EDITIONにどのような可能性があるのかを探った。
 

見た目からも高画質感が漂う「1-INCH 360 EDITION」は11万8800円)、コアを含まないレンズアップグレードバンドルは9万6600円
 
コネクタは同じだがレンズ部の横幅は広く専用ブラケットで固定する仕様になっている
 
同梱品にはレンズカバーも含まれている
 
レンズは非球面のF2.2、35mm換算で6.52mm、スーパーワイドでF2相当の明るさからか、SUPER-SUMMICRON(スーパーズミクロン)の名が冠されている
 
以前から出ていた縦型用バッテリー(左)とは互換性がないので注意。新モデルはケースをつけたままUSB-Cコネクタが使えるようになっている(右)1350mAh

ライカ共同開発のレンズとソフトウェア処理がすごい

 2020年に始まったInsta360とライカのパートナーシップ、第1弾はアクションカメラ用1インチセンサーという魅力的なものだったが、今回のインパクトはそれ以上だ。明らかに大型になった本体は、より良い光学性能を期待させてくれる。これまで1インチシングルモジュールはあったものの、360モジュールはX2と同等のスペックでモジュール式の魅力はイマイチだった。しかし今回のリリースでアクションカメラ、360度カメラ共に1インチの選択肢ができたことになる。これによって1台で両方撮れるというモジュール式はかなり魅力的になった。
 
X2と同等のスペックだった360モジュール(センター)
 
どちらのシチュエーションでもライカの1インチモジュールが選べるようになったのはかなりのメリットだ
 
モジュールタイプは通常カメラで最近トレンドの縦型動画を撮るのにも使える

 ライカとInsta360は開発や画質から工業デザインまで協力し合っているそうだが、特に光学とそれをデジタル処理で最適化するという点でパートナーシップが実を結んでいる。最近ではアップルもコンピュテーショナルフォトグラフィー路線だが、Insta360も同様でハードウェアの制約をデジタル処理によって打破する考えだ。

 今回、ライカは360度撮影時の特定のアプリ機能において最高の画質とパフォーマンスを実現することに注力した。その結果、PureShotという独自の機能で撮影した時の画質が驚くほど向上している。PureShot自体は以前から実装されていたが、1-INCH 360 EDITIONとの組み合わせでさらに素晴らしい画質を後処理の必要なく提供してくれるようになった。
 
PureShot(上)と通常撮影(下)。この日は非常に日差しが強い環境だったが、PureShotでは芝や空の色が自然な鮮やかさになり目で見た感じと遜色ない

 PureShotはAI処理で通常のHDR合成で出せなかった広いダイナミックレンジと精細感、低ノイズの画像を実現。さらに今回搭載されたPureShot HDRはPureShot9枚分の写真を合成し、ハイライトからより精細感のある画が出力される。これまでバーチャルツアーはこれ、と言われていたTHETA Z1と比べてもかなり差がつく高品質な画像だったのには驚いた。
 
苦手とされる低照度になってきた夕方の風景。上は今回搭載されたPureShot HDR、下は同じ1インチセンサー搭載のTHETA Z1 DualFisheyeプラグイン、HDR-DNGモード

 作例からもわかるように、1-INCH 360 EDITIONでは潰れそうなギリギリの暗部から太陽の一番明るいところまで色合いがしっかりと確認でき非常に綺麗だ。THETA Z1は裏面照射型であり、さらに2300万画素なのでシチュエーションによってはこちらの方が優れていることもあるだろう。しかし、ライカが求める極めて厳しい基準を満たすよう尽力したことで価格と比較してかなりパフォーマンスの高い製品に仕上がっているのは事実だ(※円高の影響で国内販売価格はTHETA Z1と価格差が逆転しているように見えるが、USではTHETA Z1が1046ドル、Insta360 RS 1-INCH 360 EDITHIONが799ドルとかなり安い)。

バッテリ寿命やアクセサリの不可視化などメリットも多いサイズ感

 Insta360 One X2やTHETAシリーズと比べて本体サイズが気になる方もいるだろう。しかしこのサイズ感にはそれなりのメリットがある。まず他の平たい形状よりも自撮り棒が消しやすい点。2mを超えると流石に無理だが、1m~1.5mであれば全く見えない。筆者はよく自転車に付けて走るのだが、1-INCH 360 EDITIONの自撮り棒の消え方、安定感は素晴らしいと感じた。
 
どこに自撮り棒があるか分かるだろうか? 40cm~100cmくらいの長さで使っている
 
正解はこちら、見えないだけでなくかなり自然に消えている

 かなり自然に消えていて、走行中揺れても見えないのは本体の厚みが関係している。基本的に背中合わせになったカメラの間部分は映らない構造になっているので、自撮り棒を消す用途にはこちらの方が有利なのだ。
 
厚みが出てしまったがアクセサリー類にとってはむしろ便利

 また、その部分にワイヤレスマイクの受信機などを装着するとそれもまとめて消せるので、高音質での録音が可能になった。公式ではRODE Wireless GOシリーズのみの互換性となっているが、DJI Micも使えたという情報もあった。
 
本体に死角があるので、ワイヤレスマイクが付けられてかなり実用的
 
DJI Micもクリップで止める方式なので非公式だが使えるようだ

リフレームであり得ない第三者視点の4K動画

 これまでは難しかった360度動画から4K動画の切り出しができるのもメリットだ。Insta360のデスクトップアプリを使ってProRes・高ビットレートで書き出すことで全ての詳細情報と色を保持した形の4K動画が作成できる。360度動画では通常の半分程度のサイズしか使えないが、6Kに対応したのとセンサーが1インチになったことで、0.8倍程度の大きさを4Kとして書き出しても十分使える画質になっている。
 
6Kで360度収録した動画の一部を4K16:9の動画として書き出しても十分使える品質

 特に暗所の綺麗さは秀逸、動画の綺麗さはTHETA Z1よりかなり優っていると言って差し支えないので、動画に重きを置く方にはかなりおすすめだ。撮っておいて後から理フレームしたりアングルを決めたりできるのが360度で動画を撮るメリット。FlowStateによる強力な手ぶれ補正もクロップされることなく使える。

暗所では工夫が必要だが、デジタルツイン用途も期待できる先進機

 夕方や夜間でもそれなりに照明がある場所を除き、夜間動きがある状態での使用は難がある。これは正直弱点かもしれない。夜間の撮影時はあまりシャッタースピードが遅くなりすぎないように工夫し、かつ三脚は必須。ただハマったときには驚くほど綺麗に撮れるのでここは勘所を押さえて使えば良いだろう。
 
低照度下で綺麗に撮るにはやはりまだまだコツが要る。ハードウェア的な限界もあるだろうが、今後の進化に期待したいところだ

 Insta360によると、今後開発キットのリリースでMatterportなどの主要なバーチャルツアープラットフォームにも対応するとのこと。現在はONE X2とONE Rが使えるが、画質の面ではやや物足りない。1-INCH 360 EDITIONならワンステップでこれまでにない高画質の空間写真が撮れるので、対応が楽しみだ。
 
再燃するバーチャルツアー用途にも大きな可能性を秘めている

 今後Insta360からもこうしたバーチャルツアーサービスはリリースされないのだろうか。現在大手のMatterportなどはコンシューマーが使うにはかなり高めの月額料金体系しか用意されていないので参入障壁が高い。もしInsta360が持ち前の開発力で使いやすく安価なサービスを作ってくれれば多くのエンドユーザーが空間を投稿するようになるだろう。そんな未来も期待させる完成度の高い製品だった。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。(動画配信時期は記事掲載と前後する可能性があります)
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