さらばノートPCの電源問題、大容量モバイルバッテリー活用のススメ

レビュー

2021/08/08 18:30

 とある喫茶店でオンライン会議をしていた時のこと。開始9分でノートPCの電源が力尽き、会議から消えてしまうという失態を演じてしまった。事前に100%充電してあったのだが、突然のブラックアウト。AC電源は使える店だったものの、あいにくACアダプタを忘れて来ていた。1時間程度の会議ならバッテリーだけで大丈夫だろうと思っていたら、このありさま。半年前は余裕で耐えていたのに。内蔵バッテリーがへたっていたらしい。常時AC電源につなげて使用していのがアダになった。こうなったら、モバイルの電源環境をびしっと整えよう。

ノートPCに大容量バッテリーをつないでメイン電源として使う。
内蔵バッテリーは温存し、いざという時に使う作戦だ

 貧乏性ゆえ、ノートPCのバッテリーはできるだけ使いたくない。バッテリーは使えば使うほど稼働時間が短くなり、いずれ使えなくなる。AC電源が使える環境では優先的にAC電源で運用したい。しかし、実はこれがバッテリーの寿命を縮めることにもつながってしまう。普通は、常時AC電源につなぎっぱなしにしたり、満充電のまま放置してもバッテリーがダメージを受ける。もちろん充放電の回数も増えれば増えるだけ消耗していく。バッテリーを使えば消耗し、AC電源につないで使えばバッテリーを痛める。ノートPCの電源はいったいどうするのが正解なのか。これはモバイラーにとって永遠の課題ともいえる大問題だ。

 一つの答えは、バッテリーが交換できるノートPCを選ぶことだ。パナソニックのレッツノートシリーズが代表格。バッテリーがダメになったら交換すればいい。複数のバッテリーパックを用意して交換しながら運用すれば、さらなる長時間駆動も可能だ。ただ、残念ながらレッツノートシリーズは高級品。安くても10万円は下らない。丈夫ではあるものの、厚めの筐体も薄型全盛の今となってはやや古臭い感じもする。バッテリー内蔵型の一般的なノートPCも交換は可能だ。しかし、バッテリー自体の入手も含めかなり面倒。さらに交換するには分解しなければならず、ちょっとした技術も必要だ。

 そこでもう一つの答え。それは大容量モバイルバッテリーの活用だ。最近ではノートPCの充電や駆動にも耐える大容量・大出力タイプの製品が販売されている。これをメインバッテリーとして活用する方法だ。この運用にはいくつかの条件がある。1つは、PCがUSB-PD対応で、USB-Type C端子への電源供給で稼働すること。また、PCに内蔵バッテリーを保護するモードが備わっていることだ。冒頭に登場した9分で電源が落ちるノートPCはこれらには非対応。激遅だったこともあり買い替えた。コスパの高いレノボ製ノートPC「IdeaPad Slim 550」だ。CPUAMDRyzen5 4500Uを採用した14インチモデル。税込み6万円弱の価格はまあまあのお買い得といっていいだろう。

 レノボのノートPCに備わっているバッテリー保護モードは「保全モード」という名称。他社のPCにも似たようなモードがある。まず、この保全モードでバッテリーの消耗を極力抑える。充電時にはバッテリー容量の55%~60%までしか充電せず、それ以降は内部的にバッテリーが切り離されてAC電源での運用になる。AC電源をつなぎっぱなしにしていても安心だ。満充電しないのでバッテリーには優しいが、バッテリー駆動時間は当然、半分程度に短くなる。このPC、仕様上はバッテリーで12時間駆動することになっているが、フルパワーで普通に使うと8時間程度が限界だ。これがさらに半分程度に短くなると、日常使いにもかなり心もとない。そこで、AC電源が利用できない環境では、大容量のモバイルバッテリーをメイン電源として使うことにする。
 
レノボPCに備わっている「保全モード」で運用。バッテリーは60%で充電が完了し、
AC電源やモバイルバッテリーにつながっている場合にはそれらでの駆動に切り替わる

 IdeaPad Slim 550はUSB PD対応で、USB Type-C端子への給電で使用できる。必要な電力は65Wだ。このPCに大容量のモバイルバッテリーを組み合わせる。今回は、アンカーの「PowerCore III Elite 25600 87W」を購入した。品名の通り25600mAhと大容量で87Wの大出力に対応する。AC電源が確保できない場所では、まずこいつをPCにつないで使う。AC電源の代わりにつなぐイメージだ。8時間程度使ってもモバイルバッテリーの容量は半分弱ぐらいしか消費しない。感覚的には、丸々1日使っても余裕しゃくしゃくという感じだ。万一モバイルバッテリーが切れても、ノートPC本体には4時間程度稼働できる内蔵バッテリーが残っている。これで電源問題は万全だ。

 ただし、大容量のモバイルバッテリーはデカくて重い。PowerCore III Elite 25600 87Wは実測で561gあった。500mlのペットボトル1本分強の重さだ。また飛行機で移動する際には注意が必要だ。モバイルバッテリーは預け入れ荷物には入れることはできず、手荷物として持ち込む必要がある。容量の制限もある。ほとんどすべての航空会社で容量100Wh以内であれば、普通に持ち込むことが可能。これはおよそ2万7000mAhに相当する。現在日本で販売されているほとんどすべてのモバイルバッテリーはセーフ。しかし、手荷物検査場では、しげしげとバッテリーをチェックされる。ちょっとハラハラするので覚悟はしておいたほうがいいだろう。

 バッテリー保護モードが備わりUSB PD給電対応のノートPCと大容量モバイルバッテリーを組み合わせると、いつでもどこでもPCが利用できる環境の出来上がりだ。これでようやくPC利用時の「場所の自由」を得た。(BCN・道越一郎)