イヤホンが「音を聴く」だけのツールではなくなる時代が、すぐそこまで来ている。Googleから初めて発売された完全ワイヤレスイヤホン「Pixel Buds」を使っているうちに、徐々にそう感じるようになった。Googleらしい「スマートさ」を端々に感じるPixel Budsを、主要な機能の紹介を通してレビューしていこう。

本体とケースにはマット加工が施されている

スマートに接続、スマートに充電

 「スマートさ」はAndroidスマホと接続するときから感じられる。Pixel Budsのケース裏側にあるスイッチを長押するとペアリングが始まり、近くのAndroidスマホに通知が表示。その通知をタップするだけでペアリングが完了するのだ。これは「Fast Pair」と呼ばれる機能によるもので、接続時にいちいちBluetoothの設定画面からイヤホンを探す手間が省ける。Fast Pair自体は新しい機能ではないが、まだ日本では対応製品が少ないため目新しく感じる。
 
Fast Pairによって表示される通知(Pixel 3aにてキャプチャー。以下、スクリーンショットは同様)

 画面の指示通りに進むとチュートリアルが始まり、イヤホンのタッチセンサーを使った基本的な操作を教えてくれる。チュートリアルを完了するかスキップすれば、初期設定は完了だ。Googleのスマホ「Pixel」シリーズであれば「設定」アプリ→「接続済みのデバイス」画面から、他のAndroidスマホなら「Google Pixel Buds」アプリから設定を変更できる。

 イヤホン自体は音楽再生なら最大5時間、通話なら最大2.5時間使用可能。他のイヤホンと比べて突出しているわけではないが、Pixel BudsのケースはQi規格に対応しており、ワイヤレスで充電できる。ケースをフル充電しておけばイヤホンを4回前後充電し直せるので、普段の利用で電池切れに悩まされることは少ないだろう。

手ぶらでGoogleアシスタントを使える

 Pixel Budsの最大の特長は、なんと言ってもGoogleアシスタントを始めとするGoogle各種サービスとの連携だ。Googleアシスタント機能をオンにしておけば、Pixel Budsを装着しながら「OK Google」と言うだけで音声検索や音声操作を行える。スマホを取り出したり、イヤホンのボタンを押したりする必要がないため、より素早くGoogleアシスタントを起動できるのだ。
 
Googleアシスタントの設定も、画面の指示に従うだけで完了

 Googleアシスタントの機能の中で個人的に最も使い勝手が良く感じたのが「通知の読み上げ機能」だ。「OK Google、通知を教えて」と言うだけで、メッセージやカレンダーなどの通知を読み上げてくれる。「通知の読み上げ機能」は音声操作だけでなく、イヤホンのセンサー部分を長押しすることでも起動可能。「OK Google」と言う必要はないので、公共の場でも周りの目を気にせず使える。

 読み上げの対象となるアプリはPixel Budsの設定から変えられるので、LINEやChatworkなどこまめに確認したいアプリのみを読み上げさせることも可能。メッセージ系のアプリであれば、音声操作のみで返信することもできる。歩行中・移動中にスマホが気になってしまう人は重宝するはずだ。
 
オンに設定したアプリの通知のみを読み上げてくれる

 筆者の自宅周辺は自転車の往来が多く、たとえ立ち止まっていてもスマホに気を取られると危ない場面が多々ある。視線を落とすことなく仕事の連絡を確認できるこの機能は、自分の身を守る上でも非常に役に立つ。

他のGoogleサービスとの連携もスムーズ

 Googleが提供する他のサービスでは、「デバイスを探す」機能とFast Pairの連携が嬉しい。スマホの「位置情報」と「ロケーション履歴」をオンにしていれば、最後にイヤホンと接続していた場所を調べることができる機能だ。
 
試しに使ってみると、自転車に乗る際にイヤホンを外した場所が表示された。
片耳だけ、ケースだけで探せないのは残念だが、位置情報が残っているだけでもありがたい

 スクリーンショットのように大まかな場所しか知ることしかできないが、どこを探せばよいか手がかりがあるだけで探す手間が大いに省けるだろう。自宅や職場などでイヤホンだけ失くした場合は、スマホと接続されている状態であればPixel Budsから着信音を流せるため、音をたよりに探すことができる。
 
スマホのスピーカーのように大音量ではないが、耳をすませば簡単にイヤホンを見つけられる

 また、Pixel Budsは「Google翻訳」との連携も注目を集めているが、こちらはあくまでも「単語、もしくは1~2文程度のやり取りならスムーズにできる」といった程度だ。「OK Google、〇〇語を通訳して」と言ってGoogle翻訳を起動し、Pixel Budsもしくはスマホに発話を聞かせるだけで自動的に翻訳してくれる。自動翻訳機を耳に着けているというよりも、イヤホンから簡単に「Google翻訳」にアクセスできる、という感覚に近い。レストランで注文のやり取りには使えるが、英語のスピーチを同時通訳で聞く用途には向いていない。

 ただし、翻訳機能についてはPixel Buds自体ではなくGoogle翻訳の性能が向上するにつれて、機能が改善される可能性もある。今後のアップデートに期待したい。

スピーカーの音質は満足。自動音量調整は地味ながら良い

 BluetoothのコーデックはAACとSBCに対応している。高音質・低遅延が売りのaptXやLDACに非対応で、音質や遅延にこだわる人には少し物足りなく感じるかもしれない。遅延の程度は一般的な動画鑑賞では問題ないが、アクション重視のゲームには不向きといったところ。

 音質に関しては、筆者はあまり気にしないタイプで、普段は1万円弱の完全ワイヤレスイヤホンを使用している。正直なところ、普段使っているイヤホンとPixel Budsとの音質の違いは筆者には分からなかった。強いてPixel Budsの不満を挙げるなら、低音が弱めでYouTubeやNetflixで動画を視聴する際に男性の声が聞こえづらく感じたことくらいだ。

 とはいえ先日のアップデートで低音を強調して再生する「低音ブースト」機能が実装され、この設定をオンにすることで不満は解消された。アクションシーンにおける銃声や打撃音などの効果音の迫力が増したほか、BGMに使われている楽曲のベースやドラムなども聞きやすくなる。動画を観るなら、低音ブーストをオフにするという選択肢は無い。

 周囲の騒音に合わせて音量を自動で調整してくれる「アダプティブサウンド」も便利だ。電車が動く音や工事の音などの騒音を感知すると、聞いている側が不自然に思わないレベルでゆっくりと音量を上げてくれる。最初この機能をオンにした際はあまりに自然過ぎて気づかなかったレベルだが、普段使っているイヤホンと比べると間違いなく聞きやすい。外出時にPixel Budsを使用するなら、絶対にオンにしておきたい機能だ。

 試用運用機能として、赤ちゃんの鳴き声や緊急車両のサイレンを感知して音楽などの音量を一時的に小さくする「アテンションアラート」も用意されている。試しにPCのスピーカーからパトカーの音を再生してみたところ、音量が自動で小さくなるだけでなく通知音も鳴った。万が一に備えて、オンにしておくとよいだろう。
 
基本的にすべてオンにしておくと良いだろう

 巷のレビューを見ていると「音が途切れやすい」と言われているようだが、自宅でPixel 3a/4aと接続していた際はあまり音飛びを感じなかった。ただ、出先の場所によってプツプツと音飛びが気になることもあった。また、手持ちの他のAndroidスマホとは接続が切れやすく、スマホの機種によっては相性の悪い場合がありそうだ。

※9月17日のアップデートで、1分50秒ごとに音が途切れるバグは修正されました。

スマホ上なら問題なく使えるマイク

 オンラインで打ち合わせをする機会が増え、ワイヤレスイヤホンを通話に使いたいという人も多いだろう。Pixel Budsにはビームフォーミングマイクと音声加速度センサーが実装されており、この二つの組み合わせにより周囲の雑音や骨伝導を解析することで、屋外でも比較的クリアな発話の音質を保つことができる。スマホと接続する場合であれば、オンライン通話でも問題なく使えるだろう。

 ただし、PCと接続する場合は別だ。手持ちのPCが悪さをしているのかもしれないが、PCと接続した際は通話ではとても使えないガビガビの音質になってしまった。ラップトップに内蔵されたマイクの方が聞き取りやすい……と言えば想像がつきやすいかもしれない。

 筆者の場合はPCとの相性がマチマチだったので、Pixel Budsを使った通話は基本的にはスマホで行うと決めておいた方が良いかもしれない。

装着感は独特かも……?

 最後に、Pixel Budsの装着感も紹介しておきたい。Pixel Budsはイヤホンに黒いスタビライザーがついている、独特なデザインだ。スタビライザーを耳の穴の直上の窪み(耳甲介艇と言うらしい)にあてがうことで、装着時の安定性が向上する。
 
スタビライザーのおかげで、激しく動いてもほとんどずれることがない

 軽いジョギングや頭を振る程度ではビクともしない反面、耳かきくらいでしか触らない部位にスタビライザーが当たり続けるため、少し違和感を覚えるかもしれない。着用し続ければ慣れる可能性もあるが、残念ながら筆者は1週間の使用で違和感を拭うことはできなかった。

 しっかり固定されていること自体は、タッチセンサーと相性が良い。Pixel Budsはイヤホンの表面をなぞるだけで音量の調整などの操作ができ、タッチ操作によってイヤホンがずれる心配が無いためだ。ただし反応が良すぎて、マスクを着用する際などに誤タップしてしまいがちではある。
 
思っているよりもイヤホンが耳から突出しているため、距離感をつかむまでに時間がかかりそう

 装着時に便利だと感じたのが「装着検知機能」だ。設定でオンにしておくと、イヤホンを片方、もしくは両方外すとスマホで再生中の音楽などが自動で一時停止され、イヤホンを着け直すとまた再生される。なお、片方のイヤホンを別の人が着用している状態でも再生できる上に、それぞれのイヤホンで任意の音量に調整することもできる。滅多に使わない機能だろうが、もしかしたらデートをオシャレに演出できる……かもしれない。

スマートオーディオの一つ

 Pixel Budsは2万800円(税込)と少し高めの価格設定ながら、音質の面では同価格帯の製品に劣る部分が多いかもしれない。しかしGoogle Nest Miniやスマートスピーカーのような「スマートオーディオ」の一つとして捉えると、Googleらしいスマートさが端々に感じられる製品だ。

 特にGoogleアシスタントとの連携は他のイヤホンよりもスムーズで、日頃からGoogleアシスタントを活用している方ならPixel Budsの真価を発揮できるだろう。逆に、Googleアシスタントをあまり使わない方にとっては無用の長物になるかもしれない。

 GoogleアシスタントやGoogle翻訳は今後も進化し続けるだろうし、Pixel Budsもソフトウェアアップデートで機能が向上する可能性もある。Googleが目指す未来を先取りしたい方は、ぜひ手にとってみてほしい。(浦辺制作所・佐島 蒼太)